堪らんタジキスタン〜Kara Kulまで

Sary Tash南13km~Kara Kul
8/25 (1018days)

キルギスの国境はちょうど谷間に位置しており、朝の時間帯はほとんど陽が射さない。

そのため冷え込みも厳しく、今朝はテントが凍りつき、水も少しシャーベット状になっている。
ここまでの冷え込みは久しぶりのことで、タイツとウィンドブレーカーも着込んでの出発。

キルギスの出国は本当にチェックしているのか?というくらいあっさりとスタンプが押され、その先に広がる荒野に放り出される。

国境からしばらくは、意外にもアスファルト舗装で平坦な道が伸びている。
恐らくはこのアスファルトを最後に、数日間は酷い状態の未舗装路との格闘になるだろう。
飲み終わりの紅茶の底に溜まった砂糖を名残惜しく味わうように、このアスファルトでの走行を堪能しておく。

今走っている道は、目の前に聳える氷の塊のような雪山へと伸びている。
一体この道はどこに続くのだろうか?まさかあの雪山の上へと続くのだろうか?

山の影になっている所と、太陽の射している所での気温差が非常に激しい。
日差しが体に当たると、まるで自分が冷凍マグロで電子レンジに放り込まれたように、冷え切った体が急速に暖まっていく。

国境から7キロほど走り、前方に見えていた雪山を避けるように
道は左へとカーブ。
このカーブから上り坂が始まる。

いつの間にか未舗装路になっていたが、路面状態は良く、斜度もそこまでキツくなく、良いペースで進んでいく。

上り坂の途中でお昼休憩。
パンにケチャップを付けただけの簡単な食事。
ガソリンはこの先補充できるか分からないので極力節約したいし、缶詰は嵩張るので持ち運びしたくない。
必然、詫びしい食事にならざるを得ない。

昼食を取りながら、凍って濡れていたテントを干す。
極度に乾燥しているためか、あれだけびっしょりだったテントが、昼食を食べ終わるころにはカラッと乾いてくれた。

昼食後も、上りが続く。
家屋が何軒かあり、ゲストハウスの看板を掲げている。
今走っている区間はキルギスとタジキスタンの緩衝地帯であり、現状の私は今どこの国にも滞在していないことになる。

そんな状況で、一泊を緩衝地のゲストハウスに泊まることは法律的にセーフなのだろうか?
出国と入国を同日内に行わないことは、何か問題がありそうな気がするけど…

…と思っていたのだけど、この記事を書いている今、「国際線の飛行機も、フライト中はどこの国でもないし、出国入国のスタンプが同日にならないこともザラだな」ということに気付いた。
となると、別に問題ではないのか。
陸路と空路だとそこら辺のルールが違うかもしれないけど。

ゲストハウスの近くには、標高4,282メートルを示す峠のモニュメントが。
これはこの地点の標高ではなく、この先上り切った後の峠の数値。
なぜこのタイミングでこのモニュメントが設置されているのかは不明だが、峠が近いのは間違いない。
力を振り絞って峠を目指す。

モニュメントから峠までは残り4キロ。
九十九折が続くが、斜度も大したことないし、快調に進んでいく。
ソンクル湖前後の道の方がやばかったし、これくらいならもう全然余裕。

そして13時半前、標高4,282メートルの峠に到着。
峠には標高を表すモニュメントはないけれど、タジキスタン入国を表す物と、山羊のモニュメントがある。

峠から下り、すぐにタジキスタン側の国境管理棟。
対応がフレンドリーで「ようこそタジキスタンへ」との言葉と共に、すぐに入国スタンプを押してくれた。

国境管理棟の敷地を抜けると、枯れた大河に、山が連なる壮観な眺めが。
入国して初っ端にこの風景を見せつけられるとは、タジキスタン、中々走りごたえがありそうだ。

しばらく未舗装路の下り坂が続いた後、アスファルトに切り替わって上り坂が始まる。
この上りが長く、だらだらと続く。
そこまでキツくなかったとは言え、タジキスタン入国前の峠でかなり足を消費しているため、ちょっとしんどい。

再び標高4,200メートルまで上ったところで峠を迎え、そこからはカラクル湖が望める素晴らしい風景が広がる。
茶色と灰色の大地の中にあって、この青色は一際鮮やかに映る。

湖と山岳地帯好きの私としては、堪らん景色だ。

この峠からの下りがえげつない斜度で、ちょっと気を抜けば一気に80キロに到達するダウンヒル。
わずか10キロで標高1,200メートルダウンという、平均勾配12%のエグさ。
ブレーキを小まめにかけて、何とか車体のコントロールが効く速度を保ちつつ、下っていく。

下り切ってからは平坦な道が続く。
あまりに急激に標高を下げたためか、頭がぼーっとして全く集中力
が保てない。
疲れと高山病が同時に発症したのだろうか、気付いたらカラクルの集落に到着していた。

寂れた村で、建物だけみれば人の生活感が一切感じられないが、一応村人はいるし、商店もある。
ただ商店は看板を出していないので、村人に尋ねて連れて行ってもらわないと、どこにあるのか全く分からない。

これが商店なんだけれど、絶対気付かない。
野菜は売っておらず、卵とスニッカーズだけ購入した後、カラクル湖の湖畔へ。

私の他にも6人もの自転車旅行者がいて、彼等と一緒にキャンプ。
私以外はみんなキルギス方面へ向かうとのことで、お互い情報交換しつつ、さっさと就寝。
疲れている時に、英語で話すのはもっと疲れてしまう。

しかし、入国初っ端にこんな絶景でキャンプできるとは、タジキスタン走行がこれから楽しみだ。

(走行ルート:Sary Tash南23km→Kara Kuru)

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