最も不釣り合いな街〜Ispartaまで

Esenyurt~Isparta
12/17~12/18 (1132~1133days)
夜中に随分と冷え込んだ様で、テントも自転車もペットボトルの水も、ガッチガチに凍っている。
明朝は寝袋にくるまっていても寒すぎて起きてしまったのだが、これでも寒さ対策としてジョージアで断熱マットを購入していたおかげで、随分マシだったのだろう。
マット買ってなかったら、ちょっとやばかったかもしれない。
テントに張り付く霜をはたき落とす。手袋をしていてもその冷たさは生地を通りぬけ、指先へと到達し、その冷気は痛みを引き起こす。
霜を全てはたき落とした後は、まともに動かなくなった指で朝食を作る。
袋ラーメンが出来上がるわずか3分が、待ち遠しくて仕方ない。
水が澄んだEgirdir湖の向こうには、雪がうっすら被った山が並ぶ。
進んでいると、果物露店が現れた。やはり昨日見たのはリンゴ畑だった様で、露天の主力はリンゴ。
美味しそうだったので、リンゴを買って輪人さんとシェアする事に。瑞々しくて美味しい。
湖沿いに、アップダウンが増え始た。
体力的にはキツイが、高いところから見えるEgirdir湖は、湖畔近くで見るよりもさらに美しい。
アップダウンが続く道で標高を200メートルほど上げると、湖畔の街・Egirdirが見えてきた。
街から湖に向かって、細長い陸地が続いているのが特徴的で、天橋立を思い出す風景だ。
街には12時半過ぎに到着。
山が背後にあり、それに威圧されて怯えた家がギュッと密集しているみたいで、なんだか可愛らしい。
昼食を食べた後、半島の先へと行ってみる事に。
湖畔にはアヒルやカモメ、野鳥がたくさんいる。シーズンオフだからか、観光客も車もほとんどおらず、鳥たちの鳴き声、風と湖の波の音がはっきり聞こえる。
半島の先には傾いた一本木がポツンと立っているだけ。首を傾げてどこか寂しげに見える。
Egirdirでの観光を終え、輪人さんと再び走り出す。
街からはまた上りが始まり、これまた結構なきつさ。日本ならトンネルを作りそうなものだが、海外ではトンネルはほとんど見かけない。日本ほど掘削技術が発達していないのか、海外が山をリスペクトして手をつけないからなのか…理由は分からない。
日没前、Isparta(イスパルタ)に到着。
この街の特産品は薔薇。あちこちに薔薇を模したモニュメントが飾られている。
その薔薇を使ったコスメ用品は高品質で、非常に人気なのだとか。
土産屋がそこらにあるのだが、薔薇を使っているだけに店内はピンク色で溢れている。
男一人で入るには憚られるし、そもそも自転車旅行者と美容という組み合わせは、ほとんど対極に位置する。いわば、このイスパルタは自転車旅行者にとって”もっとも不釣り合いな街”だと言える。
勇気を振り絞って店内へ行き、薔薇で作った石鹸を購入。
早速風呂場でそれを使い、体を洗う。
風呂上がり、薔薇のいい香りを漂わせる自分に、なんだか気恥ずかしさを感じる。
やっぱり、自転車旅行者に薔薇は似合わんね…
イスパルタには輪人さんと二泊した。
同じ部屋で、30のおっさんが薔薇の匂いを撒き散らして、申し訳なかったと思う。
やはり、我々には食卓に並ぶ、飯から漂う匂いがお似合いだ。
(走行ルート:Esenyurt→Isparta)