島国という特異性〜Kazarman西40kmまで

Kazarman~Kazarman西40km
8/15 (1008days)
蚊なのかダニなのか分からないが、昨夜は体が痒くてあまり寝付けなかった。
外れのゲストハウスだなと思ったのだが、朝食はかなりボリュームがあり、フルーツやチーズなどがセルフサービス式でたくさん食べることができた。
カザルマンからはしばらく立派なアスファルトが続く。
かなり綺麗な舗装路なので、キルギスもアスファルト舗装技術がないわけではないようだ。
街の前後数キロがアスファルト舗装されているのはキルギスの常識であるというのは、ここ数日で頭に刷り込まれた。
多分家や集落が、車の捲き上げる砂埃で汚染されることがないように、ということだと思うのだが、もうちょっと頑張って全面舗装化してくれないものだろうか。
この日もやはり、カザルマンから6キロ進んだところにあるジャララバード方面への分岐から、未舗装路になった。
途中すれ違ったオーストラリア人カップルと、スペイン人女性サイクリスト。
3人とも東を目指しているそうで、日本に行くかは現時点では迷っているとのこと。
2020年に東京オリンピックがあるから、日本に行くべきだと猛プッシュしときました。
この日は実に8人の自転車旅行者と会うことになるのだけれど、全員ヨーロッパ出身で、東へと向かうルート。
日本と違って、海外自転車旅行はヨーロッパ人にとって、一般的なレジャーとして楽しまれている。
そしてヨーロッパから中国まで、という風にユーラシア大陸横断をする自転車旅行者の実に多いこと。
これは自転車競技がメジャーな存在としてスポーツ界で地位を確立しているのと、長期休暇が取りやすいというのが主な要因だろう。
それに加え、巨大なユーラシア大陸上にあるという点と、国境を持たないEU(欧州連合)という地理的な要因もあると思う。
彼等の場合、自転車を用意して家を出て、200キロも走れば違う国へと入国できるのだ。
それもEU圏内であれば、乱雑な手続きも無しに、大阪から東京へ行くのと同じ感覚で自由に行き来できるのだ。
これが日本人の場合、まず飛行機か船で国外に出なければならない。
まず海を越えなければならないというのは、違う国へ行くという行為を実態以上に大きく見せてしまっているのではないかと、私は思う。
海外は面倒で、危険で、それなら日本にいればいいじゃないか…という風に。
日本という国は、他国と国境を接さず海に囲まれて歴史を育んできた。
海は他国の侵略を許さず、故に海によって日本独自の文化は守られてきた。
しかしこれは逆に、海に囚われている…とも言い換えることができるのではないか。
それが日本人のパスポート所有率30%という数字に表れているのではないか。
それでも現在はインターネットが完全に全世界に普及し、海外の情報も個人でいくらでも入手できる。
有難いことに、先人たちがネット上に残した情報を参考にすることで、自転車での海外旅行も気軽に行ける物になっている。
そう考えると、20年前くらいまでのネット黎明期に海外を自転車で走っていた日本人は、やっぱりちょっと根性の座り方が尋常じゃなかったのだと思う。
24キロ走った所で川があり、木陰で昼食休憩。
パンにケチャップを付けた、質素な昼食。
桃も買っていたのだけれど、割ってみたら虫が中に巣食っていて泣く泣く処分。
この川から先、長い上りが始まる。
前方には峠と思われる山がうっすらと見えるが、あまりに遠い存在のようで、これから登ると考えるとゲンナリする。
この上りの途中でもフランス人カップル自転車旅行者に会ったのだけれど、パミール高原で体調を崩し、今も万全ではないらしい。
彼等曰く、パミール高原は衛生環境があまりよくなく、水や食べ物が汚染されていることが多いらしい。
パミールを走る自転車旅行者は漏れなく体調不良になっているよ、と聞かされて今から戦々恐々としている。
随分と上った後、川から11キロ走ったところでちょっとした平原地帯になった。
家は視界の範囲には見えないけれど、養蜂の箱が設置されていたり、馬に乗る遊牧民が遠くに見えたりと、人が住んではいるようだ。
ふと思ったのが、もしここが日本だったら、住んでる人の苗字は’丘さん’ とか ‘山岡さん’ とか ‘馬場さん’ なんだろうなぁ。
‘船越さん’ とか ‘平田さん’ とか ‘磯田さん’とか絶対付かない。
平原は標高2,100メートル付近をウロウロしていたのだが、急に一気に下り坂に突入。
目の前に峠となる山があるのに、何故下る!?
登るのが大変になるから下らないでくれ、という願いは虚しく谷底までガッツリ下らされた。
川沿いにはユルトがあり、何世帯かの遊牧民が暮らしているようだ。
この川で水を補給していく。
私が今使っている浄水器はGRAYLというアメリカのアウトドアブランドの物。
これが画期的で、水を外側の青いボトルに入れ、その上から内側の筒を押し込む事でフィルターでろ過される、という仕組みになっている。
従来の浄水器なら、ポンピングしたり、ベットボトルの口にフィルターを設置してろ過する、という仕組みの物が多い。
このシステムだとどうしても手だけで作業することになるので、非常に疲れる。
このGRAYLだと上から体重を掛けるだけでろ過できるので、非常に楽チン。
浄水器としては、本当にお勧めできる一品。
川沿いの現時点で標高は2,000メートル弱。
峠は3,000メートル。
流石に今から突入するわけにはいかない。
ちょうど上りの開始地点にユルトがあり、住人に頼んで敷地内でテントを張らせてもらうことに。
夕食に炊き込みご飯を作ろうと米を準備。
野菜も切って入れて、最後に肉を入れようと缶詰を開けてびっくり。
買った缶詰が肉じゃなくて、プロフ(中央アジアの炊き込みご飯)の缶詰だったのだ。
開けた瞬間に肉じゃなくて米が見えた時、え?え? と、思考停止状態に陥ってしまった。
写真に肉が写っていたので、てっきり肉だと思ってたのに…
炊き込みご飯は急遽翌日の朝食にまわし、今日は冷たいプロフを夕食に食べる。
夕食は温かいものが食べたいなぁ。
(走行ルート:Kazarman→Kazarman西40km)