アイスレイクへトレッキング〜Ice Lakeまで

Manang~Ice Lake
5/12 (904days)

タイとカンボジアで3日間一緒に走ったインド人自転車旅行者・サルーン。
彼とは連絡先を交換しており、この記事を書いている現在でもちょくちょくメッセージを送ってくれる。

彼は過去にアンナプルナサーキットをトレッキングしたということで、色々とルート情報などをもらっていた。
その中で、「Ice Lake(アイスレイク)はおススメだよ」というアドバイスがあり、それが今滞在しているManangから日帰りで行けるという。

山小屋の人に確認すると、6時間もあればIce LakeとManangを往復できるとのことで、この日に行ってみることに。

ネパールはもう雨季の直前ということもあってか、正午過ぎになると雲が立ち込めて山がほとんど見えなくなる。
そういうことで、この日は5時に起床し、早い時間帯に出発することに。

朝の時間帯は空気が澄んでおり、アンナプルナⅢ峰とガンガプルナ峰(7,454メートル)に朝日が差してオレンジ色に染まっている。

山小屋では前日の夜に注文しておけば、翌朝の早朝すぐに料理を出してくれることが多い。
この日は6時半に出してくれるように頼んでおき、トゥクパというチベット風うどんを食べ、7時にManangを出発。

Manangから2キロほど、Bragaという集落までは昨日通った道を逆走して戻る。
朝が早いため、他のトレッカーは全く見かけない。

Bragaには30分もかからずに到着。
岩山が塔のように連なった所があり、そこにへばりつく様にしてチベット仏教寺院が存在している。
後々さらに多くのチベット仏教寺院を見ることになるのだが、ここBragaのように「なんでこんな所にわざわざ?」という物が多い。

Ice Lakeへの登山道は、ちょうどこの仏教寺院の脇から延びている。
Bragaの標高は3,360メートル。Ice Lakeの標高は4,635メートル。

実に1,300メートルの標高差があるのだが、距離は片道わずか6キロ。
平均勾配20%の激坂であり、かなり厳しい道中になるのは事前から予想していた。

実際、仏教寺院からはつづら折れでしかもかなり斜度の厳しい登山道が伸びており、
ガレ場もかなり多い。

体力には自信がある私でも、キツイ斜度とガレ場で何度も足を滑らせる事で、あっという間に消耗してしまう。
登山道入り口の仏教寺院は、1キロも歩かないうちに遥か下になってしまった。

道中はかなりキツいがそれに比例するように、歩くたびに風景が良くなっていく。
標高6,000メートル以上の山々が作る渓谷を見下ろすとは、何という贅沢な時間と空間だろうか。

ちょうど道程の半分ほどきた標高4,000メートル付近、適当な場所で休憩することに。
前日に買っておいたパンを取り出すため、バックパックを下ろし、山の平らな所に腰を下ろす。

肩の荷が降り、汗で蒸れた背中に風が当たって一気に涼しくなり、とても心地がいい。
体にかかる負担から一気に解放され、目の前に広がるのは絶景。
人間社会の煩わしさとは無縁の世界。

人はそうした煩わしさから解放されると、思考が非常にシンプルになる。
口に入れるパン。美味しいな。
目の前に見える景色。綺麗だな。

楽しかったり、嬉しかったり、美しい物や事柄を、とても素直に受け入れられる。

休憩を終え更に進んでいくと、途中でたくさんテントが立っている広場に出た。
最初は「地元民のイベントか何かかな?」と思ったのだが、すぐにこれは難民のテント村だということに気付いた。

女性達はバケツに水を張って洗濯や皿洗いをし、男たちは賭け事なのかコインを地面に置いた輪っかの中に投げ入れる遊びをしていたりする。

難民キャンプは完全に登山道の道中にあるため、避けようがない。
私を含め何人かのトレッカーがこの難民キャンプを通過したが、人々は観光客に慣れっこなのかあまりこちらには興味がないようで、トラブルもなくてホッとした。

顔から見るにチベット系の顔なので、中国から逃れてきてここに住んでいるのだろうか。

標高は4,200メートルを超えると、流石にかなり息苦しくなってきた。
運動で息が切れるというよりも、酸素が薄くて息苦しいという辛さ。

道も相変わらず斜度がキツく、細かく休憩を挟んで進んでいく。

そして11時前、ようやくIce Lakeに到着。
湖は思ったより小さく、その畔にはストゥーパ(仏塔)が設置されている。
あまり大したことがないな…というのが正直な第一印象で、少々がっかりしたのは事実。

湖の対岸が少し小高い丘になっているのを見つけ、そちらの方が風景が良いんじゃないか?と思い、移動してみることに。
意外と外周は広く、対岸に行ってさらに丘も登ると、結構時間を喰った。

丘から湖を眺めると、先程よりも圧倒的に景色がよくなった。
湖の全体像が眺められ、その背後にはアンナプルナ連峰が連なる。

そうそう、こんな風景が見たかったんだよな…
風は強いけれど、他のトレッカーはほとんどこっちの丘までは来ないため、風景を独り占めできる。
EBCトレッキングとは違い、アンナプルナのトレッキングはこの時期ほとんど人がいないため、大自然の中で一人の世界に浸れるのが素晴らしい。

1時間ほどこの丘で撮影をしたりぼーっと風景を眺め、下山を開始。
4時間かかった往路も、下りは2時間もかからずにManangまで帰ってこられた。

山小屋に戻り自室に入ると、流石に疲労感はどっと来たがそれも心地よい疲れという感じで、非常に良いトレッキングだった。
さぁ、Manang以降はジープロードも無くなって、いよいよ正念場か。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です