峠を前にちょっとひと息〜Kara Kul南50kmまで

Kara Kul~Kara Kul南50km
8/26 (1019days)

カラクル湖の眺めは素晴らしい野営地だったけれど、平らな場所が少なく凸凹が多いので熟睡はできなかった。
エアマットがあれば、そういう凸凹は無視して眠れるんだけど、今の銀マットタイプだと背中が痛くて仕方がない。

でも、そういう不満を差し置いてもここにテントを立てたかったんだ!と思わさせる眺めなんですよね。

起きてすぐに、空身の自転車で水際まで行ってみる。
水際手前は湿地帯になっていて、とても自転車には乗れないので肩に担ぎつつ、乾いた所や石伝いになんとか到着。

この日の走行終了した時の話になるけれど、自転車をチェックしてみるとフレームやブレーキの金属部分が白く塩吹いていた。
淡水湖じゃないのか?と思って調べてみると、カラクル湖は500万年前に衝突した隕石のクレーターでできた隕石湖なのだとか。
湖から流れ出る川はなく、他の水源からは完全に独立した湖ということになる。

隕石湖なんて初めて聞いたし、多分訪れるのも初めてだと思う。

テントに戻り、インスタントラーメンに昨日買っておいた卵を放り込んでの朝食。

カラクルの集落を抜ける前に、水を補充。
集落の真ん中にポンプが設置されており、ここで水を補充することができる。
外界から完全にシャットアウトされているようなこの集落では、正に命の水と言えるだろう。

朝から集落の子どもが二人ほど、家事の手伝いだろう、バケツを数個持ってこのポンプで水を溜めている。
邪魔にならないよう、彼等が汲み終わるのを待ち、水を補充していく。

昨日の終盤から始まったアスファルト舗装は、カラクルを抜けてからも続いている。
空気の薄くなる高い標高に、強い日差しと乾燥という厳しい走行環境にあって、このアスファルトは貴重な癒しだ。

やはりこの日も何人かのサイクリストとすれ違う。
ほとんどがヨーロピアンで、当然彼等はヨーロッパから走ってきているので、西から東へと向かっている。
私の様に東から西へと向かうサイクリストというのは、中国から再出発して一度も見かけていない。

この日出会った中の一人にドイツ人の男がいて、彼も西から東へというルートなのだけれど、このパミールハイウェイ上の走行ルートが超トリッキーだった。

パミールハイウェイのルートは大きく分けて2つ。
青いルートのパミールハイウェイ本線を通るか、途中で赤いルートのワハン回廊と呼ばれるアフガニスタン国境沿いを走るか。

一般的には青いルートが比較的簡単なルートで、赤いルートのワハン回廊は厳しいルートだと言われている。
ドイツ人の彼は、黄色いルートの日本人には全く無名のルートを通っていた。
聞いてみるとほぼ砂漠で、最高で標高5,000メートル以上に達した…と言っていた。

ヨーロピアンのサイクリストって、狂ってる奴はとことん狂っている。
ここまで狂えたら、人生楽しいだろうな。

途中、路肩で昼食休憩。
キルギスで買って余っていたプロフの缶詰め。

肉の缶詰と間違えて買ったけど、今にして思えばファインプレーだったな。
これとパンで十分お腹いっぱいになる。

アスファルト舗装が消えて、ついに未舗装路に。

この未舗装路の切り替わりからが、まぁきつい。
コルゲーションが酷く、自転車のサドルの上で尻がはねる跳ねる。

15時ごろ、道の脇の草原にユルトが現れた。
そのユルトに住んでいると思われるお婆婆が路肩に腰掛けていて、手招きしてくる。
どうやらゲストハウスをこのユルトで営んでいるらしく、泊まっていけとのこと。

この先12キロ程に、このパミールハイウェイでの最高標となる4,655メートルの峠が待ち構えている。
ちょうどその峠付近と思われる山には、怪しい雲が立ち込めている。

時間的にはまだまだ進めるのだが、峠をこの日中に越えるのは微妙な時間だ。
それに標高も今の時点で4080メートル。雨に降られたらかなりの冷え込みになるだろう。

お婆婆に一泊の値段を聞いてみると2食付いて10ドルとのことで、そこまで高くない。
それに、タジキスタンの人口の大半を占めるタジク人は農耕民族だと聞いたので、ユルトに泊まるチャンスはキルギス国境に近いここが最後かもしれない。

ということで、一泊をお願いすることに。

ユルトに入ってみると、既に3人のサイクリストが。
一人はドイツ人、スペイン人が二人で、三人ともヨーロッパからここまで走ってきたのだそう。

ユルトの中はストーブがあり、かなり暖かい。
樹々が生える環境ではないので薪がなく、燃料は家畜の糞を燃やしている。
高地で乾燥しているためか匂いは全くしない。

到着時間がかなり遅かったのに、昼食を出してくれた。
プロフ(炊き込みご飯)にナン、ヨーグルトにカイマック(中央アジアのクリーム)。
肉は貴重だからか、一切入っていない。

家畜はヤクを飼っており、それぞれの角には名前が刻印してある。
ヤクは食肉ではなく、牛乳を得るために飼っているようだ。

このユルトには二世帯が住んでおり、2歳くらいの女の子もいる。
お婆婆たちはタジキスタン人ではなくキルギス人だとのことで、夏の間だけこうしてユルトを建てて生活しているのだそう。

9月には積雪のためユルトを片付け、キルギスへと帰るのだとか。

明日は早朝にヤクの乳搾りが見られるとのことで、楽しみだ。
それを見届けてから峠へ挑戦かな。

(走行ルート:Kara Kul→Kara Kul南50km)

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