100%手搾り〜Phnom Penhまで

Subey Rien~Phnom Penh
3/22~3/23 (853~854days)

前日にATMで300米ドル程キャッシングしていたのだが、心配になってこの日の朝に現地通貨であるカンボジアリエルも引き下ろしていくことに。

というのも、300ドルが100ドル紙幣三枚で出てきたのであり、こんな高額紙幣はカンボジアでは絶対に受け取ってくれないだろう…という判断の下。
まぁ、米ドルはいくら持っていても困らない、全世界で通用する最強の紙幣のため、財布で眠らせていても全然問題はない。

早速引き下ろしたカンボジアリエルで、朝食をば。
屋台にて身振り手振りで朝食を食べたいと伝え、出てきたのが米と肉、卵焼き。
これで3,000リエル(約80円)であり、量は少ないが肉入りでこの値段はべらぼうに安い。

さて、この日は頑張って走ればカンボジアの首都・プノンペンに到着予定。

道中はのどかそのもので、牛がそこら中に歩いている。
牛を模したモニュメントもかなり多く見かけるのであり、カンボジアでは牛が信仰の対象となっているのであろうか?
今日の朝食べたのは多分牛肉だったと思うのだが。

カンボジアを走っていて感じるのが、とにかく子どもが多く、そして元気だということ。
大きな声で手を振り、挨拶をしてくれる。

これは非常に良いことなのだが、カンボジアの過去の歴史を知ると、この一見平和な光景にも影が差す。

カンボジアでは過去、独裁者ポルポトが主導する政治政党・クメールルージュによる大虐殺で、全国民の三分の一となる200万人が殺された歴史がある。
殺害されたのは反乱分子となり得るインテリ層の医者や弁護士に始まり、果ては「眼鏡を掛けていればインテリ」という理由で、大人の大部分が殺害されていった。
残されたのは、反乱分子たり得ない幼い子どもばかりとなり、その子ども達も銃を持たされ少年兵とされ、大人達を処刑していった…という。

その大虐殺はわずか40年前の出来事であり、その影響は今日におけるカンボジアの発展の遅れに大きく影響しているという。

日本の経済省が公表している医療国際カントリーレポートのカンボジア編資料によると、2017年度におけるカンボジアの65歳以上の人口率はわずか4.4%、15歳未満は31.3%となっている。
対する我が国日本は、65歳以上の人口率は27.7%、15歳未満はわずか12.3%である。(※総務省発表「統計から見た我が国の高齢者」より)

この資料を見ても分かる通り、如何にポルポト政権下で多くの大人達が殺害されたか…というのが窺い知れるのであり、その異常さに恐怖すら覚える。

そんな暗い過去は、目に見える光景からは想像できない程平和そのものではあるのだが…

しばらく走り、昼食休憩を取ることに。
カンボジアもベトナムと同様、出来合いのおかずをいくつか指定するスタイルが一般的のようだ。
おかずを入れた鍋がいくつも並べられ、おかずの種類は非常に豊富だ。

ただ面白いことに、その鍋すべてに蓋がされ、中身は何が入っているか分からない。
その蓋を一つ一つ開けておかずを確認するのは、なんだか日本のお祭りにあるあたり景品入りのびっくり箱を開けているようで、ワクワクしてくる。

昼食を取ってしばらくすると、カンボジアには似つかわしくない大層立派な橋が見えてきた。
どこかの国の支援で建てられたんだろうな〜と思っていたら、我が国日本ではないですか。

過去にカンボジアを走った自転車旅行者のブログを見ると、数年前はこの橋はまだできておらず渡し船で川を渡っていた。
地元民の生活や物流の手助けに大いになっていると考えると、「日本やるじゃん!」と、自国に対して誇らしい気持ちになってくる。



ただ、橋の入り口と出口に速度落としの段差を付けているのだけは、自転車旅行者として文句を言いたいけどねっ!

カンボジアも仏教の国であり、非常に立派な寺院がそこかしこに建立されている。

カンボジアは国王を元首とした立憲君主制だそうで、国王の写真も設置されていることが多い。
こういう所はタイと似通っているように思う。

ちなみに小説で得た知識ではあるのだが、タイでは僧侶は最も尊敬されるべき存在であり、国王ですら僧侶には頭を垂れなければならなかったそうである。
(※遠藤周作著「王国への道ー山田長政」参照)

しかしベトナムもそうだったが、カンボジアも非常に暑い!
日中に走り続けると熱中症になりかねない程だ。

幸いカンボジアでもサトウキビジュースは一般的なようで、よく屋台を目にする。
ということで、適当な屋台でジュースを注文することに。

しかし、なぜか首を横に振って「ノー」という。
カンボジアの公用語、クメール語は分からないので理由はわからないが、サトウキビを絞る機械が壊れているのかな?と思い、次に見つけた屋台で注文することに。
しかし、なぜかこちらも「ノー」という。
二度続けて機械が壊れているとは!そんなこともあるのだなぁ…

三度目の正直で、大分走った先に見つけた屋台で注文。
屋台主のおばあさんは何故か戸惑った風だったが、首を縦に振ってくれた。

おばあさんは息子さんと思われる男性に声を掛けると、二人してサトウキビを絞る機械を、何と手で回し始めたではないか。

ここで私はようやく気付いた。
「そうか、機械が壊れていたのではなく、この一帯が停電で機械が回せなかったんだ…」と。

本来電動で動くはずの機械は、手動で動かすにはとても重いようで、おばあさんと息子さんの二人掛かりでも非常に大変そうな作業に見える。
椅子に腰掛けて待っている間、とても申し訳ない気持ちになった。

そして出来上がったサトウキビジュースは氷がたっぷり入っていて、熱く火照った体がスーッと一気に涼しくさせてくれた。

ジュースを飲み干し、残った氷を保冷瓶に入れていると、おばあさんが「もっと氷いるかい?」と、保冷瓶いっぱいに氷を入れてくれた。

ジュースと氷の代金を支払おうとすると、「いやいや、受け取れないよ」という。
何度渡そうとしても、頑として受け取ってくれない。
じゃあせめて写真を一緒に撮りましょう、と言うと、「それも恥ずかしいからいいよ」という。

カンボジア人の優しさに触れた、とてもいい時間だった。

そんなおばあさんの優しさに元気をもらい、この日123キロを走りきりプノンペンに到着。
流石に首都ということで、道中ほとんど見掛けなかった車が所狭しと道路を埋め尽くし、大渋滞を巻き起こしている。
カンボジア中の車がここに集まっているのでは?と思うほど。

無事に宿に投宿。
プノンペンでは観光のため、2泊する予定だ。

(走行ルート:Subey Rien→Phnom Penh)

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