チェー屋は何処に〜Dau Giayまで

Bao Loc~Dau Giay
3/17 (848days)

長期に渡って旅行をしていると、当然ながらいろんな国の文化を見ることになる。
それは食文化であったり、宗教文化であったり、その国独特の建物であったり、様々である。
そして、その文化を垣間見る一番手取り早いのは、その国の有名観光地へと行くことだ。

観光地はその国を代表する景色や建物等を見られ、また旅行者を楽しませるために整備もされている。
お手軽に、その国の歴史や文化を感じ取ることができる。

しかし観光地はいかんせん旅行者と旅行者を相手取ったビジネスが集中していて、その国の人々の生活臭は霧散してしまう。
確かにそこに現地の人はいて仕事はしているけど、生活している様には全く見えないのだ。


その点、自転車旅行は観光地化されていない場所も通過する(通過せざるを得ない)ことと、その移動スピードの遅さから、些細な事にも目敏くなる。
「この地域の人ではこんな服が流行ってるんだな」とか、そういうローカルな場所が醸し出す生活臭も、過敏に嗅ぎとれるのだ。

ベトナムのローカルな地域を走っていて、私がよく見かけるのが「移動式・小鳥専門ペットショップ」である。
大量に小鳥が入ったカゴを取り付けた原付が、小鳥を路上販売しているのだ。

最初は「ヒヨコを仕入れた帰りなのかな?」と思ったのだが、カゴの中の鳥はインコやメジロっぽい鳥であり、食用ではない。
そしてその最初の一回だけでなく、その後複数の集落で同じような原付を何度も見かけた。

ある時、客と思われるベトナム人が、カゴを取り付けた原付の主に金を渡しているのを見て、「あぁ、これはペットとして小鳥を売っているんだ」と合点がいったのだった。

なんで小鳥をわざわざ原付で移動して売ってるのかは分らないが、ここまで移動式小鳥屋を見かけるということは、「ベトナムで小鳥をペットにするのが流行っている」と推測することができる。
こういう、些細な生活臭を嗅ぎとってあれこれ考えてみるのも、自転車旅行の面白さである。

(この写真はアヒルばっかりだな…)

Bao Locから出発して10キロほどすると、ダウンヒルが始まる。
斜度10%のかなり急勾配な下りで、一気に標高を下げていく。

本筋から離れてメカニックな話になるが、私は機械式ディスクブレーキを採用している。
機械式ディスクブレーキでは、ここまで斜度がキツイとブレーキがあまり掛からない。
ディスクブレーキは制動力がVブレーキよりも高い…と言われるが、それは飽くまでも空身の自転車の場合に限ると思う。

フルパッキングの自転車だとあまりにも重すぎて、下りでスピードに乗ると機械式ディスクブレーキでは止めきれないのだ。
正確には、ブレーキパッドが新しければ下り坂でも問題なくブレーキはかかるのだが、ちょっとでもパッドが消耗してすり減っていると、性能はガクッと下がる。
自転車旅行では、頻繁にブレーキパッドを変えないと大事故に繋がりかねない…というのが、実際使ってみての所感。

Vブレーキはリム(車輪の外枠)を挟み込んで止めるシステムなので、フルパッキングでも力技で止めることができる。少しレーキシューが減っていても、制動力は大きく下がることはない。
フルパッキングなら、Vブレーキの方がガツっと止めることができる…というのが両方使ってみての所感。
その代わり、ブレーキを掛ける毎にリムを削るため、最終的にはリムが割れてしまうのが最大の欠点。

あまり日本人の自転車旅行者でディスクブレーキを採用している人がいないため、今後の参考になれば。
余りにもニッチな情報すぎるか。
ここら辺の話はまたちゃんと記事にしてまとめておきたい。

長い下りは10キロほど続き、標高は200メートル台まで降ってきた。
路上には再びジャックフルーツの露店が目立つように。

ジャックフルーツは一度食べてみたいのだが、余りにも大きすぎて一人では絶対買えないのが残念。

そんな独り身の私は今日もシントー休憩。
この日はドラゴンフルーツ味で、さっぱりした味。
最初から氷をシェイクした、スムージーみたいなシントーもあるのね。

ホーチミンシティに近付いて、キリスト教会の数が増えてきた。
中国では、「共産主義の性質上、キリスト教会はあまり政権に歓迎されていない」と中国人に聞いたが、ベトナムではどうなのだろう。

60キロ走って昼休憩。
いつも通り定食屋に行き、コムを注文。
コムとはベトナム語で食事を意味し、これを定食屋で言うと「定食」という意味になる。

コムが運ばれてくると、何とびっくり、酢豚ではないか!
本場中国では、あれだけ食べたくて1時間歩き回っても見つからなかった酢豚が、まさかベトナムで食べられるとは。
餡掛けもしっかりトロミが付いており、かなり美味しい。

値段はコムにしては6万と高かったが、品数も多くてどれも美味しく、今までベトナムで食べたコムの中で一番美味しい店だった。

昼食後はホーチミンシティ目前になり、俄然交通量が多くなった国道をイライラしながら進んでいく。

それにしても暑い!殺人的な暑さだ!
強烈な直射日光と車の多さが、この殺人的な気温を作り出しているように思う。

あまりの暑さに意識が朦朧としてきて、うるさいはずの車の音も、どこか遠くで鳴っているような気になってくる。
いかん、これは熱中症の一歩手前じゃないか?

腕時計の気温計を作動させ、数字をみてびっくり。
「39℃!?これはヤバイぞ!」
腕時計は腕に密着させているため、気温というより体温に近い数字が出る。
ということは、体温が39℃近いのであり、限界ギリギリのヤバさだ。

「いかん、可及的速やかにチェー屋を発見して体を冷まさないと!」

しかし残酷かな、こんな時に限ってチェー屋は一向に現れない。
必死になって「CHE(チェー)」の文字を探すのだが…

惜しい、これはCHO(チョー)!

結局チェー屋は見つからず、サトウキビジュース屋を発見して緊急避難。
いやぁ、助かった…正直かなり危険な状態だったと思う。

ジュースを飲んでのんびりしている内に、腕時計の気温計も37℃まで下がってくれた。

休憩からスパートを掛け、16時半にDau Giayという集落に到着。
暑い中120キロとかなり頑張ったおかげで、翌日は早い時間帯にホーチミンシティに到着できそうだ。

(走行ルート:Bao Loc→Dau Giay)

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