細けえことはいいんだよ〜Davasanまで

Xethamouak~Davasan
3/3 (834days)

手持ちの現金がないため、朝食はストーブで即席ラーメンを自炊して食べる。

旅行慣れた人だと、どこかの国を旅行して出国する直前に、手持ちの現金を小銭単位で使い切ってしまうことが多いだろう。
両替をすると手数料が取られてしまうため、これは非常に賢いことであると言える。

私は、そういう細かい計算をしようとすると頭が痛くなるくらいに大雑把な人間なので、国境近くにいる両替商に現金全て渡してさっさと次の国のお金に変えてしまう。

しかし今回のラオスの様に通貨が弱く、他国で両替ができないとなると私の様なタイプは非常に辛い。
余分なお金は持てないし、かつ出国と同時にラオス通貨をゼロにすべく、買い物の際は常に頭をフル回転させて計算せねばならない。

一言で言えば、すげえめんどくせぇ。

そんな憂鬱も、走ればすっきり。

…とはいかないのがラオスという国である。
散々っぱら文句を言っているが、とにかく何もないから風景も単調で、走ることが
苦痛になってくる。

ラオスはODA支援で非常に綺麗な道を持っているのだが、反面車の交通量は非常に少ない。
というのも、恐らくは国民に自家用車を買えるだけの所得がないのだろう。

よく見かけるのは農耕機の後ろに荷台を連結させた車で、これがラオス国民の主力の足になっている。
これがまた非常に遅く、ちょっとした下りであれば、自転車の方が速くなって追い抜いてしまうくらい。

平地だと当然農耕機の方が速いので、抜いたり抜かれたりを繰り返す。
この日抜いたり抜かれたりを繰り返した農耕機には、荷台に幼い兄妹が乗っていた。

ラオスの人々はほとんどの人が、こちらの姿が見えなくなるまで手を振って何度も「ハロー!」と挨拶してくれる。
この幼い兄妹も同様で、荷台から「ハロー!」と挨拶してくれる。

先ほども言った様に農耕機は速度が遅く、私とまったく距離が離れないため、この兄妹は荷台から常に「ハロー!」と言ってくる。
私も応えない訳にはいかないので、片手運転で手を振って答える。

それが1時間以上も続くと、お陰でハンドルを握っていた左手だけ、妙に疲れを感じてしまった。

川は干からびていることが多いラオスだが、橋の数はかなり多い。
そしてその橋から川を眺めると、古い橋の基礎部分だけが残っていることの多い事。

雨季になると増水して、橋ごと流されたりするのだろうか。

しばらく走りお腹も空いた頃に、ちょうど集落に入り、定食屋を発見。
看板にはベトナム語で、食堂と書かれている。

この日中にはベトナムとの国境沿いの町に到着予定なのであり、国境付近になるとこういう風に2つの国の言語だったり文化がごちゃ混ぜになったりするので、非常に面白い。

なおこの食堂の親父はベトナム人だったのであり、なぜわざわざラオスで商売をやっているのだろう。
ベトナムで食堂をやる方が、よっぽど金儲けはできそうだが。

私としては、上手い飯を食えれば文句がないわけで、わざわざラオスまでやってきて飯屋をやっている親父には感謝しかないのだが。

ベトナム国境が近付くと、やたらとバナナを見かけるようになった。
それも黄色いバナナではなく、緑色のバナナ。
ベトナム側に出荷するのだろうか、「原付から生っているのか?」と思うほど、バナナを大量に括り付けた原付がベトナム方向へと走っていく姿を目にする。

路肩には大量のバナナの樹があり、手を伸ばせば簡単に取れてしまいそうだ。

バナナの林の間を縫ってこの日90キロ走りきり、ベトナムとラオスの国境手前最後の町・Davasanに到着。

町の入り口から既に大きな大仏が見えいる。

Davasanは集落と言うのも憚られるくらいの規模であり、数件の商店と一軒の安宿があるのみである。
そんな規模のDavasanに不釣り合いの大きさの大仏は、私の目には異質な存在に映る。

Davasanには大仏以外に見るものが全くない、というより宿の外に入れば嫌でも大仏の頭が目に入ってくるため、吸い込まれる様に境内へ。

この辺境の国境を通る観光客など皆無のはずであり、この大仏は純粋にラオスの人々の信仰心が造らせたものに違いない。

もしくは、経済力も軍事力も貧弱なラオスが、万が一隣国のベトナムが侵攻してきた際のお守りとして置いているのかもしれない。
「おい、この大仏様が見ている前で、お前達は暴力に頼るのか!?」みたいな。

さて、この記事の冒頭で、「多くの旅行者はその国の通貨を出国前に使い切る」という話をした。
普段はそんな事しない私も、ラオス通貨の弱さという事情から、今回は使い切るつもりで調整してきた。

ラオスの宿の相場は60,000キープ程(770円程)。
「Davasanの宿もそれでいけるでしょ」というつもりで、70,000キープを残し、10,000キープを食事代として残していた。

それがDavasan唯一の宿に向かうと、「90,000キープだよ」とのこと。
拝みに拝み倒し、何とか手持ちの現金全てである70,000キープで許してもらった。

端数の1,000キープは、宿の前にある商店で「これで買えて食えるものをください」と言い、チョコをゲット。

流石にチョコだけで自転車旅行者の腹は満たせない。
手持ちで残っていた白米を全て炊き、味噌を混ぜて食うのがこの日の晩御飯。

3年近くも旅行してきて、まさか通貨を使い切るのがこんなにも大変だとは、初めて知った。
多分、もう2度とやらないね、こんな大変なこと。

現金たんまり余らせて、コーラとお菓子をガハガハ言いながら旅行者で、私はありたい。

(走行ルート:Xethamouak→Davasan)

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