«世界遺産»ギョレメ国立公園・カッパドキア

Göreme National Park and Rock Site of Cappadocia
11/28~12/3 (1113~1118days)
カッパドキア…数億年前のエルジエス山の噴火により、火山灰と溶岩が積み重なった結果、現在にまで残る大奇岩地帯が形成された。
ヒッタイト時代から通商の要衝で、4世紀にはキリスト教の修道士がこの地に洞窟を掘って住み着いた。洞窟内にはその時に施されたフレスコが残る。
(参考図書:「地球の歩き方 トルコ・イスタンブール編」)
ギョレメの町から歩くこと15分ほどの距離に、ギョレメ野外博物館がある。
この博物館はキリスト教徒達が暮らした洞窟やフレスコ画が保存状態よく残されている。
博物館とは言うものの、ガラスケースに入った展示物などはなく、実際に洞窟内を歩く、いわゆる体験型の施設である。
博物館の一番の見所としては、最も高い位置にある洞窟にある、フレスコ画。
宗教画でのフレスコあるあるだが、カッパドキアにある肖像画はそのほとんどが、顔面が削り取られている。
これは恐らく、イスラム教国とキリスト教国の歴史の中で、征服し、されるが繰り返されたことに起因するのだろう。イスラム教では偶像崇拝禁止なので、こうした宗教画は認められないのである。
しかしながらこの最も高い洞窟にあるフレスコ画は、キリストの顔がしっかりと残った、貴重な物なのである。
なお、入場には別料金で、写真も禁止。貴重な物だからこそ、きっちりと保護したいのだろう。
実際、このフレスコ画は非常に美しく、金を払って見て良かったと思える物だった。
入場料といっても300円弱なので、世界遺産の貴重なものを見れることを考えると安いもんだ。
フレスコ画以外には、これといって見るべきものはない。ひたすらに、伽藍堂の洞窟を歩くだけである。
ただ、この洞窟を歩くのが面白い。
遥か昔、ここに確かに人が住んでいた事実があり、それを踏まえて洞窟を見回すと、「あの窪みは誰かの机代わりだったのだろうか」とか「このスペースは食卓で、みんなで食事前は並んで座ってお祈りを捧げていたのだろうか」とかを想像すると、一見つまらない何もない洞窟が、一点とても面白い物に変わるのだ。
カッパドキアは非常に広大で、ギョレメ博物館やその周辺にある遺跡群は有料だが、それはその広大な一部に過ぎず、奇岩地帯のほとんどは無料である。
奇岩地帯はトレッキングコースになっており、そこは徒歩でも自転車でも、バギーでも走ることができる。
ギョレメに到着して翌日は、輪人さんに案内してもらいながら一緒にトレイルを自転車で走る。
一緒にサイクリングした翌日以降は、各々好きな時間に、好きなタイミングで一人でトレイルをサイクリングしていた。
初回のサイクリング以外は、基本的に単独行動をしていた私と輪人さんだが、面白いことに夕暮れ時になるといつも同じスポットに来て、二人で夕暮れに染まるカッパドキアを眺めていた。
さて、カッパドキアといえば奇岩地帯に浮かぶ、無数の熱気球を思い浮かべる人も多いだろう。私も、その多くの中の一人だ。その光景を見ることを、とても楽しみにして、この地にやってきた。
ギョレメに到着した翌朝、宿で朝食を食べながらふと窓に目をやると、宿のすぐそばに熱気球が浮かんでいて、大層ビックリした。こんなに町の近くで飛ばすの!?
ただ、その日以降は天候に恵まれず、熱気球が飛ばない日がずっと続いた。例え雨が降っていなくても、少しでも風が吹くと熱気球は飛ばすことができないのだ。
ギョレメでの観光は数日間掛けてほぼ終わり、後は気球さえ見られれば、もうこの場所に用がなくなってしまった。
しかしタイミングが悪いことに、これから先ギョレメ周辺で雪が数日間続く、という天気予報が出てきた。遂に、本格的な冬に捕まってしまったのだ。
ここで雪に捕まってしまったら、いつギョレメから脱出できるか分からない。
そういう訳で、雪の予報が出ている日の前に、ギョレメを去ることに。
ただ、やはり熱気球は見たいので、ギョレメ最終日は奇岩地帯でテントを張って世を明かし、翌朝のチャンスに賭けることにした。これで見れなければ、縁がなかったということで仕方がない。
まだ暗い深夜の時間、テントから顔を出すと、奇岩地帯の地面で赤い光がポッ、ポッと灯るのが見えた。バーナーで起こした火を、扇風機で気球の中に送り込んでいるのだ。気球は地面にいたまま、頭がどんどんと膨らんでいく。
十分に膨らみきると、乗客達が気球に乗り込んでいく。そしてクルーによって重りが外され、気球はゆっくりと浮かび出した。
徐々に空が明るくなり始め、浮かび上がる熱気球の数も増えてきて、気付いた頃には無数の熱気球によって、カッパドキアの空は埋め尽くされることに。
この風景を見たいがためにギョレメで粘って延泊して良かった…今までで最も異質な野宿経験となり、これで思い残すことなく、ギョレメを去ることができる。
さぁ、雪に捕まる前に再び走り始めなければ。