オンとオフ〜Esenyurtまで

Betsehir北70km~Esenyurt
12/16 (1131days)
テントに随分と霜が降りている。
寝袋が劣化してきているのか、ここ数日は明朝5時頃になると寒くて起きてしまう。
湖沿いに道が続く。
水質は綺麗で、湖畔はクリスタルの様に澄んでいる。
時折野鳥が水面をを蹴りながら、湖を飛び立つ。群れが飛ぶと、ザァーっと言う音が静かな湖に響く。
しばらくすると道は湖から遠くなり、畑や牧草地を突っ切る様になった。
畑はリンゴの樹と思われるものが並ぶ。収穫済みで、実は一切ついていない。これだけ水源があって水質も綺麗なら、それで育つ果実はさぞ瑞々しくて美味しいだろう…そう想像して、思わず喉がゴクリとなる。
キツイ登り坂が始まった。
汗をだらだら流し、クランクをくるくると高速回転させながら登っていく。
頂上近くになり後を振り返ると、自分が走ってきた道が畑を貫く一本道が見通すことができる。
2キロくらいで標高150メートル上げたこの登り坂は、頂上から一気に下り、その先の集落へと吸い込まれていく。
坂を下り切った後は、一本道を延々と走る事に。
景色は退屈な畑ばかり。スイッチをオフにしたかの様に、脳は周りの風景から何かを感じることを遮断し、無心で黙々とペダルを漕ぐモードに。
このモードに入るとまるで夢の中にいる様にぼーっとなり、気付いたら20キロくらい走っていた…とかザラである。
朝から40キロほど走り、ようやくレストランがある集落に到着。
さぁ飯だ、という手前で輪人さんの自転車がパンク。クイックレリーズではないため、タイヤの着脱に時間が掛かり、なかなか大変そうだ。
修理も終わり、ようやく飯に。トルコの定食は複数のおかずを選ぶ方式が多く、食卓は賑やかになりがちだ。
昼食後もこれといった見どころはなく、スイッチはオフのまま、無心で走り続ける。
自転車旅行は”刺激的なアドベンチャー”と捉える人が日本人には多いが、実態はそうではない。延々とペダルを漕ぐ地味な運動が、一日のほとんど大半だ。
その地味な運動の中に、時折現れる絶景や予期せぬ出会いが、自転車旅行に彩りを与え、特別なものとしてくれる。
陽が沈む前に、湖ルートでは2つ目にあたるEdirdir湖が見えてきた。
湖畔に畑があり、そこの影に隠れて野宿。
(走行ルート:Beyshehir北70km→Esenyurt)