いっそセレナーデ〜惠东まで

海丰〜惠东
1/14 (786days)

目を覚まし、荷物をまとめて宿を出る。
まだ温まっていない体に、空きっ腹でペダルを漕ぐ足は重い。

それでも、中国のこの朝の時間帯が私は好きだ。
なんてったって、美味しい朝ご飯が食べられるからである。

中国の文句はこれまで散々言ってきたが、そんな私も唯一認めているのは食の美味しさ。
豊富なメニューから選べて、そのどれもがハイレベルで美味しくて、値段が10元(160円)なんて国を、私は他に知らない。

だから朝の空きっ腹の、普段ならイライラするような時間でも、我慢をするどころか「今日はどんな朝食を食べられるのだろう?」とワクワクさせられる。

この日も少し走って、いい感じに廃れた屋台を発見。

美味しそうな肉まんと、シュウマイのような物が蒸篭の中にあったので、それを注文。

しかし、シュウマイと思ったものは中身は肉ではなくて餅米、肉まんは何と具無しときた!

これでは物足りんなぁ、と思いつつ先へ進むと、いい感じの定食屋を発見。
「八宝粥」というメニューを指差し、注文。

餡掛けのように少しとろみがかったお粥を、おばちゃんが寸胴鍋からすくってくれた。
テーブルにラー油があったためそれを入れると、おばちゃんが何か叫ぶように、慌てて私からお粥を取り上げて、ラー油をレンゲですくって捨ててしまった。

そして、砂糖を指差して「これを入れろ」という。
えぇ?お粥に砂糖? と、訝しみながらも、言われた通りに砂糖を入れ、一口食べてみる。

ほどよく温かいお粥に甘みが加わり、さらに優しい味に。
なるほど、お粥に砂糖というのも悪くないな…

ふと顔を上げると、おばちゃんも定食屋にいた他のお客も、私の方を見て微笑んでいる。
そりゃあでかい自転車に乗った変な奴が来て、中国語も喋れないで筆談で注文して、変な食べ方しようとしていたのだから、心配する気持ちもあったのだろう。
「ありがとう、砂糖お粥はとても美味しいですよ」という気持ちを込めつつ、微笑み返す私。

ちなみに注文もしていないのに付いてきた、ねぎ焼き風卵焼きは、もっと美味しかった。
これ、何だろうな。

この日は田舎道を走っていく。
山との距離が近い。

途中、左手に海が見えてきた。
上海を出てからほとんど沿岸部を走行しているのだが、ほんの少しだけ内陸に道が通っている関係で、これまで海を見る機会はほとんどなかった。

中国の謎専門店の一つ、爆竹専門店。
この他にもよく見るのは、自動麻雀卓専門店。
これで商売として成り立つのが凄い。あまりにも尖り過ぎた専門性。

さてさて、冒頭で朝食について書いたが、もちろん私は昼食も好きだ。
この日も正午近くなってきた頃に「いい店ないかなぁ」とキョロキョロしていたのだが、ある看板が目に入ってきた。

中国では犬を食べる文化がある、とは日本でも聞いたことがある人は多いのではないだろうか。
もちろん私も知っていたのだが、いざこうして看板を目の当たりにして、本当に食べている事実を知ると、「ほんまに食べてるんや…」という驚きはある。
犬の丸焼きとかでなければ、興味本位で食べてみたい気もするが、看板を見るに結構な高級料理のようで。
貧乏な自転車旅行者には縁がなさそうだ。

私にはこういう庶民的な料理の方がよっぽど似合うわけで。

ラッキー777のマイルポストは何となく得した気分になる。

夕方になり、惠东という町に到着。
小さな宿場町で、端から端まで1キロくらいの規模なのだが、その中に宿が5軒ほどはあるだろうか。

その中に60元と、これまでを考えると破格の安宿に投宿。

晩御飯は白切鸡飯。
茹でた鶏肉を薄い醤油ベースのタレで味付けしているようで、あっさりしていて美味しい。

翌日は深センに到着予定。
知人の家に訪問予定なので、泥まみれになった自転車で上がっては申し訳ない。
ということで、5時間くらいかけて徹底的に自転車を清掃。
ついついクランクを外してチェーンリングまで分解して清掃するまでしてしまった。

その最中、フロントリム(ホイールの枠組み)に気になる傷を発見。
リムを横断するように放射状に伸びており、これがヒビ割れであるのなら、これはもう超緊急かつ要交換案件になる。

一時帰国中に交換することも考えはしたのだが、大丈夫だろうとそのままにしていた。
4万キロここまで交換なく走ってきたのだが…
いっそのことバキッと真っ二つに折れてくれた方が交換に乗り出せるのだが、この傷だと判断が難しい。

とりあえずは経過観察しつつ、走るしかないか。
中央アジアに入るとますます自転車関連のパーツは入手できないだろうし、ただの傷であってほしいのだが…

(走行ルート:海丰→惠东)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です