タトパニの温泉〜Pokharaまで

Dona~Pokhara
5/18~5/21 (910~913days)

5/18
昨夜降り続けた雨はすっかり鳴りを潜め、今朝は快晴の空。
ネパールの雨季は5月末頃から始まるとの事で、正直なところ今回のアンナプルナサーキットは直前まで行くかどうするか、迷った経緯がある。

実際来てみると、午前中は快晴で正午以降に崩れることが多いため、正にシーズンとしてはギリギリのタイミングだった。

そしてそんなシーズンギリギリのタイミングだったからか、トレッカーの数は実に少なかった。
トレッキングルート上でほとんどトレッカーに会わなかったし、ハイキャンプを除けば山小屋でも同宿者はゼロか1〜2組程度…という状況で、ストレスなく過ごす事ができた。

EBCトレッキングではトレッカーだらけだし、食事の時間帯は山小屋の食堂は芋洗状態だしで、決して快適とは言えなかった。
静かに山を楽しみたいという人には、アンナプルナの方が楽しめるかもしれない。

さて、朝食も終えて7時半頃に出発。
空は快晴だが、地面は打って変わって最悪の状態。
未舗装路に雨が降り、そしてムクティナート以降はツーリストジープや地元バスの交通量が増えたため、泥まみれ。

ディスクブレーキは雨や泥に強い…なんて言われているけど、それは空身の自転車に限った話。
荷物を背負った重い自転車だと、泥がディスクローターかブレーキパッドに付着すればパッドなんて一瞬で削れてしまう。

昨日泊まったダナの標高は1,440メートル。
もう随分と下がってきたが、それでもこれからまだ標高は下がる。
ブレーキをかける頻度はまだまだ多い事を考えると、ここでの泥の付着は何としても避けなければならない。
泥が酷いところでは、自転車を降りて慎重に進んでいく。


泥で酷い箇所はあるものの、坂の傾斜自体は昨日よりもずいぶん緩くなった。
斜度のきつさで自転車を降りて下る…という場面はなくなったため、随分と楽になった。

もし機会があれば試してもらいたいのだが、下り坂で自転車を降りて支えながら進むというのは、かなり筋力を使う作業だ。
勝手に進む自転車を、突っ張る様に止めながらそろそろと進む姿勢は、特にふくらはぎと腕に物凄く負担が掛かる。

その後は特に印象に残るような風景もなく、アンナプルナサーキット後半戦、最大の見所であるTatopani(タトパニ)の集落に到着。

タトパニとは、ネパール語で熱い水。
察しのいい人ならピーンときただろう。
そう、タトパニは温泉が湧き出ている集落なのだ。

アンナプルナサーキットを走ると決めてから情報収集に入り、ガイドブックを流し読みしている際、タトパニが温泉地であることを知った。
アンナプルナサーキットの締めに温泉。これは女房を質にいれても行かねばならん。

おぉ、それっぽい施設が見えてきた。
時間は8時半と早いのに、もう既に賑わっているようで。

入浴料の150ルピー(150円)を払い、早速私も湯船へ向かう。
顔つきや言葉から、どうやら来ているのはほとんど地元民らしい。
旅行者と思われるのは、私の他にはヨーロピアンカップルのひと組くらいしか見当たらない。

湯温は日本の温泉くらいで、しっかりと熱さを保っている。
しかし熱すぎず…という絶妙な湯加減で、長く入ってもいられる。

汗と土埃にまみれた体が浄化され、疲れ果てて凝り固まった筋肉が解されていく…
アンナプルナサーキットを達成した人間にとって、これほどのご褒美はない。

調子にのって1時間くらい入ってしまった。

さて温泉を堪能し、後は荷物を置いているポカラの街まで戻るだけ。
そして、実質的にはこのタトパニがアンナプルナサーキットの終了地だったと思う。

タトパニ以降、雪山は一切見えない渓谷の中を進み、風景としては全く楽しめない。
それに交通量も増え、ジープやトラックが土埃を巻き上げ、彼等が通った後は濃霧が掛かったかのように、しばらく視界が全くなくなる程。
とてもじゃないがマスクをしないと呼吸も苦しい程で、まさか山の中でマスクを装着する羽目とは思いもしていなかった。

タトパニ以降は、早くポカラに帰りたい、その一心で走るだけで、サイクリングそのものは全く楽しんでいなかった。
私のアンナプルナサーキットは、タトパニで終わりを告げたのだった。

タトパニを過ぎ、降り続けてBeni(ベニ)の街に到着。
標高は830メートル。すっかり下界であり、山の涼しさなど失せ果ててむしろ暑い。

ベニからはアスファルト舗装となり、自転車を漕がずとも自然と進んでいくことに、感動を覚える。
この台詞、未舗装路からアスファルト舗装になった時いつも言ってる気がするな。

ただ、さすがネパールクオリティ。
アスファルトが凸凹で、スムーズには進んでくれない。

いや、重要なのは、自転車が勝手に進むということだ。
贅沢言っちゃバチが当たるぜ。

順調に進んでいるかと思われたのだが、Kusmaという集落の手前、前日に続いてまたしても工事に捕まった。
そしてここでもショベルカーが人為的に崖崩れを起こしている。
何でこんな変な工事の仕方をするのか、全く理解に苦しむ…
20分ほど待ってみたが、全く開通する予兆は見られない。

さらに待ったところでバイクに乗った地元民は痺れを切らし、ほとんど獣道の様な道を下っていく。
どうやら獣道の先で、工事区間の先へと抜ける道があるらしい。
それを見て、私もそっちの方へと進んでみることにした。

これがかなりのがれ場で、とてもじゃないが自転車なんて漕げない。
アンナプルナサーキットより、よっぽど登山してる気がする。

それでもなんとか工事区間を抜け、Kusmaに15時過ぎ到着。
かなり疲れていたため泊まることも考えたのだが、補給をして先へと進むことに。

というのも、ポカラへ戻るのには再び標高1,800メートルの峠を越えなければならない。
ポカラには翌日到着予定であり、アスファルト舗装で大分楽できている分、なんとか翌日の負担を減らしておきたいのだ。
それに、オフラインマップを見ていてもKusma以降にも何軒か宿はあるようだし。

そうしてKusmaを出発し、谷底まで下り返し、少し上ったところで宿場町に着いた。
確かに何軒も宿が連なっており、入れ食い状態だ。

適当に安そうな見た目の所から当たってみたのだが、何故か女将は首を横に振る。
え、泊まれないの…?
仕方ないな、まぁ他にもまだたくさんあるし…えっ、ここも泊まれないの?

なんとこの宿場町にある5、6軒の宿全てが、宿泊拒否してくるではないか。
そして誰も英語を話せないため、なぜ宿泊拒否されているのか全く理解ができない。

この宿場町をあてにして進んできたため、どうしていいか分からず呆然と立ち尽くしてしまった。
野宿しようにも、ネパールは隠れられるような場所はほとんどない。

私の呆然とした姿に見かねたのか、一軒の宿が「泊まっていいよ」と声を掛けてくれた。
値段は800ルピー(800円)とネパールではぼったくり価格もいい所だが、今は泊まれるだけでありがたい。

そして、投宿してすぐにバケツをひっくり返したような雨が降ってきた。
いや、本当に宿泊できてなかったらやばかった…

5/19~5/21

昨晩は宿がレストランを兼ねており、そこで晩御飯を注文できたのだが、朝食はないと言う。
調べてみると、ネパール人は基本的には1日2食らしい。

朝食は大体10時ごろに食べ、その後カジャという中食を昼に食べたり食べなかったり…そして晩ご飯、という流れなのだとか。

10時まではさすがに待てない。
出発して少しした所で、商店兼カフェを発見。

ガラスケースに何やら毒々しいお菓子があったので、チャイ(紅茶)と合わせて注文してみる。

砂糖を油で揚げた物らしく、物凄く甘い。
これまでの人生で食べた物で、最も甘いかもしれない。ほとんど砂糖の味しかしない。
チャイにも砂糖がたっぷりと入っており、あまりの甘さに気分が悪くなりそうだ…

ネパールの人は結構デップリと恰幅の良い人が多いけど、そりゃこんな甘いものばかり口にしてたら太るわな…

朝食以降、標高1,800メートルの峠を目指して上りが始まる。
アスファルトはほとんど剥げ落ちた最悪の状態で、その下の石や砂が露出している惨状。
砂で滑るし石でガツンと衝撃を受けるし、アンナプルナサーキット本線よりも、状態は酷いかもしれない。

あぁなるほど、中国監修の道路ならこのクオリティも納得だわ。

その後も地獄の様な道は続く。
もうアスファルトなんて欠片も見えない。見えるのは土と泥。

本当にここ、幹線道路ですよね?

もう写真を撮るのも面倒で、ただひたすらに「早くこの道が終わってくれ」というのを祈りながら走っていた。

そしてポカラには13時に到着。
道が段違いに綺麗なアスファルトとなり、片側3車線の立派な物に。
それをもっと早い段階からやれっての。

荷物を預けている宿へ向かう途中、銀行になにやら地元民が詰めかけ、抗議活動をしているようだ。
銀行に文句言う前に、自国の道路状態について政府に抗議した方がいいよ、君達。

そして無事、荷物を預けていたシャンティゲストハウスに到着。
実に13日ぶりだ!

ドミトリーもあるのだが、さすがに汚れ倒した状態でドミトリーに泊まるのは迷惑極まりない。
ということで、個室に投宿。

その後、疲れもあってポカラには3泊した。
アンナプルナに全力を投じ、その反動が出たのだろう、3泊の間はほとんど宿から出ず、ただただボーッとして過ごした。

さて、これでネパールでやり残したことはない。
休んだ後は、いよいよインドだ。
(走行ルート:Dona→Tikhar→Pokhara)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です