EBCトレッキング3日目〜Pangbocheまで

Namche Bazar~Pangboche
4/16 (878days)

EBCトレッキング3日目。
いよいよ本格的にヒマヤラ山脈の深部へと歩き出すとあって、朝からしっかりと朝食を食べることに。

こちらはチョウミンと呼ばれる、チベットの食べ物。
要は焼きそばであり、モモと合わせて考えると中国の食文化に大きく影響を受けているのがわかる。

この2日間で分かったのだが、この周辺の山域は正午過ぎになると一気に雲が立ち込め、ヒマラヤ山脈をすっぽりと覆い隠してしまう。
トレッキングを楽しむなら、午前中の早い時間に開始し、正午過ぎには山小屋にチェックインしてしまうのがいい。

ということで、この日は6時半にトレッキングを開始。
計画段階では一人でトレッキングをするつもりだったのだが、自然な流れでエヴァンとそのまま行動を共にすることに。
別にどちらが言い出した訳でもないのだけれど、これも腐れ縁というやつか。

トレッキングルートの途中には、時折ストゥーパと呼ばれる仏塔が建っている。
仏塔一つが世界を表現した物で、ストゥーパに描かれる眼は仏陀の物で、世界を見通しているのだそうだ。

雲がほとんどない快晴の中、山肌に沿ったトレッキングルートを進んでいく。
しばらく進んでまた一つ曲がり角を曲がった所、視界が広がり、ヒマラヤ山脈が視界に飛び込んできた。

巨大な黒い山々に白い雪が積もってグラデーションをなし、それが鋭く切り立った山肌の質感を際立たせている。
その美しさには、思わず感嘆の声が漏れる。

トレッキングルートには、私たちの様なトレッカーだけでなく、ポーターと呼ばれる荷物を運搬する仕事をする人達も行き交う。
彼等は集落間の物資運搬を担ったり、体力に自信がないトレッカー達が彼等を雇い、荷物を持たせたりしている。
彼等の荷物の持ち方は特殊で、肩に掛ける紐の他に、額にも紐を掛ける三点固定のスタイル。

額に紐を掛けて前方に体重を預け、腰を曲げてほとんど下を向いて進んでいる。
背負っている荷物の量は明らかに過積載で、腰を曲げているその姿は見ていて気の毒にもなってくる。
履いている靴はスニーカーがほとんどで、時にはサンダルでとんでもない量の荷物を運んでいるポーターもいる。

私たちトレッカーは遊びで山を歩くけれど、彼等は金を得て生きるために、山を歩く。
彼等ポーターの存在がなければ、私たちは山小屋で美味しい食事にあり付けないし、水を得ることもできない。
彼等ポーターは、このEBCトレッキングにおいて、最も尊敬されるべき存在なのだ。

ナムチェバザールから意外にもほとんどくだり坂で、それもかなりの勾配でどんどんと標高を下げていく。

Phungi Thangaという谷底の集落まで下りきり、10時過ぎと早いタイミングながらここで昼休憩を取っていくことに。
というのも、ここからは逆に急勾配の上り坂が始まるのであり、道中には休憩を取れるような集落はないのだ。

私はレストランで昼食休憩を取ったのだが、エヴァンはここでは休憩せず、少し先にあるチェックポイントで小休止するとのことで、一旦別行動に。
彼は朝食も取っておらず、「大量にカロリーを消費するトレッキングなのに大丈夫か?
と心配したのだが、そこら辺は個人の考えがあるからね。

昼食を終え、チェックポイントへ向かうとエヴァンが小休止を取り、プロテインバーを齧っていた。
これからきつい登りが始まるというのに、それで大丈夫なのか…?

そしてチェックポイント以降、すぐに登りが始まった。
聞いていた通り、かなりの急勾配だ。

超人的な体力のポーター達も、流石にこの道には疲労困憊と見える。

しばらくの間かなりキツい道中が続き、私もエヴァンも息を切らして進んでいく。
特に、プロテインバーしか食べておらず靴もスニーカーのエヴァンはかなりキツそうだ。
「何で十分に食べないの?」と聞いてみると、「ダイエットのため」と言う。
これには私も流石に呆れ、その後何度もエヴァンに「もっと食え!」と苦言を呈することになる。

山で行動する以上、自分の体力を十分に維持することは重要かつ最低限のマネジメントだ。
金を節約したりダイエットすることは、日常生活では非常に大切なことだ。
ただ、山で日常生活の常識は当てはまらない。
十分に食べず、結果体調を壊したり最悪の場合動けなくなることは、トレッカーにとって最低の怠慢だ。

EBCベースキャンプは高齢者だろうが普段だらけた肥満体型者だろうが、高度順応さえできれば誰もが簡単にできる、山の遊びだ。
ただ、余りにも山を舐めたトレッカーが多い。
スニーカーでトレッキングし、雨具もヘッドライトも持たず、食事も十分に取らない。
自分たちが標高5,000メートル以上の場所へ行くのだという自覚が、余りにも無さすぎる。
これは、この日以降も他のトレッカーを見て感じたことだ。

さて話をトレッキング道中に戻す。
キツい登りを終え、Tambocheという集落に12時半到着。
Tambocheの入り口には門があり、内部にはマニ車が設置されている。

マニ車とはチベット仏教の仏具で、時計回りに回すと経典を一度読んだのと同じ効果を得られるのだそう。

TambocheにはEBCトレッキングルート上で最大の仏教寺がある。
この日の目的地はまだ先にあるため、仏教寺の見学はトレッキングを終えて帰りの道中にすることにし、小休止だけ取って先へと進む。

Tambocheからはまた少し標高を下げていく。
自転車でもそうだけれど、折角頑張って獲得した標高を、また下っていくというのは非常に損をした気分になる。

不思議なことに、Tambocheから先の数キロの区間だけ樹木が茂り、林道の中を進んでいく。

そして谷底に架かる吊橋を渡ってから、再び登りが始まる。
一日の最後に登り坂が待っているのは、精神的にも肉体的にも辛いものがある。

登りが始まった吊り橋の時点で標高は3,800メートル。
この日目指すPangbocheの標高は3,930メートル。

登ってきた道をふと振り返ると、今日越えてきた山が連なり、その背後には巨大な氷の塊の様な雪山が見える。

15時、Pangbocheに到着。


ガスも電気も物凄く貴重になる標高になってきたようで、どの家も太陽光を集めて水を温める工夫をしている。

Pangbocheの宿は一人100ルピーと安く、やはりナムチェバザールが税金の関係で以上に高かったようだ。

晩ご飯は当然、一番量が食べられるダルバート。
ここのダルバートはEBCトレッキングでも屈指の美味さで、カレーが日本の味に近く、そしてお代わりがほぼ無制限にできるという至れり尽くせりな物だった。

ナムチェバザールでは晩ご飯を抜いたエヴァンも、私の説教に嫌気が差したのか、この日はボイルドポテトを注文。

出てきたのがとんでもない量のただの茹でたジャガイモで、これには思わず笑ってしまった。
量が余りにも多く、エヴァンが食べ切れずにいた分を、私が横からつまみ食いさせてもらった。

山ではどれだけ食っても腹が減る。
山でダイエットなど、土台不可能なのだ。

(トレッキングルート:Namche Bazar→Pangboche)

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