ふたたび山へ〜Thach Traiまで

Song Cau~Thach Trai
3/12~3/13 (843~844days)
3/12
ベトナム南部と北部では文化が違う、というのはよく言われる事実。
では一旅行者がその違いに気づくかというと、中々に難しい。
ベトナム語が達者で現地人とよく喋る人か、もしくはよほど目ざとい人でないと、違いには気づかないのではないか。
かく言う私も、正直言って今のところほとんど文化的な違いは感じていない。
建物も、宗教観も、方言の様なものも、どれも北部と変わりない様に思う。
ただ、私のような不勉強な人間でも、食文化の変化には気づくことができる。
食は毎日3食は食べるし、食べる行為にはベトナム語も知識も必要ないからである。
この日の朝食はコムガー。
サフランライスにガー(チキン)が乗った料理で、これより少し前に滞在したホイアンの名物料理である。
コムガーは北部では全くみなかった料理だ。
ベトナムを南北に隔てるハイヴァン峠。
それさえ越えればホーチミンシティまでは平坦だろう、と思っていたのだが、意外とアップダウンが多いベトナム南部の道。
多少走りには苦労はするが、坂を登り切って見る景色は気持ちがいい。
いい加減平坦な田園風景にも飽きていたし、少しくらいのアップダウンなら全然問題なく、むしろちょうどいい運動にもなる。
昼休憩後、峠道が始まる。
山の頂上に大きな岩が直立している変わった峠だ。
標高を200メートルほど上げると、海を見下ろす崖沿いに道が続くように。
崖沿いの道からは再びアップダウンを繰り返し、17時半にVan QIaの町に到着。
結構な規模の町なのに宿の数は少なく、ようやく見つけた宿もシャワーはなし。
水桶はあるため、それで水浴びをしろ、ということらしい。
ベトナムは夜になっても蒸し暑いため、水浴びでも全然問題はないのだが、値段は普段と一緒で、安くはならない不思議。
晩ご飯は炒飯。
ベトナムは米を原材料にした料理が食卓に並ばないことはないくらいの、世界でも有数の米産出国である。
そんなベトナムにあって、米をアレンジした料理というのは何故かほとんど見ない。
米粉麺は別として、米は米のままで食う、という文化なのだろうか。
そんなわけで、炒飯がベトナムではものすごく珍しく、ついつい注文した次第。
3/13
この日は珍しく、朝から雨。
その雨が次第に強くなり、豪雨にまで発展することに。
これは今日は休養日かなぁ…と危ぶんだのだが、1時間もすればカラッと雨が上がるのが、東南アジアの気候。
出発してからは海沿いに進んでいたのだが、それもこの日で終わり。
今私が目指しているのはホーチミンシティであり、このまま海沿いに走るのが最短距離ではあるのだが、ここから一路、内陸へと舵を取り、山岳地帯を走る。
なぜわざわざ山岳地帯を?と思われるかもしれないが、そもそも私は海沿いを走るのが好きではない。
海は景色に変化がなく、眺めていても飽きてくるのだ。
その点、山岳地帯の走行は体力的にはしんどいが、見られる景色のバリエーションは豊かで、飽きることがない。
そして、私は無類のコーヒー好きでもある。
この先の山岳地帯に、Da Lat(ダラット )という街がある。
ベトナム有数のリゾート地であり、かつコーヒーの一大産地でもある。
東南アジアではコピルアクという、超高級コーヒー豆が生産されている。
私もハノイでコピルアクを購入したのだが、ハノイで売られている豆は100%偽物であり、本物はベトナムではダラット周辺でしか購入できない…と言われた。
今回は、是非ともその本物のコピルアクを飲みたいがために、山岳地帯へと進むというわけだ。
14時半頃、国道1号線を離れて山岳地帯へと向かう分岐点に到着。
もちろん、山岳地帯側へと舵を切って進んでいく。
ダラットの標高は1600メートル程。
ほぼ海抜0メートルからの登りは非常に厳しいものが予想されるが、意外とまだ登りは始まらない。
地図を見ても登りはまだ大分先に進まないと始まらないらしく、「それなら今日は登り坂の手前で泊まろう」と、進んでいく。
そして17時、登り坂の手前であるThach Traiに到着。
ここで宿に投宿するつもりでいたのだが、まさか宿がないとは予想もしていなかった。
一応オフラインマップ上では宿が存在しているのだが、実際には影も形も見当たらない。
完全に宿をアテにしていたため、途方にくれる私。
とりあえず、飯を食って落ち着こうと、一軒見つけたレストランでフォーを食べることに。
フォーを食っている間に思案を巡らした結果、このレストランの軒下でテントを張らせてもらえないだろうか、ということに思い当たった。
フォーを食べ終わった後、英語が通じないレストランの人たちに身振り手振りでテントを張らせてもらえないかお願いをしてみる。
快くオッケーをしてくれた上、なんとオーナーの息子さんが今現在日本で留学中とのことで、日本にいる息子さんにわざわざ電話を繋いでくれた。
息子さんは流暢な日本語で、「今日は安心して眠ってくださいね」と言ってくれた。
その後、レストランの営業時間が終わると、オーナー家族の食事時間。
「お前も混ざれ混ざれ」と誘ってもらい、そこからは飲めや食えやの宴会状態に。
ベトナムの焼酎や、春巻きかと思って食べていたものが実は蛇のグリルだったりと、普段は目にしないベトナム家庭料理をたらふく食べさせてもらった。
あのまま海岸沿いに進んでいればなかったご縁であり、やはり私には山岳地帯の方があっているのかもしれない。
ありがとう、親父さんと家族の皆さん。
息子さんも、日本でいいご縁に恵まれていますよう。
(走行ルート:Song Cau→Van Gia→Thach Trai)