散歩のすヽめ〜Dingbocheにて

Dingboche
4/18 (880days)
高度順応のために一泊しているDingboche。
なお、高度順応とはその場でただ滞在しているだけでは十分ではない。
宿泊地よりも少し標高の高い場所へ行き、また宿泊地へ戻る…という事をして初めて効果をなすのである。
そういう訳で、この日はDingbocheのすぐ近くにあり、かつ標高が数百メートル程高い展望スポットまで向かうことに。
早朝5時半、ベッドを出てエヴァンとともに展望スポットへと向かう。
なぜ休息日にこんな早起きを…というと、Dingbocheの西にTabcheという標高6,495メートルの山があり、ちょうど展望台から朝焼けに染まるTabcheが見られるのでは…という思惑からである。
もう既に日の出時刻にはなっているようなのだが、山に囲まれているDingbocheには未だ日が当たらず、雪化粧に染まっている。
日の出前の山の世界は青と白色のみで構成されているようで、静寂と冷たい空気に覆われている。
世界は音を失い、私とエヴァンが雪を踏む音だけがかろうじて存在しているようだ。
標高の高い山には徐々に日が当たり始め、静寂と雪を融解するようにオレンジ色が侵食してきている。
思惑通り、Tabcheにも日が当たり始めた。
思ったよりかはオレンジ色に染まらないな。
展望スポットにて、Dingbocheに日が射し込むその瞬間を待つ。
そして遂に山の隙間を縫って太陽が現れ、Dingbocheに日が射し込んできた!
光が差し込み徐々に明るさを帯びていく様は、町が眠りから覚めて一日が始まるのを暗示しているかのようだ。
タルチョと呼ばれるチベット仏教の経文を写した旗が、展望スポットにたくさん繋がれている。
日が差し込むと共に、風も強くなり、タルチョがバタバタと忙しくなびき始めた。
青、白、赤、緑とカラフルなタルチョが、日が当たるとそれぞれの色がはっきりと主張し出すようになって、「朝だ!これから今日も張り切ってなびくぞ〜!」と言っているかのようだ。
しばらく展望スポットにて写真撮影なんかをした後、エヴァンと一緒に宿へと戻る。
戻る途中、荷物を持ったポーターとすれ違った。
まだ町のどの店も開いていないであろうこの時間に、彼等はすでに働き始めている。
ポーターの朝は、誰よりも早い。
朝食を終えて少し休憩してから、今度は一人でもう一度展望スポットへと向かってみることに。
地面に積もった雪はほとんど溶けてきていて、雪化粧していたDingbocheが、今度は日焼けしているかのよう。
オシャレさんですね。
展望台正面からは、アマダブラム峰がDingbocheの背後に威厳たっぷりに聳え立っている。
朝に登った展望スポットよりも、もう少し高いところにある展望台まで来てみた。
標高は4,700メートル程。
この展望台からは、Dingbocheの奥から流れ込んでくる氷河が見ることができる。
月並みな感想しか出てこないけれど、素晴らしい景色。
しばらく写真撮影を楽しんだ後、再び宿へ。
宿に戻るとやることがなく、昨日と同じで再び小説を読みふける。
すると体がどんどん冷えてきて、妙に熱っぽくなってきた。
展望スポットから降りてきてすぐにアンダーシャツを変えなかったことと、こんなに快晴なのに何故か今日は気温が低いため、体が冷えたのだろう。
リビングで寝袋に包まり、ちょっとお高いジンジャーハニーレモンティーを注文し、体を温める。
体を冷やすことは、高山病に罹患するリスクが高まるのだ。
幸い、ティーを飲んでからは随分と温まって、体調も戻ってきた。
明日からはまた歩き始める。
天候が、この日のように快晴でありますように。