中国最終夜〜凭祥まで

板利〜凭祥
2/2 (805days)

休養日であった昨日。
地図アプリでは載ってすらいないこの小さな板利の町ではあるのだが、一日市なのか、2月1日の昨日はそれはそれは大賑わいの路上市場だった。

市場が終わった日没後は、台風が去ったのかという程のゴミの山。

そんな昨日と打って変わって、落ち着いた市場の雰囲気となっている中での出発である。
この日120キロ弱も走れば中国最後の町・凭祥に到着予定で、翌日はいよいよベトナムに入国である。

朝食は粥。
チワン族自治区に入ってから、明らかに国民性がガラッと変わったように思う。
つっけんどんな中国人に比べ、チワン族の人は笑顔な人が多く、比較的物腰が柔らかい。

この日も、朝食を食べた定食屋の女将さんが、頑張って英語で自己紹介をしてくれたので、私も頑張って中国語で自己紹介をする。

お互い「何か英語で(中国語で)言ってんだろうな〜」くらいの理解だと思うのだが、こういうコミュニケーションというのは、当事者にしても微笑ましく思える。

この日の朝は涼しく、冷たい空気が肌を引き締める。
ぴんと張った空気は、日本の秋を思い出させる。

少し明るくなり始めた朝の早い時間。
鳥や虫もまだ目を覚ましていなくて、誰も歩いていないアスファルトの道路を歩く。
日が昇って暑くなる前の、冷たい空気と静かな時間の流れる、日本の秋。

好きだったなぁ。
次に日本の秋を感じられるのは、いつになるんだろう。

そんな澄んだ空気も、時間が経つにつれて徐々にガスがかかった様に。
この辺りはサトウキビ畑だらけで、収穫を終えた土地は刈り残しと一緒に焼畑にする。
どこの農家の畑からも煙がモウモウと上がっているので、太陽さえもうっすら隠れる程なのだ。

意外とアップダウンが多く、ペースが上がらない。
こういう時は早めに昼食を食べて、力を付けるに限る。

さて昼食も食べたことだし、出発だ!
と思って進み出したら、町の出口で変なモニュメントが。
しかもそのモニュメントのことごとくが、野菜。

なぜにアボガド?

何故にスイカ?
何故に虐める?

自転車星人が攻めてきた!
頭はニラだから、匂いに気をつけろ!

共産主義国家故、中国でこういう広告や陳列物を使ったウケ狙いというのは許されないと思っていたのだが、チワン族自治区ではどうやらオッケー、規制緩々なようだ。

こういう変なオブジェでも見てないと、暇で仕方ない。
それくらいサトウキビ畑しかないのだが、徐々にサトウキビ畑に混じって連なった山も見えはじめた。
私の中でのベトナムのイメージというと、やはり山深い国というイメージになるので、こういう風景が見え始めると、いよいよ国境超えなのだな、という実感が湧いてくる。

朝の予定通り、凭祥に到着。
国境沿いの町らしく、まだ国が変わらないまでも、ベトナム語が店や広告に混じり始めたことに、異文化の雰囲気を感じる。

陸路入国というのは自転車旅行の醍醐味の一つなのだが、私はこのイベントが好きだ。
国境という、人間が作った目には見えない曖昧なラインなのだが、そのラインを超えると明らかに国が変わったと体で感じることができる。
それは文字であったり、音楽であったり、匂いであったり。

そしてそれらは、我慢できないと言わんばかりに、国境を超える前から隣の国に滲み出ているのだ。

そんなベトナムの空気を既に感じつつ、実際に入国するのは翌日であり、この日は凭祥で宿泊するつもりできたのだが…どうも様子がおかしい。

どの店もシャッターを降ろして、全く人の気配がない。
それも町丸ごと。

閉まっている宿の扉に近づくと、「旧正月のため2月1日から休みです」
おいおい!旧正月は2月5日だぞ!早すぎるよ!

何とか開けている宿を見つけることができた。
それでも、そこも「明日9時までに退出してくれるなら」という条件付きだったのであり、私が思っている以上に旧正月は中国人にとって重要イベントらしい。

何はともあれ、明日はベトナムだ。

(走行ルート:板利→凭祥)

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