再会とビールと〜Khorogまで

Avj~Khorog
9/6~9/10 (1030~1034days)

海外旅行の醍醐味の一つに、人との出会いがある。
出会う人は大きく分けて二つ。
一つは地元民、もう一つは他の旅行者との出会いだ。

海外旅行に来ている人は、基本的に ‘自分の国以外の文化を体験したい。色んなところに行きたい’ という願望を持つ、非常に好奇心旺盛な人達である。
その旺盛な好奇心をもってして、旅行を真に楽しんでいる人の話というのは、聞いていてとても面白い。

旅行者と出会うのは、私の場合ゲストハウスで…という事がほとんどで、大抵 一緒に酒でも飲みながら話をする事になる。
本当に気が合う人と一緒であれば、普段アルコールを飲まない私もビールを何杯も煽り、気付けば日を跨ぐまで話に花が咲き、楽しい時間となる。

バックバッカーの場合は、そうして仲良くなった人と一緒にしばらく行動を共にしたり、別の観光地で偶然の再会も結構あったりすると聞く。

しかし自転車旅行の場合は、出会った人と再会するというのは十中八九ない。
バスや電車で移動する彼等と比べ、自転車は移動速度が遅すぎるのが一番の理由である。
私が一週間掛けて走る距離を、彼等はわずか1日で移動できてしまうのだから、再会できないのは当然だ。

他の旅行者だけでなく、地元民含め、自転車旅行で出会う人とは、恐らく生涯で再会することがない一期一会だ。
だからこそ、人との出会いが特別なものとなる。

しかし極稀に、再会を果たすことがある。
そんな時はやはり嬉しくて、また日を跨ぐまで杯を何度も交わすのである。

さて本編へ。

9/6
朝食を食べ、温泉のあった病院を8時に出発する。
この日はワハーン回廊の終着点・ホログの町に到着する予定だ。

昨日イシカシムで出会ったサイクリストには、ホログ手前数十キロはまた未舗装路になる…と教えられていた。
しかし、朝の時点ではまだアスファルト舗装が続いており、状態は凸凹だが走りやすい。

これまでアフガニスタン側はぺんぺん草も見当たらないくらいの荒野だったのだが、この日は緑を多く見かけるように。

牛飼も歩いていた。
アフガン側で初めて見た人の姿だ。

11時過ぎ、カフェがあったのでここで昼食休憩。
手持ちの食料はもうないし、ここを逃すと次にいつ食事を摂るチャンスがあるか分からないので、ここで昼食を食べていく事に。

ただ、このカフェも食事の種類は全然なく、提供できるのは揚げパンに茹で卵、チャイのみ…ということだった。
それでも、この僻地で食事にありつけるだけでもありがたい。
値段は合計で10ソム。(約110円)

このカフェ以降、道は遂に未舗装路に。
コルゲーションも所々に現れ、再び悪路に四苦八苦しながらの走行に。

アフガンとタジキスタンの谷間が狭まり、峡谷という装いになってきた。
風景に一切変化がなく、黙々と進んでいく。

散々向かい風に苦しめられてきたパミールハイウェイとワハーン回廊だったが、この日は偶に追い風になることがある。

外国人サイクリストがよく口にする言い回しに、’ Today is my turn, my day.(今日は俺のターン、俺の日だ)’ という物がある。
これは主に、追い風を受けて快適に走れる日に使われ、ニュアンス的には ‘今日はツイてるね!’という感じ。

これまでさんぞツイてなかった私だが、ようやくターンが回ってきたらしい。
今日はツイてるね。

そして16時半、遂にホログに到着。
あの過酷だったワハーン回廊を、やっと完全走破した。
ホログはタジキスタンで見る初めてのまともな町で、ゲストハウスもかなりの数で存在する。

自転車旅行者にはPamir Lodgeというゲストハウスが人気で、まずそちらに向かう。
しかし、丘の上で町の中心からは遠いし、部屋も石造りの牢屋の様で、キッチンも汚い。これに7ドルも払いたくない。
Pamir Lodgeでは5ドルで敷地内にテントを張ることもできるのだが、自分のテントで眠るのに金を払う意味が、私には分からないので、別のゲストハウスを当たってみることに。

次に向かったのが、ワハン回廊ですれ違ったじてんしゃりょこうしゃに教えてもらったWelcome Innというゲストハウス。
こちらは13ドルもするし、キッチンも使えないのだが、清潔感があるし客も少なく、落ち着けそうだ。
今の私には質の良い休息が必要であり、ここで数日間休養することに。

9/7~9/10
本来の計画なら、ホログからワハン回廊とパミールハイウェイの真ん中にあるローカル道を通って再び東へと進む予定だった。
そして今度はパミールハイウェイを走って、ホログへ戻ってくるつもりだった。

しかしワハーン回廊があまりにもキツく、体力よりも精神的に参ってしまった。
ホログから延びるローカル道は、聞くところによるとワハーンよりも悪路らしく、膝の高さくらいの川を越えなければならない所もあるそうだ。
体力や筋力は回復しても、その過酷な道を走破しようという気力が、もう湧いてこなかった。
とにかく今は、自転車に触れずにただ休みたい。

そういう訳で、ホログではほとんどゲストハウスから出ずにひたすらのんびりしていた。
偶に外に出て、市場を歩いたりレストランに行くくらいで、ウクレレを弾いたりブログを書いたりする事がほとんど。

ホログに到着して3日目、同じ宿になんと、キルギスのビシュケクでロシア語学校に一緒に通っていたバイク旅行者の佐藤さんがやってきた!
まぁ、連絡を取り合っていてホログに来ることは数日前から知ってはいたのだけれど、まさか再会できるとは思っていなかった。

佐藤さんはワハーン回廊もパミールハイウェイも両方走ってきたのだとか。
冒頭でも述べたが、自転車は遅すぎるのでバスや電車を使う旅行者と再会する事はほぼあり得ない。
それがバイクだともっとありえないのだが、こうして再会するあたり、佐藤さんが如何にのんびり、色んな所に行っているか分かってもらえるだろう。

とにかくこの日は再会を祝してビールを買い、ビシュケク以降のお互いの道のりを語り合う。
エンジンの有無はあれど、お互い ‘走る’ 事がメインになる自転車旅行者とバイカーの感覚は、似たものがある。
キルギスからの悪路への愚痴から、絶景の感想から話が尽きない。

佐藤さんは、バイクの利点をフルに活かした旅行をしていて、非常に良い旅行をしている。
自転車だと、地図上で面白そうな場所を見つけたとしても、それが往復40キロのオフロードだと、どうしても尻込みしてしまう。
佐藤さんはバイクの強みを活かし、そうした所にも突っ込んで、気に入った場所があれば数日間キャンプするスタイルを取っている。

ビシュケク以降に撮った写真を見せてもらったが、私が知らない絶景が数多く収められており、’自転車旅行止めて私もバイクに切り替えようか’ と内心嫉妬するくらいだった。
(佐藤さんのブログ→とこ旅

佐藤さんが合流してからは、ビールを飲む毎日。
私は普段アルコールは飲まないけれど、こうして話の合う人と一緒だといくらでも飲めてしまう。
おかげでホログの数日間だけで、指で摘めるくらい腹が出てしまった。

この腹じゃ自転車に乗るのも一苦労。
こりゃ、本格的にバイク転向も考えないとな…。

(走行ルート:Avj→Khorog)

コメント

  1. いい友達って、最高ですね! 人間って、イイな!

    1. 縁があるのか、この後佐藤さんとは何度も再会しています笑

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です