越えられない国境〜Ban Vongphansiまで

Nakae~Ban Vongphansi
3/1 (832days)

さすがに警察署敷地内での野宿とあって、全くなんの心配もせずにぐっすりと眠れた昨晩。

現在使っているテントはMSR社のElixirⅠという、一人用のモデル。
自転車旅行では「長期旅行ならテントは二人用」というのが定説であり、私も以前まではそれに従って二人用のテントを使用してきた。

再出発からは一人用のテントを使い出したのだが、実際どうかというと、一人用でも寝る分には全く問題ない。
荷物を全てテント内に入れても、人一人寝るスペースは確保できる。
一人分のためその分重量も軽くなる。

MSRはアメリカ発祥のブランドのため、一人用でも設計がかなり大きめになされているのだろう。

ただし本当に寝転がるスペースしかないため、この状態で苦もなく眠られるかどうかというのは、長期自転車旅行者には必要な能力の一つであると思う。

私は電車のつり革に捕まりながら寝れるし、ともすれば自転車を漕ぎながらでも寝落ちしそうになる人間なので、その能力としては抜群のものを持ち合わせているはずである。
まぁ、日本での社会生活ならマイナスになりかねないので、自慢にはならないが。

今朝も、昨晩に色々と世話を焼いてくれた警察官のおっちゃんが、「これ食え」とスナック的なものを差し出してくれた。

何から何までありがとうございました。

警察署を後にして、少し進んだ先で朝食休憩。
こちらでは、お会計の後に「水補充していきなよ!」と、氷でキンキンに冷えた水をペットボトル全てに補充させてくれた。

「微笑みの国・タイ」というフレーズは聞いたことはあったが、本当にこの国の人は目が合うとニコッと微笑んでくれるし、なによりもみな本当に優しい。

それだけに、道が退屈なことがとても残念ではある。
まぁ、これは私が「面白いルート」を走ることも、そもそも探すことを放棄しているのが原因ではあるのだけど。

どんな国にも、面白い道というのはあるはずである。
というフォローは入れておきたい。

ただ、もうラオス入国は目と鼻の先なのであり、タイでは面白そうな道と出会えそうにないことが心残りだ。

タイには、こんな感じの木造の小屋がよく建っており、ベンチになっているため、休憩場所として重宝している。

十中八九バス停だとは思うのだが、今のところここにバスが停まっている現場を見たことはない。

正午ちょうど、ラオスとの国境手前に到着。
ラオス側の街・Savannakhet(サワンナケート)へと繋がるタイ・ラオス友好橋が、メコン川に掛かっている。

国境を越える前に、タイ側で昼食を食べておくことに。

で、ご飯も食べていざタイ側の出国手続きへ!
イミグレーションには誰も並んでおらず、この分ならすぐに通過できそうだ。

パスポートを窓口にいる女性に渡すと、何やらゴニョゴニョゴニョっと言われた。
全く聞き取れず、「すみません、何ですか?」と聞くと、「自転車は橋を走れないわよ」と、その女性。

えぇっ!?いやいや、陸路国境で自転車で越えられないのなんて聞いたことないって。
ここは地元民だけでなく、観光客もバンバン使っている国境なのは、事前の調べで分かっている。

女性スタッフは再度、「自転車は橋を走れないわよ」と言うと、パスポートをこっちに投げて寄越してツーンとしている。
さっさと諦めてどっか行けという態度である。

「自転車がこの国境を越えるにはどうしたらいいですか?」と聞くも、「自転車は橋を渡れないわよ」しか言ってくれない。微笑んでもくれない。
微笑みの国は、最後の最後で微笑んでくれないのか…

これは困ったな…と数秒思案して、「それならバスはどこかから拾えますか?」と聞いてみた。
すると、「すぐそこでチケットが買えるわよ」と言う。
なるほど、確かにすぐ横にそれらしき窓口がある。

窓口に行くと、「次は12時半だから」とのこと。後10分くらいか。
「じゃあチケット一枚」と言うと、「自転車も載せられるか分からないから、バスが来るまで待ってて」とのこと。

時刻表を見ると1時間に一本くらいで、出ているようだ。

で、12時半になってもバスはやってこない。
大型のバスが一台やってきて国境ゲートを通過したが、チケットの受付は何も言ってこないし、あれじゃないのかな…と思い、小説を読んで待つ。

バスの遅れなんて海外では当たり前だろうと、それから1時間近くは待っただろうか。
流石に13時15分くらいになり、「12時半のバスって来ないの?」と聞くと、「次のバスは13時半にくるよ」とのこと。
おいおい、やっぱりゲートを通過したバスがそれだったんかい!
お前声掛けてくれや!

13時半になり、定刻通りにバスが到着。
そもそも東南アジアではキッチリしているタイにおいて、バスがこんなに遅れることはないはずなのであり、それをのんびり小説読んで構えていた私にも非があるか。

結局バスの料金は運転手に直接支払うことになったのだが、値段がなんと50バーツプラス自転車に100バーツ。
たかだか10分にも満たない運行に、500円近くも取るなんて明らかにぼったくりではあったのだが、他に選択肢もなく、しぶしぶ支払うことに。

バスはゲートを通過し、友好橋を渡ってメコン川を越えていく。
国境を他人の足で越えるというのは、やはり釈然としない虚しさがある。

で、10分もしないうちにラオス側の国境に到着。
バスに同乗していた客は、私が自転車に荷物を括り付けている間にすっかり掃けてしまい、入国手続きは即終了。

無事、ラオスに再入国。

ラオスに入るとまた道が悪くなるんだろうな、と予想していたのだが、意外にもしっかりとアスファルト舗装されいる。
タイが多少なり援助しているのだろうか。

山積みにされて売られているスイカを見ると、確かにここはラオスなのだが。

Ban Vongphansiという集落に17時到着。
なるほど、ラオスにしては随分と立派な道路だと思っていたけど、日本のODAによって作られたものだったのか。

見た目がボロい宿に向かったのだが、受付が無人で、いくら待っても誰もこない。
ちょうど目の前が警察施設だったため、そこでテントを張らせてもらえないか聞いてみたのだが、断られてしまった。

仕方がないので、少しお高めの宿に投宿。
ラオスは樹木が一切生えていないため、野宿場所を探すのはやはり難しいのです。

晩御飯を食べ宿に帰ると、ちょうど日没の瞬間に立ち会えた。
これまでも、ラオスの日没は真っ赤な色で独特だ、という紹介をしてきた。

やはりこの日もその特徴は健在。
この色の日没は、タイでもベトナムでは見られない。ラオスでしか見られない。
形のない国境を挟み、なぜラオスだけなのだろう。

資源も何もないラオスでは、ほとんどの人が農耕で生計を立てているという。
日の出と共に仕事を開始し、日没と同時に仕事を終える。

ラオスに何も与えなかった神様が、「せめて1日の労いにこれだけ」と、この美しい日没風景を与えたのかもしれない。

(走行ルート:Nakae→Ban Vongphansi)

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