命の価値〜Donaまで

Tukche~Dana
5/17 (909days)

アンナプルナサーキットも折り返しを過ぎ、昨日からは下り坂に突入。
体力的には随分と楽になったと思ったのだが、登っていた時よりも寝覚めが悪いのはどうしたわけか。

張り詰めていた緊張が解けて、疲れが吹き出してきたのかな。

昨夜は寝付くまで雨が降り続けていたため、天候を心配していたのだが、今朝は無事快晴の空を取り戻してくれて安心した。

Kobangの集落を過ぎると、大きな川が現れた。
道は川を避けるように通っているのだが、川は干上がっており、河原を通った方がショートカットになりそうだ。

完璧に干からびていると思ったのだが、真ん中辺りでは普通に流れており、しかも幅が結構ある。
履いている靴は防水の登山靴なのだが、流れが強いため水の侵入は避けられそうにない。

靴を脱いで足を水につけてみると、幸いそこまで水温も低くはない。
川を渡りきり、濡れた足を乾かすためにしばらく日光浴。

冷えた足が徐々に温もりを取り戻していく感覚の、なんと気持ちのいいことか。

足を乾かして先へと進み、道路本線へと合流する。
しばらく進むと、前方で何故か車が数台立ち往生しており、人が車外へと出てきているのが見えてきた。

何事かと思っていると、突然私の背後で崖崩れが発生した。
何だなんだ!?と思って振り返ると、後方の崖の上でショベルカーが動き出し、土を道側に崩し始めているではないか。

工事を喚起する看板も無ければ交通整理する作業員もおらず、一歩間違えば落石に当たって危ないことになっていた。
憤慨してショベルカーを見上げて睨み付けるくらいしかできず、そのまま先へと進む。

立ち往生する車の脇を抜けて先頭に出ると、なんとその前方でもショベルカーが動き出して、崖崩れを起こしているではないか。
文字通り挟み撃ちを喰らう形で、車達は全く身動きが取れないでいる状態でいる。
当然ながら自転車も、通ることができない。

ここにも注意喚起の看板もなければ作業を監督する人物もいない。
ショベルカーが崩す崖の岩や土が自動車付近にまで落ちてきても、ショベルカーの作業員は一切気にしない。

当然、先頭にいる車は危険を感じてバックしようと試みるのだけれど、後ろでもショベルカーが作業をしているため、後続の車はバックのしようがない。
そして「なんで後ろに下がらないんだ!」「なんで後ろに下がってくるんだ!」という押し問答が始まる。

言葉は悪いけれど、あまりにも頭が悪い杜撰な工事体制で、ほとほと呆れてしまう。

開通まで40分も待たされ、重たい腰をあげて進むとものの1キロも進まないうちに再び工事現場。
ここでも人為的に崖崩れを起こしており、再び足止め。

崖崩れが起きる前に崩すというのは理解できるんだけど、なんで十分に安全管理も行わないまま、通行人もいる状況で実行するのか理解に苦しむ。
この国では、人の命はどうでもいいのだろうか?

ここまで酷い工事現場は今まで見たこともなかったから、衝撃を受けた。
二度目の工事現場では10分程待っただけで開通されたのが、せめてもの救い。

しばらく走り、Kalopani(カロパニ)という集落に到着。
雪山の白と草木の緑、そして可愛らしい石造りの家が並ぶ風景は、ヨーロッパの田舎にでもやってきたかのようだ。

カロパニの東側には、アンナプルナⅠ峰(標高8,091メートル)、アンナプルナ南峰(7,647メートル)、Bharha Chuli(7,647メートル)の連峰を望むことができる。
集落の風景も相まって、とても美しい。

アルプスのハイジの世界にでもやって来たかのようだ。

カロパニから進んでLete(レテ)という集落で昼食休憩を取ってからは、下り坂の傾斜がきつくなった。

急斜面の路面には大きな石がゴロゴロと転がり、時折その石にタイヤが取られて転びそうになる。
また石に乗り上げてガツンと衝撃を受けることもしばしばあり、その都度ホイールが壊れやしないかヒヤヒヤしながら進んでいく。

あまりにも石が多くて危険を感じることが多く、下り坂だけれど自転車を押して進む場面も。

下り坂というのは楽ができる…という認識を持っている人が多いだろう。
事実そうなのだけれど、同時に下り坂というのは危険も秘めている。
下り坂に身を任せて、気がつかないうちに車体をコントロールできないスピードまで乗ってしまって転倒…という事が最も怖い。

私はこの旅行以前、自転車競技の経験もなければオフロード走行の経験もない。
運転技術はおそらく並みのサイクリスト以下だ。

なので、下り坂ではアスファルト舗装でも頻繁にブレーキを掛け、自分のコントロールできる速度でゆっくりと進むようにしている。


しばらく走ると、どうやらアンナプルナ自然保護区の出口に到達したようだ。

公園の出口以降、道はさらに状態が悪くなった。
道幅は狭く、自動車二台がギリギリすれ違えるかというくらいで、それも片側は切り立った崖。
そして道路に侵食する大きな泥水溜り。

ちょっとでも操作を誤れば崖へ転落するし、泥水もブレーキに付着すればあっという間にパッドがすり減ってコントロールを失うことになる。
どちらも命の危機に面することであり、慎重に進まざるを得ない。

この日30キロを走り、14時半にDana(ダナ)の集落に着いたと同時に、雷が鳴り始めた。
様子見でレストランに入ると、案の定雨が降り始めた。

アップルパイと紅茶を注文し、小休止とするつもりだったのだが、それらを平らげても雨は降り止む気配がない。

結局15時半まで待ってみたが雨は止まず、そのままダナで走行終了とすることに。
宿は雷で電気がストップしており、部屋に明かりはない。

雨はますます強くなってきているようで、私の部屋に猫が雨宿りにくる始末。

私、犬猫の毛のアレルギー持ちなんだけど…

さすがにこの雨の中追い出すわけにもいかない。
ゆっくりしていってくれ。

(走行ルート:Tukche→Dona)

コメント

  1. 大変な道のりや✨
    直嗣のアレルギーは1番がほこり、2番が犬やった

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です