山深くなるにつれ〜Timangまで

Jagat~Temang
5/9 (901days)

Jagtの標高は1,300メートル。
経験上、この標高だとほとんど下界と変わらずに夜を開かせると思っていたのだが、昨晩は結構冷え込んだ。
寝袋を出すほどでもないため、フリースとジャケットを体に掛けるとちょうどよくなって快眠することができた。

実は私の他にもアンナプルナサーキットを自転車で回る女性サイクリストと出会っており、やはり酔狂な自転車乗りはこのルートに惹かれるらしい。
オーストリア出身の40代の女性で、ソロでこのルートを走破するようだ。

自転車はサスペンション付きのマウンテンバイクで、確かにアンナプルナサーキットを走るにはうってつけである。
というか、私みたいにツーリング専用の自転車で挑むのは、自転車へのダメージや体の疲労度を考えると無謀ではあるのだが。

まだサーキットを走り始めて3日目なのだが、思った以上にブレーキシューが削れるのが速い。
シュー交換に必要な工具をポカラに忘れてきたため、彼女に会えたのはラッキーだった。
工具を借り、シューを交換して走り始める。

川沿いに緩やかに標高をあげる道が続く。
時折、滝が道路に流れ出している箇所がある。

ディスクブレーキは雨や水に強い…とは言われているが、未舗装路だと砂が濡れて泥になり、それがローターに付着すると一気にパッドが削れる。
今朝新しいパッドに替えたばかりなので、いつも以上に神経質になって極力濡れないように気をつけて進んでいく。

未舗装路と、時折現れる滝が作る川越えはあるものの、ほとんどの区間で自転車に乗ることができるのは嬉しい誤算。
それに、トレッカーの通る登山道とジープロードが分離されているのはとても助かる。

狭い登山道で、トレッカーに迷惑を掛けながら進むことになると思っていたので、そういう気遣いをしないで済むのは精神衛生上非常によろしい。

走り始めて10キロ程で、標高は400メートルあげて1,700メートルに達する。

その1,700メートルをピークに、再び川沿いまで下るという理不尽さ。
走り始めて12キロ、昼食休憩を取ることに。

なお、アンナプルナサーキット上では一日最大でも30キロ程度で走行終了する予定でいる。
いくら走りやすいとはいえ、最大標高5,400メートルまで上がる登山道であり、一部区間は斜度がキツかったり拳大の石があって、自転車を降りて押すことも少なくない。

長丁場のコースなので、体力に余裕を持たせた状態で山小屋で休息を取りたい。

昼食以降も川沿いに進んでいく。
コースを奥に行くにつれて更に景色は良くなり、走っていても気分が良い。
改めて自分は山岳地帯の走行が好きなんだなぁ…と、大汗を掻きながらも充実感を覚える。

休憩場所からしばらく走り、チェックポストのあるDharapaniに到着。
標高は1,860メートル。

チェックポストで天気予報を教えてくれるのだが、五日後あたりから天気が崩れる見込みらしい。
五日後といえばちょうどコース上最高標高の峠を超える時期と重なっている。
その時に天気が悪いのは、気分的にも安全面でも非常によろしくない。

山の天気予報なので当てにはならないのだろうが、こればっかりは祈るしかない。

チェックポスト以降は、チベット仏教の色が濃くなってきた。
ストゥーパと呼ばれる仏塔が並んだり、

マニ車という、チベット仏教独特の仏具も見られるようになってきた。
マニ車は時計回りに回していくと、経典を一度読んだのと同じ効果を得られるのだそう。

チベット仏教文化が濃くなると同時に、山も深くなってきた。
道は明らかに悪くなり、滝が道路に侵食する機会ももっと多くなってきた。

水の勢いは強く、流れる幅も広いため、自転車を降りて担いで越えることになる。
ゴアテックス素材のハイカットの登山靴を履いているのだが、水は平気で靴の中に侵入してくる。
お陰で靴の中はかなり湿った状態だ。

そしてこの日最後の数キロは急勾配の坂と、石畳、ガタガタの橋と悪路詰め合わせの大サービス。
特に石畳では自転車に乗ってられないため押さざるを得ず、今日一日で疲れ切った体にはとてもキツイ。

後半の悪路のお陰で、予定よりも随分と遅れた15時半にTImangの集落に到着。

標高は2,270メートル、山小屋も合わせて僅かに20棟程度の規模の集落なのだが、まだホットシャワーもwi-fiもあることに驚きを覚える。

人の数も少なくて静かで、景色も最高に良い。
これなら、下界で暮らすよりもよっぽどストレスのない素敵な暮らしができるんじゃなかろうか。

実際には厳しい暮らしなのだろうけど、そんな事を思う程に旅行者のための環境が整い、かつ奥に行くにつれて更に美しくなるアンナプルナサーキット。
ヨーロピアンには人気なのだろうけど、日本人自転車旅行者にも、もっと人気になっていいコースだと思う。

飯も美味いし。

(走行ルート:Jagat→Timang)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です