なにかをやり続けるということ〜Keylongまで

Koksar~Keylong
6/25~6/26 (957~958days)

昨日の全く楽しくない、むしろ最低の記憶として刻み込まれたマナリ・レーハイウェイ最初の峠越え。

5時半に起床すると、この日も雨。
あれだけ楽しみにして、何ヶ月も掛けてここまで走ってきたのに、こんな仕打ちってないよ…

気分は全くのらないのだが、それでも朝食を食べ、出発の準備だけは済ませて雨が上がるのを待つ。
しばらくすると雨脚が弱まり、今だ!と自転車に荷物を取り付けて部屋を出ると、途端に雨脚が強まる。

もうええわ、雨なんか関係あらへん!と、レインウェアを着込んで出発することに。

昨日越えたロタン・パスからは標高を600メートル下げた3,100メートルからスタート。
川沿いの渓谷を進んでいく。
晴れていたらさぞ絶景だったのだろうな…と思うと、虚しい気持ちになってくる。

道には羊や牛の家畜達の糞でまみれ、雨で濡れた今、最悪の状態になっている。
心ばかりか、身も自転車まで汚され、もうどうにでもなれ…と自暴自棄になる。

出発して4キロほどで、節目の時を迎えることに。
累計走行距離が、5万キロに到達したのだ。
5万キロ到達は、ロタン・パスを開通させるトンネルの工事現場で。

アラスカから出発して957日目。
あの頃は、まさか自分がこんな長い距離を走るなんて思ってもいなかった。
当初の予定だと3年で終わるはずだったこの旅行は、一時帰国期間中も含めると既に3年以上が経過している。

こういう累計距離の記録というのは、長くさえ走っていれば誰でも到達する事ができる。
SNSやブログでは、「累計距離なんて価値も意味のない記録だ」と言う自転車乗りを見かける事もある。

私も、走行距離に価値があるとは思わない。
この5万キロに及ぶ自転車旅行は、決して冒険でもない、ただの遊びだ。
仕事を辞めて無職になり、3年間も海外を走り回っている事に、自己満足以外の何物でもなく、社会的意義なんて存在しない。

ただ、「5万キロの間、自転車旅行を好きで続けられた事」ということは誇れることだと思う。
遊びだろうが何だろうが、一度腹括って決めた事をやり通すということにこそ、価値があるはずだ。

私にとって自転車で世界一周する一番の理由は、意地だ。
20歳の時に決めた事をやり遂げるという意地が、5万キロの間、私の背中を押してきたのだ。

この5万キロの計器表示を見て、落ち込んだ気持ちが、少し励まされた気がする。

昨日一瞬にして消滅したブレーキシュー。
今朝も雨の中の走行ということで、シューの減りを心配していたのだが、道は緩いアップダウンが連続し、ブレーキを掛ける機会が少ないのが救いだ。

時折、雲の切れ間から見える山の頂上や氷河が見える。
晴天ならば…という思いはやはり拭い切れない。

川沿いに進み、谷底の集落Tandikに11時過ぎ到着。
地味に下り坂だったようで、標高は2,800メートル。

ガソリンスタンドがあり、ここで調理用ストーブの燃料を補充していく。
次のガソリンスタンドは、365キロ先のレーにならなければ現れない。

ここで昼食休憩をとり、モモを食べていく。

昼休憩から7キロ走り、Keylongの集落に到着。
13時と早いのだが、このまま雨の中を走るのは、非常に損な気がしてきた。
せっかく絶景が広がるのに、見えない中で走るのは、自転車旅行を楽しんでいるとはいえない。

ということで、700ルピーの宿に投宿することに。
こうなったら、晴れの日が来るまでKeylongから出発しないぞ!という心意気だ。

Keylongには特に見どころはないのだが、観光地化もされていないため、ゆったりした空気が流れている。

6/26
目を覚ましてみると、この日は青空が広がっている。
晴れだとこんなにも綺麗だったのか…という絶景が、宿の屋上から広がる。

ただ、進む方角には少し雲が。
もしかしたら、あの雲が雨を降らせるかも…

この二日間ですっかり雨に対して恐怖心を抱いていた私は、この日もKeylongに停滞することに。

結局雨は降らず、一日中快晴だったのだが…
「結果論で仕方ないさ」と前向きに考え、汚れた自転車を掃除してやることに。
自転車を綺麗にすると、不思議と自分の気持ちも前向きになってくる。

きっと明日も晴れて、この絶景の中を走れるはず!

(走行ルート:Koksar→Keylong)

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