オーバードーズ〜Sary Tash南23kmまで

Shumkar~Sary Tash南23km 国境前
8/24 (1017days)
昨日は夜中のうちに雨が降ったので、天気を心配していたのだが今朝は曇り空。
私は雨の日は基本的に走らないのだが、もし仮にこのパミールハイウェイ上で雨が続いたとして、テントに釘付けというのが数日間続いた場合、食料的に非常に不味いことにならないだろうか。
…そういう嫌なことは考えず、毎日晴れるもんだと思っていた方が精神衛生上良さそうだな。
野宿場所から走ってすぐに集落が現れたので、野宿するタイミングと場所としては完璧だったみたい。
集落を過ぎるとすぐに九十九折の上り坂が始まった。
この上りが九十九折のくせに斜度が結構きつく、時折立ち漕ぎをして全身を使ってペダルを漕ぐため、腰が痛くなってくる。
本来九十九折って、斜度を緩やかにするために作るための物のはずなんだけれど。
1キロ進んでは小休止して、また進んで…の繰り返し。
まだ高山病の症状が出るような標高ではないので、単純に体力が落ちているのだろう。
ビシュケクで毎日浴びるほど酒を飲んでいたので、そのツケがここに回ってきているのか…
ヒイヒイ言いながら、11時半になんとか峠に到着。
標高は3,615メートル。
標識はバイカーやサイクリストの貼るステッカーまみれなのだが、標高の数値は見えるようにしているあたり、マナーのよさが垣間見える。
さぁ峠も越えたし、ここからは一気にダウンヒル。
峠の先からは急に気温がガクッと下がった。
これはダウンヒルだからという理由だけでなく、周りが雪を被った山が増えてきて、そこからの吹き下ろしの冷たい風が大きな理由のようだ。
いよいよパミール高原の深部に近付いてきたということかな。
標高は200メートルほど一気に下った後、そこから予期していなかった上り坂が。
予期していない上り坂ほどキツイものは無い。
自分の仕事が終わった〜と思っていたら、上司からの特命事項が追加されてきた…という感覚に近い。
結局再び200メートルほど登らされて、3,550メートルの峠に。
なぜかこっちにはステッカーが全く貼られていない。
この峠からは正真正銘ダウンヒルで、400メートルを一気に下ってサリタシュという集落に到着。
このサリタシュから分岐があるのだが、パミールハイウェイ本線を通ってタジキスタンへ入国するなら、ここがキリギス最後の集落となる。
私はパミールハイウェイ本線を通るので、ここがキルギス最後の集落。
余ったキルギス通貨があるので、商店で水や野菜を購入。
カフェも何軒かあるので、ここでプロフを食べて、これでキルギス通貨は全部使い切った。
ちなみに、私はルート計画は今でも紙の地図で組むのだが、最近では走行中はもっぱらスマートフォンを使っている。
スマホのアプリでMaps Meという地図アプリがあり、GPSも使えるため、非常に重宝している。
そのアプリでパミールハイウェイ上にあるカフェやレストランをチェックすると、「ここの食事を食べて体調を崩した」という、
恐ろしいレビューをいくつも見かける。
特にタジキスタン側は、この類の悪評レビューが付いてないレストランを探す方が難しいくらい。
私が今プロフを食べた店も、「Poison food」というレビューがされていた。
まぁ食あたりに関しては運が良い悪いがあるし、そういう店を全て避けるというのは、食事の機会が限られるパミールハイウェイ上では難しい。
サリタシュの背後には雪山の連峰が聳える。
やっぱり高そうな山が見えると、テンションが上がってくる。
山岳地帯走行中毒者に見られる、典型的な症状です。
サリタシュの分岐をタジキスタン方面に進むと、交通量はガクッと少なくなった。
同時に、アスファルトの状態もかなり悪いものに。
こうなると、いよいよパミールハイウェイの核心部に近付いてきたという実感が湧いてくる。
しかし意外にも平坦な道が続き、道が延びる先にある山は、一向に近くならない。
早くあの山を走りたい!という高揚した気持ちと、キツそうだからこの平坦な道がずっと続かないかな…という弱気な気持ちが内混ぜになる。
道は時折未舗装路が混ざるようになり、コルゲーションが酷い箇所も出てきた。
タジキスタンはキルギスよりも路面状態が悪いと聞いていたが、もうその前兆が見え隠れしている。
17時、キルギス側の国境に到着。
このキルギスの国境からタジキスタン側の入国処理が行われる国境管理棟まで、20キロも距離がある。
この日の内にそこまでたどり着くことは不可能だ。
ということで、警備している軍人に許可を取って、国境の目の前で
野宿することに。
さすがに国境寸前で野宿するなんていうのは、初めての経験。
周りには他に建物も両替商なんかの人間もいないし、軍人も24時間態勢でいるので、安全面では気兼ねなく野宿できる。
明日はいよいよタジキスタン。
タジキスタンは国土の70%が山岳地帯と呼ばれている。
山岳地帯走行中毒者を自称する私としては、レストランで食あたりを起こすよりも先に、山岳地帯摂取過剰でオーバードーズでぽっくり逝ってしまうかもしれない。
あぁ、楽しみでもあり、不安でもある。
(走行ルート:Shumkar→Sary Tach南23km 国境手前)