スピティバレーの入り口〜Rampurまで

Kufri~Rampur
6/7 (930days)
朝食を終えてホテルを出る。
今朝は乞食の少年がたかって来ることもなく、健やかな朝。
昨日はほとんど眺める余裕も無いほど走行に集中していたが、Kufri周辺もやはりリンゴの栽培が盛んなようで、山の斜面はびっしりとリンゴ畑の白い幕で覆われている。
どうやらKufriで上りはひと段落着いたようで、しばらく尾根を走った走った後、下り坂が始まる。
標高2,200メートルまで下った後、再び上りが始まる。
このまま下り続けてくれれば…と少し不満を覚え、ブツブツと文句を言いながら進んでいく。
風景は素晴らしく、ここでもリンゴ畑が一面に広がる。
もしかしたらリンゴの甘い香りがするんじゃないか?と鼻をすんすんするが、残念ながらそれを感じることはない。
今はまだ収穫時期ではないようで、付いている果実もまだまだ緑色。
匂いは感じないが、時々吹き抜ける、リンゴ畑の広がる山の斜面を撫でる様に吹く優しい風は、とても爽やかな心地にさせてくれる。
リンゴ畑を傍目に標高はじわじわと上り続ける。
11時半、標高2,600メートルのNakondarで昼食休憩。
ターリー(インドの昼定食)、久しぶりに食べたな。
Nakondarがどうやら本当に峠の頂上だったようで、ここからは下り一辺倒でガンガン標高を下げていく。
余りにも下りが長く、ブレーキを握り続けていることでシューが減ってしまった様で、途中何度かブレーキの調整をしながら下っていく。
標高1,600メートルくらいまで下ってくると、もうめちゃくちゃに暑い。
その暑さが、「そういえば今インドにいるんだっけか」という事を私に思い出させる。
そしてしばらく下り続けると、眼下に大きな渓谷が見えてきた。
スピティバレー(Spiti Valley)の下流だ。
川の色は灰色で、想像と違って綺麗ではない。
下り続け、川沿いの分岐へと到達。
分岐はManali(マナリ)、そしてLeh(レー)まで延びるメインハイウェイと、スピティバレーの上流へと向かう道とに別れている。
このままマナリへと向かうのも悪くないが、ここはスピティバレー方面へと舵を切る。
当初私はスピティバレーの存在を知らなかった。
ネパール走行中に出会ったヨーロピアンサイクリストが「スピティバレーは最高よ!」という事を教えてくれて、初めてその存在を知ったのだ。
マナリ・レー地方もそうなのだが、スピティバレーも最大で標高4,600メートルに達する峠があり、高山地帯に当たる。
そしてチベットと国境を接しており、数百年の歴史を誇るチベット仏教の寺院が多数残されているのだそうだ。
山好きな私としてはとても魅力的なルートだし、それに日本人サイクリストがあまり行っていない場所で情報も少なく、そういう点でも興味をそそる。
スピティバレーの上流、東へと延びる道を川沿いに進む。
標高は900メートルまで下ってきており、非常に暑い。
曲がりくねった川に沿う様に、道も同じくグネグネと何度もカーブする。
何十回目かのカーブを曲がった時、遥か視界の先に雪山が顔を覗かせた。
暑くて仕方ないくらいの現在地からすると、その雪山の存在は余りにもギャップがあり、際立った存在感を放っている。
これから数日間を掛けて、あの雪山に近い標高まで向かうのか…と想像すると楽しみでもあり、「本当に辿り着けるのだろうか?」という怖さもある。
というのも、インドではホテルでインターネットが拾えないこともあって、この先の情報をほとんど調べていない。
この先がアスファルト舗装されているのかもわからないし、天気なんかも全くチェックしていない。
だからこその面白さもあるのだが、山岳地帯での走行というのは非常に厳しいものということも、これまでの経験上よく分かっているつもりだ。
その後も川沿いに進み16時半、Rampurの町に到着。
川を挟んで両岸に町が分かれた面白い作りの町だ。
橋を渡った先の対岸はどうやら住宅街らしく、宿や飲食店、小売店など町のメインの機能はこちらの岸に集中しているようだ。
700ルピーで宿が見つかり、チェックインした後に町を少し歩いてみる。
至って平均的なインドの小さな町で、まだチベット文化を感じさせる物は見られない。
Rampurの宿もやはりWifiがなく、携帯会社に行って旅行3年目にして初めてSIMカードを購入。
インドはどうも本来外国人にSIMを販売できないようなのだが、忖度して売ってもらうことができた。
宿に戻り、夕食を食べながら久しぶりに見るネットで早速天気をチェックすると、週間天気には傘のマークがずらっと並ぶ不穏な予報が…
知れてよかったのか、知らない方がよかったのか…
(走行ルート:Kufri→Rampur)