四万十川バイクラフト・その①〜しまなみ海道編

以前、バイクラフトという遊び方を当ブログで紹介した。
パックラフトという空気で膨らませるボートと、自転車を組み合わせた旅行スタイルが、バイクラフトと呼ばれている。
基本的に自転車で移動をし、川や湖では自転車や荷物をパックラフトに乗せて移動する…というものである。

初めてバイクラフトをした日置川では、途中で船が座礁して破損、大失敗に終わってしまった。
今回はその失敗を踏まえ、荷物の軽量化とパックラフトへの積載方法を再検討し、リベンジする事に。

目的地は、高知県四万十川。
私がバイクラフトをやろうと決めた時に、真っ先に思い浮かんだのが、四万十川である。
日本で唯一ダムがない(実際はそれに近い機構はあるらしい)、日本最後の清流と呼ばれるこの川が、バイクラフトに最も適していて、そして最も楽しめるだろうと思ったのだ。

この四万十川バイクラフトのために寝袋や防水バッグを新調し、準備を進めてきた。

そしていざ決行の日。
自転車の構成は、16インチの折りたたみ自転車・ブロンプトンと、折りたたみトレーラー・TravoyⅡという組み合わせ。

自転車で駅まで自走し、自転車を折りたたんで輪行袋へ。トレーラーはそのままキャリーバッグ扱いで電車に乗ることができる。

 

 

 

 

 

 

 

この組み合わせ、日本を自転車旅行する上では最強だと、前回、そして今回と実感する。
輪行準備は10分あれば終わるし、なにより運搬が非常に楽だ。車内でも、他の乗客の邪魔に全くならない。

この自転車旅行のスタイル、特にTravoyⅡのトレーラーは日本では相当珍しいのか、道中で結構声を掛けられ、みな興味深そうだった。

電車は尾道駅に到着。
サイクリストにとって尾道といえば、なんといってもしまなみ海道。
しまなみ海道は日本本土と四国を結ぶ、全長100キロ弱の道である。
この100キロ弱の間、瀬戸内海に浮かぶ島々を結ぶ橋の数々を、なんと自転車で走る事ができる素晴らしい道なのだ。

景観は美しく初心者にも優しい勾配で、日本におけるサイクルツーリズムの中では、いわば聖地となっている場所だ。
私もいつかいつか、と思いつつ訪れた事がなかったのだが、ようやく念願叶うこととなった。

駅前には、私の他にも数組のサイクリストが自転車を組み立て、準備をしている。
みんな輪行してやってきて、これから走る美しい島々を想像して、浮き足立ちながら作業しているに違いない。

ブロンプトンとTrabvoyⅡは、組み立ても一瞬で終わる。5分もしない内に準備完了し、準備している他のサイクリストを尻目に、スイーっと走行を開始した。

尾道駅からすぐ目の前に一つ目の島・向島があるのだが、尾道と向島を結ぶ橋だけが、しまなみ海道上唯一自転車が走行不可となっている。
そのため、渡し船に乗る必要がある。少し待っていると、海の向こうから渡し船がやってきた。船に乗り込んだ40人程のほとんどが、自転車を連れている。

料金は自転車と運賃合わせて100円ちょっと。
船はゆっくりと瀬戸内海を進み、15分ほどで向島へと到着した。

向島から、いよいよしまなみ海道スタートである。
驚いたのが、白色の実線の他に青色の実線が道路に引かれており、しまなみ海道のゴール地点である今治までの距離が定期的に表示されていることだ。これは実際に今治まで途切れることなく続いた。
おかげで道中全く地図を広げる必要もなく、迷うこともなく進む事ができた事に、しまなみ海道のホスピタリティに感動を覚えた。

そしていよいよ、しまなみ海道の最初の橋に差し掛かった。
橋に突入する前に、自転車とスクーターは車道とは別の専用道路に入る。ループをぐるぐると登った先が、橋の入り口である。
以前は橋を渡るのにお金が必要だった様だが、しまなみ海道にサイクルツーリズムを普及させるために多くの企業が協賛しており、そのおかげでしまなみ海道上の橋は現在、自転車ならば通行料は無料となっている。

最初の橋・因島大橋は、橋の内部が自転車とスクーター専用道路になっている面白い構造。この真上が車道になっており、ひっきりなしに走行音が頭上から降ってくる。
橋の骨組みの隙間から見える瀬戸内海や、普段なら走ることのない橋内部の光景に、走りながら興奮してくる。

その後も、いくつかの橋を渡って進んでいく。
しまなみ海道上では、何百人というサイクリストとすれ違った。
海外でのサイクリストの聖地というと、南米のアウストラル街道や中央アジアのパミールハイウェイが挙げられる。ここでは一日に10人程のサイクリストと出会う事があり、その多さに驚いたものだが、しまなみ海道は桁が違う。日本にこんなにサイクリストがいるのか、とびっくりしてしまった。

上述した海外の二つの道は、難易度的に屈強で若いサイクリストが多かった。
しまなみ海道は老若男女、多岐に渡る世代がサイクルツーリズムを楽しんでいる。日帰りで荷物なく軽快に走る自転車や、キャンプ道具込みの重装備自転車など、自転車の種類も多岐に及ぶ。
しかし共通しているのは、皆走りながらいい笑顔をしているのだ。

道路の走りやすさ、難易度の低さ、素晴らしい景色。誰にでも走りやすい環境が整ったしまなみ海道は、世界的に見ても素晴らしい道だと、走りながら静かに感動していた。

初日は見近島という、自転車とスクーターしか入れない島の無料キャンプ場で、テント泊。
連休ということもあってか続々とキャンパーが集まり、夕方になるとテントサイトはびっしりと埋め尽くされる盛況ぶりだった。

翌朝、しまなみ海道を渡りきる前に、全貌を見渡せる展望台に寄ってみることに。

亀老山展望所と呼ばれるところへは、標高300メートル程のアップで到着できる。どうやら八十八ケ所の内の一つも、道中にあるようだ。
傾斜はそれなりにキツく、これを歩くお遍路山には恐れ入る。

トレーラーを牽いていると、「登り坂がキツくないか?」と聞かれる事が多い。
恐らく非常に重々しく見えることからの発言であり、そういう私も自分がやってみるまではキツイ印象を持っていた。

実際はというと、サイドバッグスタイルの自転車より、よっぽど楽に坂を登る事ができる。私は力学とかバランス工学とかには全く明るくないが、身体の近くに重みがないためか、自身への負担が非常に軽い。
ブロンプトン自体の走行性能が高い事も、登り坂がそこまで苦にならないと感じる要因の一つだろう。

そんな感じで、頂上にもあまり苦労もなく到着。
しまなみ海道を一望できる素晴らしい風景が拝む事ができる。

午前中にしまなみ海道を走り切った後は、電車に乗って松山まで一気に輪行。このフットワークの軽さが、トレーラーと折り畳み自転車の素晴らしい点であり、日本国内での自転車旅行の最適解なのではないかと、この旅行を通して実感する。

折角なので道後温泉本館に入浴しようと思ったのだが、何と整理券が出ている大盛況っぷりで、17時以降になるという。
素直に諦め、名物の鍋焼きうどんを食べるくらいでほとんど観光もせず、人ごみを避けた寝床を確保して、しまなみ海道までの旅程を終えた。

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