トロールの通り道その①~Valldal北東13kmまで

Vestnes~Valldal北東13km
Trollstigen(トロールの通り道)
6/10 (751days)
現在走行中のノルウェー南西部。
そこに、Trollstigenと呼ばれる道がある。
Trollstigenを日本語訳すると、『トロールの通り道』。
「世界で美しい道」と検索すると、必ずといっていいほどヒットする。
地図上で確認すると、幅の大きな九十九折れがダイナミックに山の中を貫いているのが分かる。
写真で見て非常に面白そうな道だったため、「九十九折れマニア」の私としては是非とも行きたいと思っていたのだ。
Modelからフェリーに乗り、対岸のVestnesへと渡ったのが、前回の記事のあらまし。
Vestnesから入り江沿いにしばらく南下した後、内陸へと向かった先にTrollstigenがある。
(※写真2枚目の赤ピン付近)
このTrollstigen走行をもって、私のヨーロッパ走行の総決算となる。
6/10
この日は朝から霧雨が降り、合羽の更に下にウィンドブレーカーを着ても寒い。
沿岸に沿って進むのだが、トンネルが非常に多い。
しかもそのことごとくが自転車走行不可で、ストレスが溜まる。
トンネルの側には一応こんな感じで小道は存在しているのだが・・・
あ、すげぇ嫌な予感がする。
山がド派手に大崩落しており、完全に小道が遮断されている。
かといってトンネルを通る訳にもいかないため、自転車から荷物を外し、何度か往復して搬送するピストン作戦を取ることに。
これ、ちょっとでも足を踏み外したら海へ真っ逆さまだ・・・。
グラグラと不安定な石を踏み、思わずペタリと尻もちを着いた時はヒヤッとした。
あれだけ重たい荷物を何度も往復したのに、掻いてたのは冷たい汗という。
ピストン作戦は無事成功し、本線に合流。
Stordolという集落に到着。
古い建物が多く残された集落で、中には1700年代から残された物もある。
Stordolを抜ける頃には天候も回復し、快晴の空に。
Stordolからは上り坂だったこともあり、景色も見通しが良い。
高いところから見ると、フィヨルドが複雑に入り組んでいるのがはっきりと分かり、その自然のダイナミックさに心奪われる。
17時半、Valldalの集落に到着。
Valldal手前の数キロはトンネルが連続し、かつその中は路肩がない。
私の進行方向からは下り坂だったため、スピードに乗って一気に通過できたが、逆方向から来る場合は地獄だろう。
このValldal、Trollstigenの手前の集落だからか、この小さな集落の中に高級ホテルやキャンプ場が乱立している。
Trollstigenは標高高い山中にある。
ValldalからはTrollstigenに向けて、いよいよ上り坂が始まる。
標高を1,000メートル近く上げる上り坂は、久しぶりの事だ。
南米のアンデス山脈以来のことで、山好きの私としては心躍る。
Valldalからは川沿いを上っていく。
周りは山に囲まれ、その山頂付近からは滝が落ち、川まで流れてきている。
カナダのアイスフィールドパークウェイや、ニュージーランドのミルフォードサウンドを思い出す様な風景だ。
ただ走っているだけでも美しいと感じるのは、チリとアルゼンチンを跨ぐアウストラル街道によく似ている。
アウストラル街道は未舗装路だったが、この道は完全舗装路で、「走りやすさ」と「美しさ」を兼ね備えた素晴らしい道だと思う。
ヨーロッパは滞在許可日数の少なさから、自走に拘ると走れる道の選択肢がガクッと少なくなってしまう。
自転車以外の手段を使うのは私も極力避けたいのだが、結果的にこの道を走れたのだから、電車とバスを使ったのは我ながら良い選択だったと思う。
Valldalから標高を300メートル程上げたところで、森の中で野宿。
翌日は遂にTrollstigenの九十九折れだ。
遠足の前夜にワクワクして寝られない子どもみたいに、テントの中でソワソワしていた。
(走行ルート:Vestnes→Valldal北東13km)