ラオス飯がいま熱い〜Kasiまで

Namuang Gnai~Kasi
2/22 (825days)

壁の様な山を見て、昨日先延ばしにした峠越え。
悲しいことに夜というのは必ず明けるのであり、必然私もこの日は覚悟を決めて峠を越えねばならない。

この集落では朝食も食べられる店がないだろうと判断し、前日に買っておいたインスタントラーメンを食べ、7時半には出発。

峠越えはただでさえキツイのであり、そこに日差しや暑さが加わると、そのキツさは倍、いや3倍には膨れ上がる。

だから峠越えは、早朝出発するにかぎるのだ。

昨日は壁のように見えた山も、朝早いこの時間帯だとぼんやりと靄が掛かっており、その威圧感は少々和らいで見える。

まぁ、それも時間が経つにつれて靄が晴れて、山の輪郭がはっきりしてくるんですが。

昨日より威圧感増してないか。

覚悟はしていたものの、やはり斜度がきつい。
新道でアスファルト舗装の状態も良く、メイン国道と比較してビエンチャンまで50キロも短縮されるというのに、大型バスや大型トラックがこの道は走らないという理由がよく分かる。

多分、途中でエンストしたり車線を外れて崖に転落するのがオチだろう。

CHARPってなんだよ。

道中に集落とは言わないまでも、民家は点在しており、一応人は住んでいたりする。
農業で生計を立てているのだろうけど、こんな僻地で作った農作物をどこに売りにいくのだろう…

回りを囲む山よりも自分の位置の方が高くなると、「あぁ、随分高い所まで登ってきたんだな」という実感が湧いてくる。

ふと眼下の崖を除くと、一台のバスが崖の下に転がっていてぞっとした。
やはり、運転ミスでバスが崖から転落する事故は、この道では珍しくないのだろう。

峠を越えるまでは上り一辺倒だろうな、と思っていたが、意外にも下り坂も結構存在している。
そのため走行距離自体は稼げて、かなりいいペースでこられている。

標高が1,500メートルに達した所で、少し休憩を取ることに。
出発前に商店でおやつを買っていたのだが、袋詰めのお菓子が気圧の関係でパンパンになっている。

休憩した場所からは結構なダウンヒルが始まり、突然盆地になっている空間に出てきた。
この盆地には結構大きな集落があり、学校もあるくらいの規模だ。
ただしやはり商店や定食屋なんかはなさそうで、本当に閉鎖された集落、という感じだろうか。

この集落からが、峠に向けての最後の登り坂。

この日のスタート地点から29キロ、先ほどの集落からは7キロ走り、峠の頂上に到着!
標高は手元の高度計で1,800メートル。
言うまでもなく、再出発以降では最高到達地点。

頂上にはちょっとした展望エリアがあり、崖の向こうには私がこれから下っていくことになる道が、山肌に沿って遥か先の山底まで伸びているのが見える。

私が頂上に着いた時、先客のサイクリストが二人既に到着していて、休憩を取っていた。
ほとんどのサイクリストはメイン国道のルートを取る中、わざわざこの厳しい峠越えルートを選ぶとは、親近感が湧くというもの。

話しかけてみると、彼らはフランス人で、1年掛けてフランスからここまでユーラシア大陸を横断してきたという。
冬の中央アジアも走って来て、「氷点下20℃になった時は寒かったよHAHAHA」と軽く言うのだから、ヨーロッパ出身のサイクリスト、とりわけフランス人サイクリストはタフである。

まぁ、フランス人はちょっとストイック過ぎる人種で、ヨーロッパの中でも異彩を放っているのだけど。
これまで結構なフランス人サイクリストと出会ってきたけど、晩ご飯が茹でたパスタ「だけ」だったり、缶詰一個だったり、とにかく食に無頓着な奴が多い。
そして、そんなお粗末な食事で午前中の時間だけで100キロとかを走ってしまうのだから、恐れ入る。
今回出会った彼らがどういうスタイルで走っているのかは聞かなかったけど、それくらいフランス人は変わっている。

ゴールとなるベトナムのハノイまで残りわずかとのことで、お互いよい旅行と安全を願って、別れを交わす。

さぁ、ここからは一気に山を駆け下りて、メイン国道との合流地点まで下るだけ!

…そう思っていたのだけど、下り側は道の状態が悪く、工事があったりアスファルトに穴が空いていたりと、下っていて全く気が抜けない。

ブレーキを掛けなければ一気に時速60キロまで到達する下り坂で、その速度のまま穴に突っ込めば大事故になり兼ねない。
神経を集中して路面を凝視しながらのダウンヒルは、精神的に結構疲れる。

狂った斜度のダウンヒルも徐々に緩やかになり、集落が再び現れ始めた。
レストランもあり、久しぶりにまともな食事を取ることができる。

レストランは半露天で、時折吹き抜ける風が涼しくて心地よい。
料理が運ばれるのを待つ間、外に目を向けると、牛が路上を歩いているのが見える。
この国では、車やバイクの数よりも牛の数の方が多いのではないだろうか。

待つこと10分ほどで、料理が運ばれて来た。
料理名は分からないが、いわゆるぶっかけ飯。

このただのぶっかけ飯が、非常に美味しい。
大きな峠を越えた直後のご飯という状況を差し引いても、美味しい。

ラオス料理はどの料理も野菜の量が多く、味付けも中華料理に近く、東南アジアの中では私はかなり好みだ。

昼食後はアップダウンの連続の道が続く。
車もほとんど通らない道で、鳥のさえずりや虫の鳴き声くらいしか聴こえない静けさで、ゆっくりと走行を楽しめる。

そんな静かな道中で、ふと何気なしに路肩を見ると、水牛が自分のすぐそばで水浴びをしていたりするから驚く。

あまりにも静かだから、そんなとこにいるとは思わないじゃない。

15時半、メイン国道との合流地点にあるKasiという集落に到着。
ゲストハウスとレストランが一緒になった所に投宿。

ここでもやはりぶっかけ飯が出てきたのだが、これも美味しい。
知名度も注目度も、隣国のベトナムや中国と比べれば格段に低い、ラオス料理。
その両国と比較しても、味に関しては全然引けを取らない。

これはもしかして、ラオス料理ブームが来る日も遠くないのではないか?

…さすがにぶっかけ飯じゃあ、ブームは難しいか。

(走行ルート:Namuang Gnai→Kasi)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です