ようやく本線へ〜Autまで

Rampur~Aut
6/20~6/21 (952~953days)

6/20
さて、12時間のタクシー移動でRampur(ランプール)に無事帰ってこれたわけだが、ここから更に来た道を数十キロ戻らなければならない。

数日前に確かに走った道なのだけれど、すっかり忘れていて、「あれ、こんな上り坂あったっけか?」と思いながら汗を掻いて来た道を戻る。

30キロほど走り、ようやく分岐のSainjの集落に到着。
この分岐から続く峠道を越えることで、ようやくマナリ・レーハイウェイの本道へと合流することができる。

ただ、その峠道がGoogleマップのデータを見るに、一筋縄ではいかなそうなのだ。
峠自体の標高は3,000メートルと大したことないのだが、この分岐が標高900メートル。
ここから約60キロで標高2,000メートルも獲得するというのは、これまでの経験から言って相当にきついものだと予想される。

あまりにキツそうなので、当初はランプールからマナリまでバスで移動しちゃおうかなぁ…なんて考えもした。
ただ、それを差し引いてもバス移動はもう昨日で懲り懲りなので、結局は自分で向かうことに。

川に架かる橋を渡り、そこからジワジワと上りが始まる。
ただ余りにもジワジワと緩やかで、「本当にこれから標高3,000メートルまで行くのか?」というくらい。

余りにも上りが緩やかで一向に標高が上がらないので、気温がとても暑い。
スピティバレーはこの時期だと暑くも寒くも無く、自転車で走るには天国の様な場所だったので、余計に今の汗だくの現状に嫌気が差す。

12時半頃、この日55キロ走ったところでAnniという町に到着。
標高は1,200メートルと、分岐からほとんど上がっていない。

Anniから峠までは残り32キロ。
Anni以降はホテルが望めそうなのは、峠の10キロ先にある集落。

距離的だけを見れば大したことはないが、32キロという僅かな距離で1,800メートルも標高を獲得しなければならない。
私の脚力だと、山道では1時間に300メートル弱を獲得するのが精一杯。
そうなると、単純計算でAnniから峠まで6時間掛かることになる。

昼食を食べながら考えを巡らせた結果、この日はAnniで走行終了とすることに。
とてもじゃないが、この日中に峠は越えられないだろうし、インドでは野宿するのが非常に難しいので、泊まれる所で走行終了するのが賢明だろう。

6/21
峠まで単純計算で6時間ということは、休憩を挟んで7時間は掛かるだろう。
普段だと一日に7時間の走行時間、というのが私の平均的な一日なので、この日は峠越えに一日のほとんどを使うことになる。

そうとなれば、出発は早い方がいい。
ということで、早起きして7時に出発する。

出発早々から厳しい斜度の上りになるかと思いきや、昨日と変わらず緩い上り。
走行距離だけが伸び、標高は思ったよりも上がらない。
これは後半にガツンときつい上りが待ち受けているタイプか…と戦々恐々しながら進む。

この辺りもリンゴが名産なのだろう。
畑には、ほんのりと色づき始めた実がなっている。

上り坂だと、当然普段よりも使うカロリーは多くなる。
ということは、ハンガーノックになるリスクが高くなる。
(※ハンガーノック:空腹とカロリー不足により、体が動かなくなる症状)

ハンガーノックの予防策としては、こまめにカロリーを摂取するのが最善策。
しかし、この日は道中にレストランや商店が一切なく、補給しようにもできない。
厳しい上りになるのがわかっていたので、重量を気にして携行食も僅かしか持って来ていない。

20キロ弱走ったところで、ほとんどガス欠に近い状態になってしまった。
運良く集落の入り口だったので、地元民に食堂はないか、と尋ねると、商店に連れて行かれた。

小さな商店で、クッキーやチョコレートくらいしか売っていなかったのだが、(多分)売り物ではないインスタントラーメンを特別に作ってくれた。

具のないインスタントラーメンだけれど、マサラやスパイスを入れてくれていてとても美味しかった。

この休憩から程なくして、斜度が異常にキツくなって来た。
峠までは残り5キロ。標高はまだ500メートルも上げなければならない。
平均勾配は実に10%。
フル積載の自転車からすれば、10%なんて壁のように思えるくらいにきつい。

それに加え、未舗装路のところがあったりして、そこではとてもじゃないが自転車に乗っていられない。
自転車を押して歩くのだが、きつい斜度と石で倒れてしまいそうになる。

途中、歩いていた地元のお母さんに、揚げた肉なのかお菓子をもらい、なんとか元気をもらう。

それでもきつく、遂にはカロリーが底をついてハンガーノック
なってしまった。
峠までの残り3キロは自転車を降りて押し、数十メートル進んでは休んで…の繰り返し。

ハンガーノックになると、体に力が全く入らなくなる。
携行食がないのであれば、後は根性で乗り切るしかない。
ここで気持ちが折れれば、本当にへたり込んで動けなくなるくらい、ハンガーノックは危険なのだ。

小休止する度、「最後の力を振り絞れ!」と体と心に気合いを入れて進む。

そしてようやく頂上に。
時刻は13時半。

頂上にはヒンドゥー教の祠があり、たくさんの参拝者がやってきている。
標高は3,132メートル。

峠には食堂がいくらかあり、ようやくここでまともな食事をとることができた。

ターリーを頼んだのだが、出てきたのはぶっかけ飯。
ターリーといえば普段なら米とおかず数点、そしてロティがついてきたのだが。

ただ、今は何を口にしても美味い。
一口口に入れるだけで体に力が漲ってくるようで、カロリーが血管を伝って急速に体全体に染み渡るのを感じる。
それほど空腹で危険な状態だった。

さて、ここからはお楽しみのダウンヒル。
標高3,132メートルまで登らされて、標高1,300メートルまで
一気に降るなんて、理不尽極まりない…
でも、このダウンヒルがあるからこそ、山岳地帯の走行が楽しめるのもまた事実。

ただ、標高1,300メートルまで降ってからは、アップダウンばかりに。
今日はもうクタクタで、足に全く力が残っていない。

それでも最後の力を振り絞り、Autの町に到着。
このAutがメインハイウェイの合流地点で、ようやくマナリ・レーハイウェイへと乗ることができた。

Autの600ルピーのホテルに投宿。
晩は併設のレストランでターリーを注文。
ここでもやはりぶっかけ飯だったので、この地域ではターリー=ぶっかけ飯なのだろうか。

飯を食って人心地つきながら改めて思うと、この旅行中でも上位に食い込むきつさの山道だった。

そしてここから先は世界屈指の山岳地帯、標高5,000メートルの峠
が待ち構えている。
ここでへばっている様じゃどうなる、俺!?

(走行ルート:Rampur→Anni→Aut)

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