「あなたの名前は?」~Bardufoss南西20kmまで

Oteren〜Bardufoss南西20km
5/30 (740days)

5/30
昨晩と今朝は雨。
前日に見た天気予報では、この日は晴れになるんちゃうかったんかい・・・と。

しばらくテントで待機して、雲の隙間から青空が見え始めたタイミングで撤収を開始し、自転車のチェーンにオイルを注してから出発。
この頃には雨も上がってくれた。
IMGP6565


16キロ走り、Nordkjosbothという集落に到着。
ものすごく小さな集落なのだけれども、大型スーパーが2軒もある不思議。
雲行きが怪しいため、スーパーで買い物がてら休憩していく。

ちなみに、ヨーロッパではいくつもの会社のスーパーが乱立しているが、私は圧倒的にCOOP(コープ)を支持している。
全体的に少し値段は高い気がするが、日本メーカーのインスタントラーメンを取り扱っているためだ。

海外メーカーと違い、日本メーカーの物インスタントラーメンは麺の美味しさが違う。
食べ比べてみると、感動するくらい、麺のコシが違う。
たかがインスタントラーメン、されどインスタントラーメンなのだ。

南米以降、朝食は必ずと言っていいほど、インスタントラーメンと白米の組み合わせでやってきた。
腹持ちも良いし、運動前に炭水化物を多めにとれるため、エネルギー効率もいい。
そして折角なら、毎日食べるものはやはり美味しい物を選びたい。
ということで、私はCOOPを選んでいる。

今はガソリンストーブが故障しているため、ラーメンは買わないのだが、COOPのプライベートブランドのクッキーが美味しいため、今でも買い物はCOOPでしている。
IMGP6566
一時間弱スーパーで休憩して、雲が少し薄れたので出発。
IMGP6568
Nordkjosbothを出てしばらくフィヨルド沿いを走った後は、内陸へ向けて上り坂が始まる。
長くだらっと続く上りで、天気も晴れ出したため、気温も体温も一気に急上昇。
玉の汗が顔から頭から吹き出してくる。
IMGP6571
Nordkjosbothから走る事30キロ、ようやく峠の頂上に到着。
土産屋があるパーキングエリアで、ベンチもあったため少し休憩。

私が到着して間もなくして、荷物を多く積んだ一人自転車旅行者がやってきて、声を掛けてきた。
オランダ人の初老の男性で、白い口ひげがチャーミングだ。

自転車旅行者同士、出会えば当然「これまでどこ走った?これからどこへ行く?」という話になる。
しかし、このサイクリストはそういう話はそこそこに、自分の自転車の話をし出した。

見てみると、確かにもの凄いテクノロジーが彼の自転車には搭載されている。
前輪にはダイナモがあり、回転で電力を生んでステムから携帯電話を充電できるシステム。
金属のチェーンではなく、ゴムベルトを搭載。
変速はハブ内部で行うシステム。

他にも上げれば切りがない程、最新のシステムを搭載している。
そういう話を一方的に30分以上もされると、こちらもうんざりしてくる。
はっきり言って、自慢にしか聞こえないのだ。

もちろん私だって他の自転車旅行者の自転車には興味はある。
ただ、それよりもやはり「これまで走ってきた道」の話を聞く方が興味があるし、価値がある。

「もうさっさとどっかに行ってくれないかなぁ・・・」と思い始めた頃、ようやく彼の自転車談義は終わった。
「一緒に行くかい?」みたいな雰囲気だったが、「ここで昼食を食べて休憩してから行くよ」と断り、彼を先に行かせ、ようやく一人になることができた。
IMGP6572
昼休憩から道は下り坂となり、ペースは一気に上がる。
休憩場所から30キロ程走り、Bardufossという町に到着。

小さな集落なのだが、実は前日からこの町にはある期待をもって、向かっていた。
オフラインマップを見ると、この町にはアウトドアショップが2つあるのだ。

まずは大きい方のショップに向かってみると、(北欧基準では)いい品揃えで、ヨーロッパ出身の自転車旅行者が好んで使うPRIMUS社のガソリンストーブも置いている。
しかし残念ながら、私が使用しているMSR社のガソリンストーブは取扱いがなく、ガスストーブも取扱いが無かった。

もう一つの小さなショップにも足を運んでみる。
こちらはハンティングと釣り用具をメインに取り扱っている。
IMGP6574
こちらはガソリンストーブは取扱いがないが、ガスヘッドが置いてある。
値段は4,000円程。痛い出費だが、これで暖かい食事がとれるなら安いもんだ。
IMGP6573
さっそくこの日の夕食となる食材をスーパーで買い、ウキウキ気分で出発する。
IMGP6576
上機嫌で進んでいると、後ろからまたあのオランダ人初老自転車旅行者が現れた。
いつ抜いたんだ!?

ストーブを買った話から、「じゃあ今日は料理をシェアしないか?」という話を彼が持ち掛けてきた。
正直あまり得意な人物ではないのだが、こういう話は断り方が非常に難しい。
結局、今夜は一夜を彼と過ごすことになりそうだ。

はぐれてはいけないと思い、並走するのだが、彼のペースがかなり早い。
他人にペースを乱されるのは嫌だし、それに私は風景の写真を撮りたい。
並走することを止めて自分のペースで走り、好きな場所で止まって写真を撮ったりしていた。

「You are so slow(随分ゆっくりだね)」

カッチーン。

「僕が遅いわけでも、あなたが速いわけでもない。サイクリストにはそれぞれのペースがある」

それくらいの事は、長く自転車旅行を続けているなら誰もが分かるはずだろうが・・・という言葉までは流石に飲みこんだが。
IMGP6577
その後しばらく走り、ベンチ付きのレストエリアという最高の条件の野宿場所が見つかった。
両者合意でここで野宿することに。

まずはお互いテントを立てたのだが、彼のテントは見目は綺麗だが、かなり年季が入っているように思える。
聞いてみると、お父さんから譲り受けた物で、「もう50年は使っているだろう」とのこと。

テントを張り終え、食事を作っていると、彼は骨董品の様に古いガスストーブを引っ張り出してきた。
これもお父さんから譲り受けたという。

親子代々、何かを受け継ぎ、それを大事に使うというのは非常に素晴らしいことだと思う。
これをきっかけに私も彼に心を許せるようになり、お互いのキャンプ用品や旅行の話、旅行をする前のことなど、話が弾む。

しばらく話をしていると、この人の名前を知らないことに気付いた。
正確には、お昼に出会った時にお互い自己紹介していたのだが、印象が悪くてすっかり忘れていたのだが。
やはりその人に興味を持つと、名前を知っておきたくなる。

「すみません、もう一度あなたの名前を教えてください」

「アットだ」

アットとは、オランダの神話に登場する「喋る馬」の名前らしい。

確かによく喋る爺さんだったわ。
うるせぇったらありゃしない。親父のテントで暖かくして寝ろよ、爺さん。
IMGP6578
 (走行ルート:Oteren→Bardufoss南西20km)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です