コピルアクを飲みに行こう〜ダラット

Da Lat
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ベトナムきっての高原リゾート・Da Lat(ダラット )。
1900年初頭にフランスによって開発されたこの地は、美しい湖や林の風景に西洋風の建物の外観が合わさり、町の中心はなんとなくヨーロッパに似た雰囲気がある。

そんなちょっとベトナム離れした雰囲気のダラットにあって、特産品となっているのがコーヒー。
コーヒー豆は、コーヒーノキという樹からなる実の種子が元になっている。
コーヒーノキは年間平均気温が約20℃の地域に育ち、主に赤道を挟んで南北緯25度の地域に集中している。
地球をグルっと一周するそのラインは、通称コーヒーベルトと呼ばれている。

ダラットもそのコーヒーベルト上に位置している。
そして、コーヒー豆は高地で育った物の方が質が良いとされている。
理由は、昼夜の寒暖差がある高地では、コーヒーの種子がより引き締まり、味が凝縮されるため、という説がある。
美味しいコーヒー豆が収穫される最高の条件が、ダラットにはあるのだ。

そんな最高の条件で育つダラットコーヒーを更に有名にしているのが、コピルアクと呼ばれる、超高級コーヒー豆である。

コピルアクとは、ジャコウネコという猫にコーヒーの実を食べさせて、糞として出てきた未消化の豆を焙煎した、珍味のコーヒー豆。
その特殊な生産方法から希少性があり、日本ではコピルアクのコーヒが一杯2,000円程と、驚くような高価な値が付く。

ダラットは、そのコピルアクの一大産地なのである。
そして一大産地が故に、ダラットのコーヒー農園では新鮮なコピルアクを、安く飲むことができるのである。

コーヒーが好きでミルまで持ち運んでいる私としては、死ぬまでに一度は本物のコピルアクを飲んでみたい。
その一心で、フルパッキングの糞重たい自転車を漕いで、別に行く必要のない山岳地帯を超えてダラット までやってきたのだ。

そんな訳で、宿に荷物を置いて、ダラットから20キロ郊外にあるコーヒー農園に足を伸ばした。

さすが東南アジア有数のプランテーションだけあって、農園の展望台から見えるのは一面見渡す限りのコーヒー畑。
南米でもここまでの規模の物は見なかった。

この農園では、展望台を降りてコーヒー畑の中も見学することができる。

ここで初めて知ったのだが、コーヒーノキには白い花が付く。
出来上がりが黒い液体であるコーヒーを思うと、その花が対極の白というのは興味深い。

こちらがコーヒーノキの実。
この実から種子のみが取り出され、コーヒーの豆となる。

畑を散歩した後は、展望台の軒下にある飼育ケージへ。
ここにジャコウネコが何匹も飼育されている。

昼間は暑いためか、どのジャコウネコも昼寝をしている。
猫というより、どちらかというと顔はタヌキかイタチに近い。

こちらがジャコウネコの糞から抽出された、未消化のコーヒー豆。
洗浄され、乾燥した後に焙煎される。
ジャコウネコによる消化過程において、消化酵素や腸内細菌による発酵で独特の香味が豆に加わるのだそう。

それにしても、最初にこの豆を飲んでみた人は勇気があるよ。

さて、見学も終わったことだし、いよいよコピルアクを賞味することに。
値段は一杯40,000ドン。日本円で400円弱。
ベトナム物価だと高いが、日本のスターバックスのレギュラーコーヒーとほぼ同じ値段でコピルアクが飲めると考えると、べらぼうに安い。

ベトナムコーヒーの抽出方法は独特で、アルミフィルターでお湯を注ぎ足すスタイル。
抽出に時間が掛かるので、飲むまでに時間が掛かるのが焦れったい。

さて、お味はというと…。
「何だこれは!?」という、衝撃を受ける程の味ではない…というのが正直な感想。
コーヒー豆自体の味がかなり濃く、それでいて雑味を感じないので、非常に美味しいとは思う。

まぁ、コピルアクはあくまでも珍味なのであって、コピルアク=美味い!ではない訳ですな。

味そのものよりも、このロケーション込みで飲むのが特別な一杯なんだと思う。
オープンスペースで景色の良い中で飲むコーヒーは、素晴らしく美味い。

じっくりコピルアクを堪能した後、焙煎豆を買って帰ることに。
農園に来る前は「絶対コピルアクの豆を買う!」とか思っていたけど、あのカップ一杯で十分だわ。

で、私が買ったのはモカ。
ベトナムコーヒーはアラビカ種がメインであり、「アフリカ原産のモカをここで買うってどうなのよ?」と、自分でも思ったのだが、結果的にこれが大正解。

後日挽いて飲んでみたのだが、素人の私でも分かるコクの深さ。
「これから毎朝このコーヒーが飲めるなんて、なんて幸せなんだ!」と、コピルアクよりも感動する程美味かった。

これからの走行がとても楽しみだ。

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