出るもんだね〜Haridwarまで

Dhampur~Haridwar
5/31 (923days)
ーファーストインプレッション。第一印象。
人間関係を構築する上で、見た目の第一印象というのは非常に大事だという。
旅行者が新しい国に入る上でも、第一印象というのはその国を好きになれるかどうか、という点で非常に大事である。
初めて話すその国の人、初めての食事、初めて走る道の路面状態…
その第一印象という点では、インドは完璧だった。
親切な人々に、美味しい食事、完璧な路面状態…
その完璧な第一印象が、まさかあんなにも酷い路面状態と運転モラルの低さにより、昨日にして一気に評価が急転落することになるとは…
いや、昨日はたまたまインドの悪い面が重なっただけで、普段のインドはやはり素晴らしい国かもしれない。
きっとそうに違いない。そうであって欲しい。
…そんな願いは、朝から無残にも打ち砕かれる。
穴ぼこの未舗装路、逆走する車、追い越し時の幅寄せ…
一度町に入れば道路は狭くなり、両車線ともに路上駐車の車によってさらに道は狭められる。
そこに人も牛も車も通るわけで、渋滞が起こるのは必至。
渋滞している理由も渋滞箇所も明白なのに、後ろからはクラクションを意味もなく鳴らすバカなドライバー。
タダでさえゴミ溜めで臭いのに、騒音という公害を更に作り出すバカ共。
町を抜けると、また未舗装路を多く含んだ最低の道に。
たまにアスファルト舗装が現れたと思ったら、そこには速度を落とすためのトーぺ(凸凹状の突起)が設置されている。
このトーぺ、なんの標識もなく設置されており、そして別に横断歩道の前後にあるわけでもなく、唐突に現れる。
気づかずにこのトーぺに突っ込めば、体も自転車もバラバラになるんじゃないかという衝撃を受ける事になる。
害悪以外の何物でもない。
インド人のドライバーは当然、こんなトーぺ如きでスピードを緩めるとい常識を持っているわけもなく、超スピードで突っ込んでいく。
物凄い衝撃音を残して走り去っていくのだが、案の定このトーぺに駆動系を破壊されるのか、路肩に立ち往生している車も少なくない。
あまりにもイライラして頭に血が上り、破裂しそうなくらいに頭痛がしてきたため、頭を冷やすためにサトウキビジュースを飲む。
一杯では冷やしきれず、おかわりしてようやく何とか平静を取り戻せる…といったところ。
風景に面白い物でもあれば、悪路に対する溜飲も下がるのだが、退屈をそのまま具現化した様な殺風景が広がるばかり。
レンガを作る産業が盛んなのか、釜と煙突らしい物が時々見られるくらい。
60キロを走り、ようやく昼休憩。
この食事の時間だけが、インドで唯一心が休まる瞬間。
この日食べたのはチャナマサラという料理。
ひよこ豆を水気の少ないカレーで炒めた様な料理。
昼休憩後はまた悪路へと自転車を走らせる。
トーぺやドライバーに対する感情は怒りから呆れに、そして諦めに変わり、最後には無心で黙々と進む様に。
途中、林道に入り、象出没注意の看板が現れた。
ネパールの虎注意の看板もそうだったが、散々大げさに煽っておいて野生動物が出てきた試しがない。
やっぱり出てきませんでした〜というブログのネタに写真でも撮っておくか…
パシャリと一枚撮って先へ進むと…
その標識から数十メートル先に本当に象がいた!
というか、上の写真でもよく見たら写っていた!
それも親子連れで三匹も!
野生の象なんて当然見たこともないわけで、今朝から続いていたインドに対するイライラが全て吹っ飛ぶくらいにテンションは急上昇。
パシャパシャと写真を撮っていてふと思い出したのが、インド象って確か象の中でもかなり凶暴なんじゃなかったっけ…
そう思うと急に興奮が冷め、じっと象を見ていたのだが、当の象はのんびりと葉っぱを食べている。
しばらくすると満足したのか、それとも私や車が鬱陶しくなったのか、静かに林の奥へと消えていった。
野生動物って、神話上の存在じゃなかったのね…
本当に出るもんなんだな〜…と、象がいなくなった後も、しばらく去っていった方角を見て呆然としていた。
野生の象を見たということでテンションも持ち直したか、その後はペースよく走り、15時ごろ、遂にガンジス川本流に到着!
ガンジス川はヒンドゥー教において、その存在自体が聖なるものとして信仰対象とされている。
ヒンドゥー教徒は聖なる川・ガンジスで沐浴するためにわざわざ遠方から巡礼する事も珍しくないらしい。
事実、河岸には沐浴がしやすいように段差が設けられており、沐浴をしている人の姿も大勢見られる。
また、死者の灰をガンジス川に流すという宗教文化も存在していると、何かの文献で昔読んだことがあったのだが、本当にそれっぽい事をやっている人達がいる事には驚いた。
河岸で火を焚いて、一人ずつ順番になって粉っぽい何かを川に向かって投げている現場を、川に架かる橋の上からじっと眺めていた。
その側では沐浴している人もいるわけで、21世紀の現代でもそんな風習が残っているんだ…と、これには大きな衝撃を受けた。
ガンジス川に架かる橋を渡りきると、Haridwar(ハリドワール )という街に到着。
全長2,525キロと長いガンジス川ではあるが、その傍にあるいくつかの街はヒンドゥー教の聖地とされている。
このハリドワールもその聖地の一つであり、街は巡礼に来たインド人で溢れている。
巡礼者はやはり週末が最も多く訪れるらしく、この日は金曜日。
訪ねたホテルは満室だらけで、ようやく見つけた宿は1,250ルピー(約1,900円)と私にとっては高級ホテル。
他に選択肢はないし、それにインドでの初めての観光地ということで2泊することに。
翌日は聖地とされるガンジス川とハリドワールを存分に観光する所存。
(走行ルート:Dhampur→Haridwar)