数秒が生死を別ける〜Kufriまで

Solan~Kufri
6/6 (929days)

さて、今日も今日とて峠越えに邁進しなければならない。
峠は標高2,500メートル、今日のスタートは標高1,800メートルから。

何が悲しくて毎日毎日クソ重たい荷物を持った自転車を漕いで、坂道を上らないといけないのか。

この際申し上げておくが、私の気持ちとしては決して坂道は好きじゃない。
好きなのは坂道を登りきった峠からの景色なのであって、坂道の途中は汗水流しながら文句ばっかり言っている。

標高2,500メートルの峠を目指し、今日も一日の大半を坂道との格闘に費やすことになる。
朝っぱらからバカじゃねぇの、と我ながら思うが、こればっかりは仕方ない。

長く険しい道のりを経て越えた峠から見下ろす景色と、そこを下る時の風は麻薬のような中毒性をもっている。



出発してしばらく下りが続く。
ペダルを漕ぐ必要もないので気楽に進んでいると、目の前3、4メートルにいきなりボーリング大の岩がゴツっという鈍い音を立てて空から降ってきた。

何が起きたのか事態が飲み込めず、しばらく呆然と岩を見つめ、ハッとして岩が降ってきたであろう方角を見る。
崖の方でショベルカーが山を崩しているのが目に入ってきた。

その後は工事関係者がそそくさやってきて、岩を道路から退かしていた。
私に一言謝るでも大丈夫かと声をかけるでもなく、「何だこの変な奴」という訝しい視線を投げかける始末。

危うく峠を登る前に、天に昇るところだった。
いや、冗談じゃなく数秒単位で命を落とすところだった。

これまでもインドの杜撰な工事体制や、交通マナーの悪さを嫌というほど見てきたため、怒りというよりかは呆れの感情が湧いてくる。

標高1,400メートルまで下った後、そこからは上りが始まる。
昨日よりかは斜度が緩く、ダラダラと上っていく感じ。

朝から雲行きは怪しかったのだが、ちょうどレストランで小休止を取っているところでザッと雨が降ってきた。
かなり勢いは強く、しばらく待ってもすぐには止みそうになかったので、そのまま昼食休憩を取ることに。

この辺りでは、付け合わせに漬物の様なものが出てくる事が多い。
インド料理は今のところほとんど美味しく食べられているのだが、この漬物だけは苦手だ。
朝食にチャパティ(発酵させていないナン)を頼むと、オカズがこれだけだったりすることもあり、辟易とすることもしばしば。

雨が降ったことが主な原因だろうが、今日はかなり涼しい。
汗を掻かないし、水もほとんど飲まない。

山の中に民家が並び、畑がある風景は南米・エクアドルとそっくりだ。

こんなインドの片田舎でもディーラーがあるんだから、流石世界のトヨタ。
なお、インドで一番走っている車の多い国外メーカーはSUZUKI。
トヨタは高級車扱いなのか、あまり見かけることはない。

ちなみに一番走っている車が多いのは、国産メーカーのMahindraもしくはTATA。
どちらもエンジンが幼稚なのか、黒い煙を撒き散らしながら走っている。

しばらくして、この山間部最大の街・Shimla(シムラ)が見えてきた。
シムラは世界遺産に登録されている山岳鉄道、カルカ・シムラ鉄道の終着駅だ。
遠目に見ても、かなり規模の大きい街であることがわかる。

そして14時半、シムラの街に到着。

当初はここシムラで泊まるつもりだったのだが、数あるホテルはどれも見た目が高そう。
それに山に張り付いている街の作り上、どのホテルに行くにしても階段を避けて通ることができない。

観光客も多く、自転車を外に置いて部屋まで荷物を運び入れるのに何往復するのも嫌なので、先へと進むことに。

幸い、地図を見る限りこの先にもホテルがありそうな町がいくつかある。

シムラ以降、上りの斜度がかなりきつい。
息を切らしながら進んでいく。

インドにも車の教習学校があるなんて、ジョークですか?

シムラから8キロ進んだDhalliという町に到着したのだが、当てにしていたホテルがまさかの宿泊拒否。
満室とは思えない閑散具合で、なぜ拒否されたのか分からないが、先へ進むしかない。
Dhalliでバナナを買い、それで体に喝を入れて先へと進む。
時間はもう16時を過ぎており、空はうっすら赤みが差してきている。

こんなにも森林が広がっているのに、テントを張れる様なスペースは一切ない。
たまにちょっと良さそうな場所があっても、難民なのかテントを張っている人達がいて、とてもじゃないがその隣で野宿する度胸は私にはない。

17時過ぎ、Kufriという集落に到着。
標高は2,500メートル。
ここはリゾート地の様になっており、ホテルが複数ある。
しかし何故かここでも宿泊拒否をされ、いくつかのホテルをたらい回しにされた挙句、ようやく一つのホテルに宿泊することができた。

Kufriには物乞いの少年がいて、夕食のために外に出た私にしつこく付き纏ってくる。
「金くれ」しか言語を知らないんじゃないか?というくらい、それしか言ってこない。
流石に私も短気な方なので、シッシッと犬を追い払うかの様な仕草で追い払う。
この日はずいぶん疲れた上に、最後の最後までイラつかされる一日だった。

(走行ルート:Solan→Kufri)

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