前哨戦〜Wiskey Naraまで

Saruchu~Wiskey Nara
6/29 (961days)

この日も快晴の天気で、絶好のサイクリング日和。
ここ最近は体調不良だったり、できるだけ早く出発したいという理由で淹れていなかったコーヒーを飲み、せっかくの最高の天気をゆっくりと楽しむ。

インド走行中にしては遅めの8時過ぎに出発。
レーまでは300キロを切った。

マナリ・レーハイウェイ上の最高標高の峠は、タグラン・ラの5,360メートル。
タグラン・ラまでも後143キロ。

タグラン・ラは車両で行ける世界で二番目に標高の高い峠とされており、一番は同じくレー・ラダック地方にあるカルドゥン・ラの5,602メートルとされている。
ちなみに、カルドゥン・ラを世界最高標高の峠という説には疑いがあり、GPSを使った近年の調査によると実際の標高は5,359メートルと言われている。

これは、インドが「車両で行ける世界最高標高の峠を有している国」という称号が欲しいがために作った捏造というのが、もっぱらの噂。
実際の世界最高標高の峠は、チベットにある5,500メートルのものになるらしい。
それに、車両は無理ではあるが自転車で越えられる峠だと、アンナプルナサーキットにあるトロン・パスの標高5,416メートルがある。

標高面でいうと、カルドゥン・ラもタグラン・ラも特別な峠という訳ではないのだが、自転車旅行者からすると「フルパッキングの自転車で行ける世界最高標高の峠」ということで人気は高い。

Saruchuの集落の入り口にはインド軍のチェックがあり、ここで許可書を見せ、軍人が台帳に記帳していく。
なお、Saruchuでは何故かチェックポイントが二つあった。

この日は4,950メートルのNakee La(ナキー・ラ峠)を越える。
いわば、標高5,000メートルの峠越えの前哨戦とも言える。

Saruchuではレストランがいくつかあり、そこでちょっと仲良くなった店主曰く、ナキー・ラを越えた先にあるウィスキー・ナラというテント村まで行かないと、レストランや商店は一切ないという。
Saruchuで行動食を買い込んでから目指すことに。

店主曰く、Saruchuから25キロはフラットな道が続くということで、確かに川沿いに平坦な道が続く。
しかも路面状態はインドでも一番いいんじゃないかというくらい良いもので、最高に気分の良いサイクリングを楽しめる。

川は幅は広いけれど水量は少ない。
雨季の時期にくると、この幅一杯に増水するのだろうか。

そして店主の言ったとおり、25キロ走って九十九折の入り口に到着。
21個の九十九折があるらしい。

九十九折に突入する前に、購入しておいた行動食を食べてエネルギー補給をしていく。

九十九折というと厳しい山道を想像する人が多いかもしれないが、実際には九十九折というのは合理的な道の造り方をしていて、緩やかな斜度が続いていく。

そのため走っていて疲れないし、見た目の風景も映えて私は走っていてとても気分が良くなる。

九十九折のスタートから10キロ走って、ようやく21個のループを曲り終えた。
流石にそこから見る風景は壮観で、九十九折は走ってきた道がはっきりと見下ろせるため、走破した達成感も感じることができる。

九十九折が終わったところで標高は4,667メートル。
そこからは開けた谷に沿って、緩やかな上りが続く。

途中、トラックが故障して渋滞を引き起こしている場面に遭遇。
こういう時、渋滞を無視して進めるのは自転車のいいところ。
というか、車同士がすれ違うのも難しいくらいの道幅で、故障するくらいボロいトラックを走らせるなんて、いい迷惑でしかない。

九十九折が終わったところからナキー・ラは10キロ程度なのだが、異常に長く感じる。
展望が開けているため、随分と前からナキー・ラと思われる峠は見えているのだけれど、心理的な物なのか、ゴールが見えている分余計遠く感じる。

そんな長い道のりも終わりを迎え、14時半。
ようやくナキー・ラに到達。標高は4,950メートル。
これで3つ目の峠を走破。

ナキー・ラにもタルチョがはためいているが、他に観光に来ている人間もおらず、風で暴れる旗の音しか耳には入ってこない。

下りは未舗装路。
九十九折が谷底へと延びている。

「Drive. Don’t Fly.(運転しろ。飛ぶなよ)」
多分、年に何件か転落事故が発生するのだろう。
こういう看板を見ると、私のハンドル捌きも慎重にならざるを得ない。

下るにつれて、水溜りが増えてきた。
泥がブレーキにつくのを防ぐため、自転車を下りて押して進むことに。
これまでの3つの峠で、まともにダウンヒルができていない。

幸い、ナキー・ラからテント村のウィスキー・ナラは遠くはない。
最後の2キロ程はずっと自転車を押したまま、15時半に到着。

一軒のレストランに、夕食を注文する代わり、テントを張る許可をもらうことができた。

ウィスキー・ナラから先、一本の道が山へと向けて延びていく。
明日はいよいよ標高5,000メートルの峠越えだ。

(走行ルート:Saruchu→Wiskey Nara)

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