遂に姿を現わす〜Manangまで

Lower Pisang~Manang
5/11 (903days)

標高が3,000メートル以上で迎える、初めての朝。
木造の山小屋だとやはりかなり冷え込み、フリースを着込んで併設のレストランで朝食を食べる。

体を温めるために朝食と共に紅茶も注文する。
湯気がほのかに立つ紅茶に、砂糖を二つまみほど摘んで入れる。
溶け出した砂糖がダンスしているかのように、紅茶と混ざり合っていく。

しばらくティースプーンでかき回した後、最初の一口目を啜る。
ほのかに暖かい紅茶が、食道をスーッと通って胃の辺りで溜まる。
胃の辺りを中心にして、紅茶の温もりが徐々にその周辺にも広がり、冷えた体を温める。

山の朝は寒いけれど、山の朝に飲む紅茶は格別に美味い。

7時に山小屋を出発。
山に暮らす人々の朝は早い。
この早い時間でも、外の通りを掃き掃除したり、マニ車を回したりしている人がいる。
所々煙が焚かれているのは、チベット仏教の習慣なのだろうか。


川沿いに少し斜度のある道を進む。
右手に川と岩山が見える風景で、岩山は灰色がかってゴツゴツしており、アメリカのユタ州を思い出す。

しばらく農道のような道が続き、家畜を使って畑を耕やす風景もしばしば見かけるように。
山小屋で出る食事のメニューから想像するに、主にジャガイモやニンジンなどの根菜類を育てているのだろうか。

Humdeという集落手前から道は平坦になり、大分走りやすくなってきた。

そしてHumdeを抜けると視界が開け、前方に巨大な雪山が姿を現した。
地図を見るに、恐らくはアンナプルナⅢ峰(標高7,555メートル)だろう。

アンナプルナとは単独峰ではなく、最高峰のI峰(標高8,091メートル)を筆頭に合計四峰で構成される山群の総称のこと。
このアンナプルナⅢ峰が、私が見ることができた最初のアンナプルナ山群の一つである。

やはりアンナプルナサーキットと名前が着く以上、このコース上での目玉なのであり、見えた瞬間は静かな感動を覚えた。

雪山というよりも巨大な氷の塊の様で、EBCトレッキングで見た山々とはまた違ったオーラを発しているように思える。
EBCトレッキングだとほとんど木々がない環境だったけれど、ここはまだ緑が目立ち、緑と雪山のギャップがそう感じさせるのだろう。

私は山岳地帯の走行は好きで、アメリカ大陸や北欧でも高標高地帯を狙って走ってきた。
理由としてやはり高地というのは風景が良いからなのだが、それとトレードオフする様な形で斜度がキツかったり、ダートロードだったりと過酷な道になるのが普通である。

それが、ここアンナプルナサーキットは未舗装路ではあるもののよく踏み固められている。
区間によってはもちろん斜度がきつい所もあるが、今走っている区間は平坦で、風景は抜群に良い。

こんなに走行条件の良い山岳地帯というのは、世界的に見ても非常に珍しい。


Bragaという集落で昼食をとり、それ以降も平坦な道が続く。
川と道の距離が近くなり、非常に爽やかな気分で進むことができる。

Bragaから走ること2キロ、12時半ごろにManangの集落に到着。
このManangがアンナプルナサーキットを半周に分けた際、右半周で最も大きな集落となる。

同時に、このManangがジープロードの終わりであり、これ以降はトレッキングコースのみとなるため、車は進むことができない。


Manangの標高は3,540メートル。
これ以降まともな集落がないことと、標高4,000メートル目前ということで、ほとんどのトレッカーがここManangで高度順応のために2泊以上していく。

私は3週間ほど前にBECトレッキングをしているため、高度順応は必要ないとは思うが、念のため2泊していくことに。

Manangには何軒かベーカリーがあり、それもクロワッサンやケーキなんかの欧米系のパンが食べられる。
カトマンズ以降、そうした欧米文化を感じさせる食べ物とは無縁だったため、迷うことなく購入。

もちろん価格は山価格なのだが、それでも一個150ルピー(150円)と比較的良心的。
調子に乗って6つくらい買ってしまった。

もちろん夕食は宿のダルバートを食べ、もちろんお代わりもしてお腹いっぱいになる。
そんな満腹状態でも甘みのあるパンはぺろっといけてしまう。
自転車旅行者は、別腹を3つか4つくらいは持っているのだ。

翌日は自転車をおいて、日帰りトレッキングへと向かう予定。

(走行ルート:Lower Pisang→Manang)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です