たぶんなに食っても美味い〜Son Kol南部まで

Son Kol東12km~Son Kol南部
8/10 (1003days)

薪ストーブのおかげもあって、ユルトの内部は暖かさが保たれており、昨晩はぐっすりと眠ることができた。

天窓の閉め方が幕を被せるという超アナログなせいで雨漏りがする点と、天窓を閉めると内部は真っ暗になるため朝が来ても気付かないという点だけが、たまに傷。

真っ暗なユルトの中、手探りで眼鏡を探し出し、薄らと明かりの漏れる入り口へと向かう。
ドアを開けた瞬間、目が眩むほどの明るさに、思わず顔を手で隠す。
明るさに慣れるのにしばらく時間が掛かり、ようやく慣れてきたところで辺りを見回す。

この日はすっかり快晴で、雨の心配はなさそうだ。
早朝7時、お母さんはもう既に起き出していて、牛の乳を搾っていた。
手慣れた手つきで、バケツ二つがあっという間に牛乳でいっぱいになった。

これが今日の私の朝食に出るのだとか。
煮沸とかしないのかな。

朝食は目玉焼きが二つにパン。
ジャムが手作りで、ベリーを基に作られたものがとても美味しい。
牛乳も恐る恐る飲んでみたけど、これも美味しかった。

私にとって初めてのユルト泊はとても新鮮で、面白い体験となった。
昨日から今朝に掛けて、世話を焼いてくれた女の子とお母さんにお礼を言い、出発する。

ユルトから下り坂が続き、道の先にはソンクル湖が見える。

ソンクル湖の周囲にはぐるっと一周するように道が通っているのだが、地図を見る限り湖畔に行けるのは湖の北部から南東部にかけて。
このままユルトから続く道を走ると湖南部を進むことになり、湖の側には行くことができない。

ということで、ユルトからしばらく進んだ後、メインの道を離れて分岐の小さな道に進み、湖畔を目指すことに。

一旦小さな道に入ると、ソンクル湖は一切見えなくなった。
平原に僅かに残る轍が道となり、いくつかの筋となって地平線の向こうへと消えていく。
道の先に何もない。山も、川も、湖も、何もない。
本当に、地平線しかない。

この道の先に湖があるのは確かなのだけれど、本当にあるのだろうか?と不安を覚えてしまう。
こういう風に地平線が広がる平原を走ることは初めてで、決して圧倒される様な風景ではないのだけれど、静かに興奮するというか不思議な感覚を覚える。

その後しばらくすると丘が連続する地形に変わり、いくつ目かの丘を越えた先で、ようやくソンクル湖が見えた。

見えなかった間に随分と近付いていたようで、ぱっと視界に現れた時にそのデカさと青さに驚いた。

湖畔にはユルトがたくさんあり、随分と人が住んでいるようだ。

坂を下り切り、11時半にソンクル湖の湖畔に到着。
無数のユルトが並び、辺りでは放し飼いにされた馬が草を食んでいる。
そのユルトの目の前に、ソンクル湖が180度、端から端まで見渡せないほどの大きさで広がっている。

ユルトはどれもレストランや宿泊施設となっているようで、昼食を食べさせてもらおうと値段を聞くと、なんと300ソム!(約470円)
キルギスの物価を考えるとあまりに高いので、湖のすぐ近くに腰掛け、持っていたパンと蜂蜜を食べることに。

あまりに質素な食事だけれど、この風景の中で食えるなら、砂漠の砂を食ったって美味くなるんじゃないだろうか。
それだけ価値のある風景が、目の前に広がっている。

たった一個のパンに、たっぷり一時間掛けて食べ切った後、重たい腰を上げて出発することに。
この風景から離れるのが勿体なくて、腰に小錦が乗ってるんじゃないかというくらいに、腰が重かった。

湖の北側と西側をぐるっと回ることも考えたのだが、それだと食料が尽きてしまいそう。
湖の周りには多分、ここのようにユルトはいくつか点在しているのだろうが、野菜や食料が買えるかは分からない。

東側と南側を走るのが湖を抜ける最短ルートなので、そちらへ進むことに。
進むにつれて湖畔から離れていくのが名残惜しく、何度も振り返っては写真を撮る。

湖の東側はアップダウンの連続で、コルゲーションも酷くて進むのに苦労する。
湖に流れ込む川があったりして、時々靴を脱いで渡らなければならない箇所も。

湖南部は比較的平坦な道になり、コルゲーションを除けば随分と楽な道に。
随分と湖から遠くなり、かつ高さもあるため、ソンクル湖の全景を見通すことができる。

南部では牛や羊、馬といった家畜が放し飼いをされているのを、頻繁に見かける。
昨日泊まったユルトの家族は、冬はソンクル湖は厳しい寒さと雪に覆われるため、テントを片付けて町で暮らすのだとか。

その間、この家畜達はどこで暮らすのだろう?
まさか町にこの大量の家畜も連れて行くのだろうか?

夕方近くになった頃、湖の南端辺りに到達した。
南端の辺りはまた湖と道が近くなり、湖畔にはユルトがたくさん立っている。

ちょうど宿泊施設になっているようで、この日はこのユルトに泊まることに。

値段は一泊1,200ソム(約1,800円)。
テント村みたいな感じで、ユルトが10棟程並んでいる。
ユルトの内部はベッドが置かれており、なんだかホテル然としていて味気ない。
ユルトの人もどこかビジネスライクで、昨日のユルトは本当に地元民の家に泊まらせてもらった様な雰囲気だったので、それと比較すると物足りない。

ユルトに泊まる時は、草原に一棟ポツンと立っているようなのを選ぶ方がいいな。

ユルトのすぐ側に湖があるので、自転車に乗ってすぐ近くまで向かう。
今日の宿となるユルトは味気ないかもしれないけれど、ソンクル湖は変わらずに美しい。

特にソンクル湖にゆっくりと沈んでいく夕日は美しかった。
太陽が沈み切った後もしばらくは余韻の様に橙色が空に残り、そして徐々に藍色が浸食していく。
それ単体で発光しているかのように青く輝いていたソンクル湖も、夜の訪れとともに徐々に明るさを失っていく。

しばらく湖を眺めていたが、ブルッと寒さを感じ、薪ストーブで温められたユルトに戻って床に就いたのだった。

(走行ルート:Son Kol東12km→Son Kol南部)

コメント

  1. ビシュケクの宿で会ったレンタルバイクで来た者です。
    ソンクル湖よかったですね~!
    今も旅を続けている沖野さんがうらやましいな。
    自分もそろそろ来年の夏の計画進めなくては…
    ブログ楽しみにしていますのでお元気で。

    1. ありがとうございます!
      自転車の不調もビシュケクで直せたので、ソンクル湖の道のりも何とか走破できました。
      またどこかでお会いできることを楽しみにしております。

  2. うわ~、ここは素晴らしい!思わずネットでソンクル湖について検索しちゃったよ。
    そして、完全に恋に落ちた(*^^*)
    只ひとつ残念なのは、以前のように写真が拡大して見られなくなった事やね。容量の関係で無理なのかな?

    1. お久しぶりです!
      今確認して、たしかに不具合が出ていたので対応しました。
      とりあえず最新の記事は拡大できるので、ぜひご覧下さい。

  3. おおっ、早速ありがとう!もっと早く伝えたほうが良かったのかな、でも知ってのとおりおじさんシャイだから・・・

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