ベトナム入国〜Voiまで
凭祥〜ベトナム・Voi
2/3 (806days)
さて、いよいよこの日はベトナムに入国である。
中国ではビザのリセットを繰り返して出入国を複数繰り返しているため、「お前出国できないアルよ!」なんて事も、中国ならあり得そうで怖い。
まぁ空路ならまだしも、陸路でそんな事そうそうにないだろうけど。
国境越えとなると厳しいチェックが待ち受けている…と思っている人が少なからずいると思うが、陸路、それも人力で越えよう人間に対しては、国境とは非常に甘々なのである。
ベトナム国境までは残り15キロ弱。
途中で事故でも起こらなければ、嫌でも1時間で着く距離。
なお、河内となっているのはベトナムの首都・ハノイ。
日本の大阪ではございませんのであしからず。
で、本当に1時間もせず着いてしもうた…
この門の先が、国境管理のイミグレーションがある…の、だが、この門、ふざけた事に入場料が必要なのである。
それも出国税や手数料とかではなく、イミグレーションの手前にある建物を見るための観光料、として徴収しているようなのだ。
こんなふざけた国境は、この旅行始まって以来初のことである。
というか、国境を観光地にするなよ!
はっきり言ってそんな物を払う気は無い、というか、つい数秒前にこの門の目の前にいた両替商から、有り金全てベトナムドンに替えてもらったばかりで中国元がない。
ダメ元でゲートの守衛に「ベトナム!ベトナム!」と、自転車で通過するだけアピールをしてみる。
守衛も察してくれたのか、パスポートだけチェックしてあっさり通過させてくれた。
門の先には古びた黄色い建物があり、どうやらその建物に文化的価値があるようだ。
その建物に入るのに、入場料がいるのかも知れない。
先へ進むと、大きな立派な建物が現れる。
中国側のイミグレーションである。
随分立派であり、利用者も結構いるのだが、団体客で行動している訳でもなく、混雑はしていない。
私の出国手続きも、待ち行列がなく一瞬で終了。
X線での荷物チェックは相変わらずで面倒臭いが、ここまであっさりと手続きが済んで一安心。
冒頭で「陸路入国は緩々」と申し上げたのだが、共産主義国家を出国、入国するということに関してはそうでもないようだ。
私にとって中国は初めて訪れた共産主義国家であり、お隣のベトナムも共産主義国家である。
「陸路入国で荷物を全てX線検査するのなんて中国くらいだろ」と思っていたのだが、ベトナム側でもきっちり全て検査された。
過去にはチリ入国の際にX線検査はあったが、それ以外の国は全くノーチェックだった。
まぁ、本来これくらいのチェックが当たり前であり、今までの国がおかしかったのかもしれない。
特にやましいものを所持している訳でも無いのだが、自転車から荷物を外してチェックして、また積んで…というのが非常に面倒くさい。
当たり前だが、文字が中国語ではなくベトナム語。
つい数分前まで使われていた言語は漢字であったはずなのに、国境から一歩踏み出せばチンプンカンプンな言語に変わる。
これこそ、陸路入国の醍醐味である。
しかし全く理解できないのだから、ベトナムでの数日間はかなり苦労しそうだ。
もう一つ変化したのは、中国ではあれだけ走っていた電動原付が姿を消し、日本と同じガソリンで動く原付ばかりになったことである。
音のない電動原付と違い、当然ながらエンジン音はうるさく、ベトナムの道路は賑やかだな、という第一印象を受けた。
道路状況は中国の南西部よりも良く、路面状態も良く、路肩も広いため快適に走ることができる。
こんな田舎でも立派な道が通っているのだから、ベトナムでガタガタ道に苦しめられることはなさそうだ。
水田とサトウキビ畑ばかりなのは中国後半と変わらないが、奇岩がにょきっとそこら中から生えている。
ちょっとしたキッカケがあれば、ロッククライマーが大挙して押し寄せてもおかしくないのではないか。
60キロ走り、ようやく昼食休憩。
道中にいくつか飲食店はあったのだが、この日は旧正月の前々日だからか、にべもなく断られてしまった。
正直、ベトナム語は全く予習していなかったのであり、注文の仕方がわからない。
レストランの人が米やら卵やらを指差ししたことに対し、ひたすらに首を縦に振った結果、出てきたのが炒飯。
まさかベトナム初の食事が炒飯になるとは。
「しばらく炒飯食えないだろうな」と思い、前日の晩御飯に炒飯を食べたのだが。
案外ベトナムでも炒飯は食えるのかもしれない。
ちなみに値段は60,000ドン(約300円)であり、食に関しては「ベトナムは高い」というのが第一印象であった。
昼休憩後も田舎道をひた走る。
ベトナムのマイルポストは分かりやすくていい。
これはぜひ他の国も導入してほしい。
道中よく見かけたのが、段に積んで売られている瓶詰めの漬物。
どうもタケノコを漬けた物の様で、色合いを見るに、キムチに近い物なのかもしれない。
中国では一切見かけなかったので、ベトナムの食文化なのだろう。
この日125キロ走り、Voiの町に到着。
線路を挟んで左右に家が並んでいる。
早速宿を探そうと町の本通りに自転車で向かおうとしたのだが、人と原付の多さと、その喧騒に思わずたじろいでしまった。
町の雰囲気はお世辞にも綺麗とは言えず、中南米に近い汚さを感じる。
しかし治安に不安はなさそうで人々に活気があり、空気が熱を帯びている様に感じる。
結局町の中心に宿はなく、線路沿いの道でようやく見つけることができた。
綺麗な個室で18万ドン(約900円)。
特別安くはないが、中国みたいに追い出される事がないと分かっているだけで、気が楽だ。
さて、ベトナムに入国して初日。
この日の朝、私は自分に「ベトナムに入ったらまず、フォーとチェーを食う」ことを課していた。
ということで、晩御飯はフォー。
フォーとはベトナムの代表的料理であり、米で作った平打ちの細麺を使った料理である。
メニューを見ると、フォーの後にボー、ガー、ブンなどが続いており、どうやら具材の違いになるようだ。
試しにフォー・ボーを頼んでみた。
待つ事数分、牛肉とパクチーの乗ったフォーが、別皿に盛られた山盛りの生野菜と一緒に運ばれてきた。
同じく付いてきたレモンを絞り、麺をずずっと啜る。
薄い出汁に、レモンの酸っぱさとパクチーの苦味、牛肉の旨味がほどよく混ざる。
麺は柔らかいが、箸で持ち上げても形が崩れない程度にはまとまっている。
なるほど、確かに美味しい。
中国にも粉(フェン)という似たような料理があったが、あれは麺をクタクタに煮込みすぎて麺が崩れて好きではなかったが、フォーは好きになりそうだ。
ただ、ヘルシーで女性にも大人気!でお馴染みのフォー。
いかんせん、これ一杯では自転車旅行者の胃袋は満たせない…
ということで、他のツマミを探してしばらく屋台を物色。
サンドウィッチ屋台を見つけ、ひとつ注文してみる。
パンを平たく潰してフライパンで表面を焼き、炒めた卵を挟むという簡単な物。
後で知ったのだが、ベトナムはフランスの植民地だった関係から、こういったサンドウィッチも一般的に食べられているらしい。
最後の締めは、チェーである。
適当にメニューを指差し、出てきたのがプリンと葛餅が入った皿と、別皿にかき氷。
プリンと葛餅を少しずつ氷側の皿に入れ、食べる。
これは美味しい!
葛餅の固い感触があり、かき氷とはまた違う食感になっている。
暑いベトナムにあって、毎日食べたい美味さ。
しばらくは「チェー、チェー」と呟きながら、チェー屋を求めて走る日々になりそうだ。
(走行ルート:凭祥→Voi)