絶対防衛ライン~Bjerkvik南西40kmまで

Bardufoss南西20km~Bjerkvik南西40km
5/31 (741days)
5/31
夜にかなり冷え込んだためか、テントに霜が降りてびっしょりと濡れている。
寝袋とテントを干しつつ、ベンチで朝食を取っていると、遅れてアットが起きてきた。
当然私の方が早く出発準備が整い、走行ペースも違いすぎるのが前日に分かっていたため、彼とはここでお別れ。
ノルウェーに入って朝からここまで快晴なのは、初めてな気がする。
自転車旅行者の私にとっては、ありがたいことこの上ない。
ノルウェーの人にとって、この快晴の天気はどう写るのだろう?
冬の期間は一日の間、太陽が全く姿を現さない漆黒の世界。
夏になると、一転して白夜。
冬から春・夏を迎える転換期は、久々に太陽を見る喜びを感じると思うのだが、その感動も徐々に薄れ、一日中沈まない太陽に見飽き、うんざりしてくるのだろうか?
川沿いに標高を上げていく道が続くけれども、斜度はほとんど無いに等しく、景色も良いため快適な走行。
この日40キロ走り、丘の頂上に到着。
ささやかなモニュメントと、大砲が2丁置かれている。
モニュメント脇に設置された説明によると、第二次世界大戦時、ナチス・ドイツ軍は北極圏のさらに北、こんなノルウェーの僻地にまで軍を進めてきたらしい。
まさにこの丘がノルウェーにとっては防衛上、死守しなければならないラインだったようで、事実、ノルウェー陸軍の必死の防衛により、ナチス・ドイツ軍のこれ以上の北上を許さなかったという。
こういうモニュメントを見ると、戦争とはやはり勝った者が歴史を語れるのだな・・・と思う。
敗戦国である日本では、第二次世界大戦で日本軍がしてきた行為は全て悪であると見られがちで、授業やメディアで取り沙汰されるのは、「謝罪・反省」という面の方が遥かに多い。
逆に戦勝国では、このようなモニュメントで見る言葉は「称賛・英雄」といった言葉が並ぶ。
彼らの文字に、反省の言葉は見たことがない。
もちろん私は当時の日本軍を支持するつもりもないし、かといって戦勝国を支持するつもりもない。
ただ、日本人の兵たちが日本のために命を賭し、命を落としたことに対しては、悲哀と感謝、鎮魂を願う気持ちが入り混じる感情を覚える。
憎むべきは戦争とそれを止められなかった両陣営の政治家・軍部であって、最早抜き差しならぬ状況になり、母国のため戦わざるを得なかった兵たち、ご先祖様には、ただただ安らかに眠ってもらいたい。
丘の頂上から下る途中、入江とその岸辺に並ぶ集落が見下ろせる、景色のいい展望スポットで昼休憩。
ノルウェー西側は、景色に高低差があってダイナミックな展望が見られる場所が多い。
丘を下り切り、Bjerkvikの集落に到着。
ここは分岐上にある集落で、メイン国道から外れて西進すると、いよいよロフォーテン諸島へと入っていく。
国道外れて大型スーパーが減ると予想し、Bjerkvikのスーパーで食料を買い込んでいく。
前日ガスストーブを入手したけれども、ガスカートリッジが高いため、使うのは晩御飯だけ。
朝食はシリアルを継続。
ノルウェーではガソリンスタンドでガスカートリッジが購入可能。
ただ、Bjerkvikにはガソリンスタンドがあり、最初に行った方では90NOK(約1200円)、もう片方は69NOK(約940円)。
容量230グラムで全く同じ商品なのに、何でだ?
まぁ、230グラムで1000円するのだから、どちらにせよノルウェーの物価は狂ってる。
買い物を済ませて少し休憩してから、Bjerkvikを出発。
いよいよにロフォーテン諸島方面へと迫っていく。
ちなみにBjerkvikから先60キロは、まだノルウェー本土のまま。
そこから橋を渡り、いよいよ島へと渡るのだが、最初の島・ビン島はロフォーテン諸島の範囲ではない。(ビン島の南端のみロフォーテン諸島に属している。)
Bjerkvikから170キロ走ったアウストヴォーグ島から、ロフォーテン諸島が始まる。
今はまだ入り口にすら到達していない。
進み始めてからは大きなアップダウンが立て続けに続く。
同時に天気が崩れ始め、ポツポツと小雨も降ってきた。
実はノールカップに到達した時点で一時帰国を決意していたのであり、この頃は残り日数でできるだけノルウェーを回りたい、という気持ちで走っていた。
多少の小雨なら無理してでも走り、できるだけノルウェーを堪能できるようにしたい。
この日もその思いで雨に怯えつつも止まることなく進んでいく。
結局19時まで走り、この日107キロ走ったところで森の中に突っ込んで野宿。
鹿の糞がやたらと多くてミスったと思ったが、一度野宿場所を決めて突っ込んだら基本的には私はそこから動くことはしない。
だって面倒くさいじゃん。
糞だけに。なんてね・・・。
(Bardufoss南西20km→Bjerkvik南西40km)