備えなければ憂いあり〜Subey Rienまで

Ho Chi Min~Subey Rien
3/21 (852days)

3泊して居心地の良かったうさぎやゲストハウスを出発し、この日は国境を越えてカンボジアへと入国予定。

出発前に写真を撮ってもらったのだが、自分でも分かるくらい随分と痩せたように思う。
再出発以降、ジュースとお菓子を摂取することを止めたからだろうか。
それとも、東南アジアの食事がヘルシーだからだろうか。
後日体重を測ったら56キロと、出発前より6キロも減っていたから驚いた。

さて、まずは大都市ホーチミンから脱出しなければならない。
原付の波に揉みくちゃにされながら、何とか隙間を縫って進んでいく。

とりあえずは中心さえ抜けてしまえば、交通量は落ち着くだろう!
そう思っていたのだが、その予想に反して一向に交通量は減らない。

皆んなそんなにしてカンボジアにいく予定があるのかね?

緑豊かで、穏やかな風景が続く。
前日に戦争博物館で見た、枯葉剤ですべての植物が枯れ果て、色を失った大地に立ち尽くすベトナム人の写真を見ていた分、そのギャップを感じざるを得ない。

この今私が見ている風景も、つい40年程前は地獄の様な風景が広がっていたのだろうか。
今のベトナムの平和さ、発展具合を見るに、戦争以降、ベトナム人が如何に働きに働いたか、僅かながらでも理解できる。

国境を越える前に、昼食とサトウキビジュース休憩を取り、綺麗さっぱりベトナム通貨を使い切る。
これでコム(ベトナムの定食)もサトウキビジュースも終わりだと思うと、寂しさを覚える。
つくづくベトナム走行は、食を楽しみにしていたのだと思う。

本当はチェーを食べたかったんだけど、残念ながら見つけられず!

ホーチミンから走ること70キロ、国境に到着。
ベトナム側のイミグレーションに入ると、早速警備員風の服装で首からIDプレートを掛けた男が「パスポートを見せろ」と声を掛けてきた。

何の疑いもなく渡すと、「お前はEビザの控えを持っていないな、5ドルいるぞ」と、その男。
は?意味がわからん。何でだ?

しばらく立ち尽くしていると、その後私の後ろからやってきた外国人旅行者もその男に声を掛けられ、何事か話している。
その旅行者は彼のIDプレートをしげしげと眺め、男を無視して先へと進んでいった。

私もその男から離れ、その旅行者に「彼はここの職員なの?」と聞くと、「彼は国境管理の正規職員じゃないよ。金を巻き上げようとしている一般人」とのこと。

なんて事だ!
今まで3年近く旅行をしてきて、中米でも同じ様に国境付近で金を巻き上げようとする詐欺師に出会ってきたじゃないか!
それなのに、何の疑いもなくパスポートをほいほい渡してしまうとは。
私も随分と平和ボケしていたようだ。

これからはもう詐欺師には騙されんぞ!
ガラス張りのボックスにいる、本物の国境管理官にしかパスポートは渡さん!

そう気を引き締めて、出国手続きの列に加わる私。
そして、私の番が来て、パスポートを国境官に差し出す。
堂々とし、如何にも慣れている歴戦の長期旅行者のごとく振る舞う私。

「…Eビザの控えは?」

えっ。

「…Eビザの控えは?」ともう一度国境官。
「いや、持ってませんけど…ベトナム入国の時に回収されたよ」と私。
国境官は黙ってパスポートを私に返し、しっしっと手で払う素ぶりをした。

「いやいやいや!出国拒否をこんな所でされても困るよ!
…そうか、EビザのデータならiPadに保存してるから、それを今持ってくるわ!」
そう管理官に言い、急いで荷物を取り付けた自転車へ戻ろうとする私。

しかし戻ろうとするには、来た時に通過したX線チェックを逆走しなければならないことに気付く私。
当然ながらそこには職員が立ち塞がり、目を光らせている。

どうすりゃいいんじゃ!と地団駄を踏む私に、スススッと近寄ってくる詐欺師。
「どうしたんだ?何、X線を逆走したい?なら5ドルだ」
あぁぁっ、鬱陶しいんじゃ!

詐欺師を殺さんばかりに睨みつけ、待つ事数分、X線の前に立つ職員が居なくなった隙を突いて逆走する私。
自転車に戻り、iPadを持ち、再び出国カウンターへと向かう。

Eビザのデータを画面に表示させ、「ほら、データならあるんだよ。これで何とか処理してくれよ!」と半ば拝む様にして国境官に頼み込む。

国境官は黙ってiPadを受け取り、そして出国スタンプを押してくれた。
あぁ、助かった…しかしEビザのコピーが二枚必要だなんて知らなかった…

どっと疲れたまま、お次はカンボジア側の国境へ。
カンボジアもインターネット申請でのEビザを取得していたのだが、控えは一枚しか持っていない私。
「これ、もしかしたらカンボジアを出国する時、同じ様に面倒くさいことになるんじゃ…」と嫌な予感はしたが、取り敢えずは無事にカンボジアの入国処理も終了。
(※カンボジア出国の際も、控えがないという事で面倒臭いことになったので、皆さんEビザの控えは二枚必ず用意しましょう)

こんなに疲れた国境越えは初めてだ…

そしてカンボジアを走り始めて、ベトナムとの余りの違いに軽い衝撃を覚えた。
余りにも緑が少なく、捲き上る砂埃で空気が淀み切っている。
砂は道路にまで浸出しており、道の半分以上を埋めてしまう箇所まである。

もちろんカンボジアが発展途上国であるのは重々承知していたが、ここまでの状況とは思ってもいなかった。

その後は逆風の中、黙々と進んでいく。
ATMを見付けられず、全くの無一文である現状、ATMのありそうな町まで走り切るしかない。

そんな状況下、陽は一刻一刻と地平線へ傾いていく。

陽も落ち切った後、なんとかSubey Rienという大きめの街に到着。
ATMも無事に見つけることができ、適当なゲストハウスに5ドルで投宿。

ちなみにカンボジアは面白い国で、米ドルとカンボジア通貨の両方が使用されている。
カンボジア通貨であるリエルは他国では紙屑同然となってしまい両替ができないため、米ドルをキャッシングしておいた。

腹が減り、安そうな屋台へと行ったのだが、カンボジアの言語は全く話せない。
「1ドルで食えるものを!」と身振り手振りで伝えると、お粥と魚一枚、漬物を出してくれた。

しかしこれでは腹が減り切った自転車旅行者の胃袋は満たせない…
カンボジア、なかなか苦労しそうな予感である。

(走行ルート:Ho Chi Min→Subey Rien)

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