待ち人があれば張りもでる〜昊川まで

阳西〜昊川
1/26 (798days)
さて、この日は人との約束事があるので、余裕を持って目的地に到着しなければならない。
といいつつ、6時半に目が覚めて、まだ外が暗かったため二度寝。
外が暗いなら仕方ない。
それでもいつもより早く、8時には宿を出発。
今日の朝食のコーナー。
道は前日に引き続き路面状態が悪く、ガタガタの路肩を走るとストレスにしかならないため、車線を走る。
最近わかったことだが、中国では事故防止のために追い抜きをする際には必ずクラクションを鳴らす、という交通マナーらしい。
ほぼ全ての車両がクラクションを鳴らしてくるわけで、毎回うるさくて仕方ないのだが、これはよそ見運転をしているドライバーが少ないことを意味する。
そういうことで、中国では案外事故に遭う確率は低いのでは、とは思うのだが、やはりうるさくて仕方ない。
ただ、私はそれでも中国人のドライバーを信用しているわけではなく、事故に合わないのはあくまでも直線を走っているときのみだと、思っている。
今後中国で自転車、もしくは車を運転する機会がある人は、よく観察してみてほしい。
中国人は右折、もしくは左折して本線に合流する際、絶対に左右確認をしない。
驚くことに、車が曲がる際、そのドライバーの首は固定されたまま前を見続けているのである。
私は「車を運転中、中国人の首は曲がらない呪いに掛かっている」説を提唱したい。
ジャングルの切れ間に、山の上に中国では珍しい風力発電機が見られる。
これは、この辺りが通年強風であることを意味する。
風とは自転車旅行者には味方にも、また大いなる敵にもなりうる。
追い風であればそれはもう心強い味方なのだが、向かい風だと疲労度が2、3倍に膨れ上がる。
この日は嬉しいことに追い風であり、背中をどんどん押してくれる。
普段は時速16キロくらいでチンタラ走っている私だが、この日は20キロ以上でぐんぐん進んでいく。
ただ、いくら風が背中を押してくれて楽ができていると言っても、腹は減るもので。
こういう自由気ままな旅行をしていて言うのもなんだが、私は自分のルールやルーティンが崩れるのが嫌いなタイプである。
自転車旅行においていえば、昼飯は12時には必ず食いたい。
というか、時計の針が12時を刺せば、パブロフの犬がごとく腹が減ってしかない。
この辺りの名物がそうなのか、どの店も「鴨粥」なるものを看板に掲げているので、適当な店に入ってそれを注文する。
待つこと数分、なんの具もない粥が運ばれてきた。
あぁ、こりゃハズレだな…
いや、このタダのお粥を、タダの粥と侮るのは早計。
それはそれは、きっと12時間とかそれくらい長時間鴨の骨を煮込んで、味が濃縮された出汁で作った粥に違いない。
熱い粥をふぅふぅと冷まし、口の中に入れる。
ほれ、ファストフードの濃い味に麻痺した人間の舌には到底判別ができぬ、微かながらほのかな鴨味がするじゃろう?
粥も半分は食い終わった頃、鴨が別皿で運ばれてきた。
あのさぁ、私に恥欠かせないで欲しいんだよね。
鴨にエネルギーをもらい、風に背中を押してもらい、稀に見るペースで110キロを走り切って昊川に到着。
高層ビルが並ぶ地方都市で、さすがにこの規模だと安宿も断られたりしたのだが、なんとか30分ほど掛けて80元の宿を確保。
私が宿に到着して2時間後、同じ宿に一台の旅行自転車がやってきた。
そう、この日の用事とは、旅行自転車の持ち主と会うこと。
彼は日本人で、大学生のマコトくん。
なんと大学を1年休学し、ポルトガルから中国のマカオまで、ユーラシア横断中とのこと。
ちょうど私とルートが重なっており、この街で落ち合うことを約束していたのだ。
この日から後数日でゴール地点のマカオに到着するということで、これまでの積もり積もった旅行の話をする。
私が大学生の頃には休学して海外を自転車で走る、という発想が自分自身にもなかったし、周りにやっている人間もいなかった。
そういう意味で、大学生にしてそういう決断をした彼の勇気であったり、発想というのは、凄いことだなと感心させられた。
最近ではクラウドファウンディングという仕組みができあがり、資金集めも容易になりつつある。
賛否両論はあるだろうが、若い人がやりたいことを、大学生などの若いうちにできることは、良いことではないだろうか。
(走行ルート:阳西→昊川)