遊牧民の暮らし体験

Kara Kul南50km
8/27 (1020days)

自転車旅行は一日の行動パターンがほとんど決まっている。
朝起きて朝食を食べ、テントを畳んで走り始める。
途中で昼食を食べる以外は走り続け、日没前にテントを張って夕食を作り、日記を書いて眠る。
私の場合、毎日この繰り返しだ。

体もそれを記憶しているらしく、私の場合は6時きっかりに、毎日タイマーもなしに目が覚める。
テントで寝ていようがホテルのベッドに寝ていようが、関係ない。
時計の針が正午を指すとパブロフの犬のように、決まって腹が減ってくる。

この日も6時に目が覚めたので、布団を抜けてユルトの外に出てみる。
外ではお婆婆達が既にヤクの乳搾りをしている。
これはシャッターチャンスだと、他のサイクリストも叩き起こして見学させてもらう。

牛の乳搾りは見たことあるけれど、ヤクの乳搾りは初めて見る。
いや、いつもの癖で6時に起きて本当によかった。

お婆婆達が乳搾りをしているときは邪魔にならないよう、子牛(子ヤク?)は首にロープを巻かれて母ヤクから離されている。
乳搾りが終わり、そのロープを解かれるや否や、子ヤクは待ってましたとばかりに乳にむしゃぶり付く。
喉を鳴らして飲むとは正にこの事で、ゴクゴクと凄い音を立てて飲んでいく。
お婆婆も子ヤクもかなりの量の乳を採ったので、母ヤクがちょっと心配になってくる。

さぁ乳搾りも見学したし、出発したいところなのだが、峠の方は昨日にもましてどんよりした天気。
お婆婆たち曰く、今日は雨だからもう一泊していけ、と言う。

うーん、と迷っているタイミングで、少しだが雪が降ってきたではないか。
この雪がダメ押しとなり、延泊する事に。

朝食は搾りたてのヤクのミルクにパン。
ヤクミルクは想像とは違い、臭みはない。
牛乳以上に濃厚で、口の中に長い時間味が残るほど。

この僻地では特にすることもないので、ユルトの中で本を読んだりウクレレを弾いたりして、ゆっくり過ごす。
昼ごろになり、「今から牛の皮を剥ぐらしいぞ」と同宿のサイクリストが教えてくれたので、見学することに。

どうやらロープが首に絡まってしまったらしく、窒息死してしまったのだとか。
皮剥は男の仕事なのか、親父と少年がナイフ一本で足から順番に、丁寧に皮を剥いでいく。

(※血が苦手な人は閲覧注意)

一時間ほど経って、一枚の皮が出来上がり、肉も足と体、頭という風に別けられた。
私を含めて4人いるサイクリストは、「今日は肉料理だぞ!」と俄然色目気だったのだが、親父曰く ‘事故死した牛は食べない’ のだそうで、肉は全て飼い犬に分け与えられた。

昼食にインスタントヌードルが出された後は、お婆婆達がナンを焼くというので、それも見学させてもらう。

肉饅くらいの大きさの生地を両手で平くし、敷物の上に置いてさらに拳で平にしていく。
その後、剣山の様な器具で真ん中に模様を付けていく。

ユルトの外に窯があり、まずはこれに枯れ木を入れて燃やす。
火が消えてから、窯の中に先程作った生地を内側に貼り付けていく。
インドのナンと焼き方は一緒だ。

数分すると生地はプクーっと膨らんでくる。
20分ほど焼いて、鍵手でパンを刮いで取り出していく。
焼き立てのナンはモッチモチで、何も付けなくてもそれだけで美味しくて、何個でも食べられそう。

昼以降は雨がパラつく天気。

お婆婆家族とも、私の拙いロシア語や、私たちの世話をしてくれている女性が英語を話せるので通訳してくれて、コミュニケーションを取る。

女性は二十歳くらいなのだろうと思っていたら、なんと12歳というではないか!しかもお婆婆と親父の孫ではなく、娘だという。
二人は63歳だとのことで、まぁなんとパワフルなことか。

娘さんがウクレレに興味があるのか、今晩一日貸してほしいとのことで、もちろん承諾して渡してあげた。
夕食を食べ終わると外は真っ暗になり、客室のユルトに戻ってからも、少し離れたお婆婆たちのユルトからはポロンポロンとウクレレの音が流れてくる。
それにしても、今日は延泊してよかった。
まさかこんなにも遊牧民の暮らしを間近で見れるとは思ってもいなかったので、雨様様だったわけだ。

ウクレレは随分と遅くまで鳴り続け、それを子守唄に眠りについたのだった。

↓↓↓動画も作ってみたので見てみてくださいね!↓↓↓

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