下界へ〜Tukcheまで

Muktinath~Tukche
5/16 (908days)

昨日ようやく最高到達地点であるトロンパスを越えたわけだが、アンナプルナサーキットはそこで終わりではない。
サーキットという名前が付いている以上は当然一周するわけであり、ちょうど折り返し地点にきたに過ぎない。

そして下りだから楽だという訳ではない…という事は、昨日のトロンパスからムクティナートまでの道中で痛感させられている。
決して気の抜けない帰り道になるに違いない…。

そう心に留めてスタートしたのだが、意外や意外、ムクティナートから先に伸びる道はアスファルトではないか!

日本人でアンナプルナサーキットを自転車で走る人は本当に少ない。
そのため、ネットで検索を掛けても出てくる情報はほとんど数年前のものになってしまう。
それを見ると当時は全面未舗装路だったようなので、アスファルト舗装化されたのはほんのつい最近ということになりそうだ。

これは嬉しい誤算。

時折穴が開いていたりするものの、タイヤが滑るかのようにスルスルと進んでいく。
久しくなかった感覚に、小さな感動すら覚える。
人類史上最も偉大な発明の一つに、アスファルト舗装は間違いなく入るだろう。

誰が発明したんだろうと調べてみたら、アスファルトって天然由来の成分なのね。
紀元前から防腐剤として使われていて、古代エジプトではミイラの保存に使われていたのだとか。
(Wikipedia「アスファルト」項目を参照)

ムクティナートから10キロ走ると、眼下にKagbeni(カグベニ)の集落が見えてきた。
灰色の荒れた大地にあって、そこだけが緑で彩られているカグベニはまるで桃源郷のようだ。

ここ最近は岩山の灰色か雪の白色ばかり見ていて、久しく緑なんて見てこなかったため、風に揺れる棚田の草に眩しさすら覚える。

アスファルト舗装はカグベニで途絶え、そこから先は再び未舗装路へと変わった。
果たしてこの先、カグベニ以降が全面舗装化されることはあるのだろうか…

ちなみにムクティナート以降、道を歩くトレッカーは全く見かけない。
地図上では一応ここもトレッキングルートではあるのだが、ムクティナートを最終ゴールとしてそこからジープに乗ってルクラへと帰るのが一般的なようだ。

未舗装路に変わって少々気落ちはしたが、路面状態は決して悪くはなく、自転車に乗ることができる。

干上がった幅の広い川沿いに進んでいく。
おそらくTilicho Peak(標高7,134メートル)と思われる雪山が頭をのぞかせる。
雪に櫛を掛けたように薄っすらと線が入っており、それが雪山を一層美しくさせているように思える。

11時前、Jomson(ジョムソン)の集落に到着。
標高は3,000メートルをついに切った。

銀行があり、作動するかはわからないけどATMもあって割と大きめの集落にあたるようだ。

ジョムソンで早めの昼食休憩。
チョウミン(チベット風焼きそば)を注文したのだが、値段は150ルピー(約150円)と、平地とほとんど値段が変わらないくらいまで下がった。

やれやれ、これでようやく食事に400円やら500円払う山価格から離れることができる。

ジョムソン以降は路面状態がなぜか悪くなり、交通量も多くなった。
車が砂を巻き上げながら私の側を通り過ぎていく。
そして風も強くなり、ストレスゲージがグングンと溜まっていく。

トロンパスまでの登りは、確かに大変だったけどストレスを感じることは皆無だった。
車は通らないし、何より風景が素晴らしく、自転車で走ることの喜びを感じながら走っていた。

こうして交通量が増え、見える風景に山が少なくなってくると、いよいよ下界に戻っていくことを実感するようで、寂しくなってくる。

ジョムソン以降に吹き始めた風は徐々に勢いを増し、そして前方から怪しい灰色の雲を引き連れてきた。

しばらく走っていると、案の定雨が降ってきた。
本降りではないがかなり大粒で、いつ激しさを増しても不思議じゃない。

この日35キロ走り、Tukche(トゥクチェ)という集落に到着。
本来の予定だとこの日60キロくらい走っているはずだったのだが、雨が激しくなることを恐れてここで走行終了とすることに。

外観が綺麗なカフェ兼ホテルがあり、そこに投宿すると、経営者がヨーロッパ人だった。
ヨーロッパ人は旅行で来るにはアジアとか好きそうだけど、住み着くのは嫌いそうなイメージがあったから、少々驚き。

そしてそんなヨーロッパ人経営だからか、食事のメニューにダルバートはなし。
スープとパンなんてお洒落なメニュー、いつ以来だろう。

夕食前から雨は激しさを増し、雷を伴うものに。
早めに止まる判断は正解だったと思うとともに、明日の路面状態に不安を覚えつつ床に入るのだった。

(走行ルート:Muktinath→Tukche)

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