ヨーロッパ最北端・ノールカップに到着〜Nordkappまで

Russenes北63km〜Nordkapp
5/23 (733days)

5/23
昨晩は遅くから雨が降り始め、次第に嵐へと発展して暴風まで吹き始めた。
私が今使っているテントは非自立式で、本体はオールメッシュ。

もちろんレインカバーは掛けているが、ちょっと強い風が吹けばレインカバーはめくれ上がり、雨がどんどんテントの中に侵入してくる。

起きた頃には寝袋から何からびっしょり濡れていて、げんなりした気分で一日の始まり。
遮蔽物が一切無い丘の上というのもあると思うが、南米・パタゴニア並みの暴風だった。
IMGP6263


暴風と雨が収まるのを待ち、10時半過ぎに出発。
IMGP6265
 すぐに雨に降られて何の意味もなかったけど。
IMGP6267
IMGP6273
 しばらくフィヨルド沿いを走って・・・
IMGP6276
お、見えて来た。
ノールカップを目指すサイクリストには有名な、海底トンネル。

ノールカップはスカンジナビア半島上にはなく、マーゲロイ島という島の最北端にある。
ルートは一本道で、ノールカップを目指すにはこの海底トンネルは避けて通ることができない。
IMGP6277
海底トンネルのため、入口から下りが始まり、ちょうど半分から上り返しが始まり出口に通じるという、V字の様な内部構造になっている。

その内部構造の特殊さも去ることながら、特筆すべきはその坂道の斜度。
9%といえばかなりキツイ角度で、車でも馬力がない軽自動車ならスピードが出ずにノロノロとしか走れないくらいだろう。
IMGP6278
長さも破格の7キロ弱。
昨日出会ったポルトガル人カップルサイクリストが、「トンネル内でトラックが通過する時は、それはもう飛行場かと思う程の騒音と風圧だったよ」と言っていた。

もちろんそんな道は走りたくないのだが、ルートが一本しかないのなら仕方が無い。
覚悟を決めてトンネルへと入って行く。
IMGP6281
最初は先ほど言った様に下り坂なのだが、薄暗い中での9%の下り坂、速度は一気に時速50キロに達し、恐怖を感じながらトンネルの底へ進んで行く。
IMGP6282
あっという間に底に達し、残り3キロから上りが始まる。
トンネル内にはフルパッキングの自転車でもはみ出ない路側帯があり、轢かれる心配は無くて助かった。

ただ、海底トンネルということもあってか、所々壁や天井からしみ出した水が路肩を濡らし、そこに溜まっていた砂が泥状になり、かなりスリップする。
上りの斜度も9%できつく、汗だくになりながら進んで行く。

結局6kmのトンネルを抜け出るのに1時間弱掛かった。
IMGP6283
トンネルの出口が見えてからも中々辿り着くことができず、外に出られた時は心の底からホッとする想いだった。

ちょうど天気も回復したタイミングで、この日初めて太陽が姿を現している。
トンネル出口の側にあった小屋の陰に自転車を立てかけ、最近の悪天候で湿りきった寝袋を干すついでに、昼食休憩を取る。
IMGP6288
ただ北欧の空は、そんな僅かな休憩のひとときも、長くは許してくれない。
休憩から15分もしない内に、あっという間に雲が空を埋め尽くし、みぞれが降って来た。

慌てて寝袋を収納し、レインウェアを着て・・・雨に対する準備を終えた頃には、太陽がまた現れた。
本当に、目紛しく天気が変わる。
体感では10秒、いや5秒先には天気がどうなっているか分からないと思える程。

トンネルを過ぎてからはアップダウンが続き、14時半頃、Honningsvåg(ホニングスボーグ)に到着。
このHonningsvågがノルウェー国内最北端の都市であり、ノールカップ手前最後の補給地点。
都市と言っても人口2,000人程度の小さな街なのだが。
「都市の定義ができる前に都市を名乗ったから、都市」という、なんかある意味もの凄い事がwikipediaに書かれている。

ちなみにHonningsvåg手前にはもう一つ、4kmの長いトンネルが。
入口前の標識が「400メートル」と書いてあったと思ったのだが、全然出口に辿り着かず、トンネル内で慌ててフロントライトを点灯させた経緯がある。

出口側の標識を確認してみたらしっかり「4000メートル」と書かれていた。
標識の確認は、しっかりと。
IMGP6294
このHonningsvågでノルウェー初の買い物。
クッキーが400円、牛乳が200円。ここではそんなにがっつりと買い込んでいないので何とも言えないが、やはり高い気がする。

買い物を済ませると、時間は15時。
ノールカップまでは残り31キロ。

どこかで野宿し、翌日に改めて・・・ということも考えたのだが、30キロならどれだけ遅くても18時には着くだろう。
そう思い、第一次ヨーロッパ走行におけるゴールへ向け、走り始めた。
IMGP6297
ここからがまぁ〜キツかった。
斜度のキツい上りが、長く続く。
IMGP6301
IMGP6302
走っても走っても、上りが終わらない。
道は曲線を描いて続いているため、どこが上りの終わりなのか、知る事ができない。
IMGP6307
後ろを振り返ると相当に上って来たはずなのに・・・
いつ終わるんだよこの上り坂は?ここは南米か?
IMGP6311
ようやく上りの斜度が緩くなり、平原の様な視界が開けた所に出てくると、見渡す限り一面、雪化粧。
ここまで上り続けてきたため、まるで自分が雲と同じ高みまで到達し、雲の上を走っている気分にさせられる。

雲の上を一筋の道が、曲線を描きながら緩やかに、更に高みへと伸びている。
「あれ?この道は天国へ向かっているんじゃないか?」とすら思えてくる風景。
IMGP6318
IMGP6315
IMGP6304
緩い上りも終わり、一気に下りが始まる。
「これを下りきったらノールカップだな」と思っていたのだが、下りきった先でこの上り坂が見えた時は、諦めて野宿しようかなと考えたくらい。

先ほどの上り坂で削られた今の体力では、あまりにも酷で長過ぎる坂道。
ただ、もうこの辺りは僅かな草すら生えていない不毛の地。
テントを張る場所などなく、進むしか無い。
IMGP6323
ここの上り坂は、久しぶりに心が折れそうになった。
足を止め、クッキーを食べて一息ついて・・・というのを何度繰り返しただろう。
IMGP6324
とうに18時を回り、19時になろうかという時間。
前方に人工物が見えた。
あれだ、間違いなく、あれがヨーロッパ最北端・ノールカップだ。
IMGP6326
最後の気力を絞り、ノールカップの入口に到着。
料金所があり、キャンピングカーに並んで私も列に加わる。

私の番になると、料金所のスタッフは「おめでとう!」と祝福してくれ、嬉しい事に「自転車は入場無料だよ」とのこと。
更に嬉しい事に、「お腹がぺこぺこだよ」と私が言うと、彼の夜食のバナナとリンゴを分けてくれた。

彼の他にも何人かのキャンパーに祝福されつつ、モニュメントへと向かう。
他の所より僅かに海へ突き出た場所に、地球儀を思わせるモニュメントがぽつんと立っている。

こんな小さな、特別綺麗でもないモニュメントに、なぜわざわざ自転車で来ようと思うのか?と思う人もたくさんいると思う。
私も、なんでこんな所に来たいと思ったのか、自分でも分からない。

自転車乗りというのは不思議な生き物で、端っこや高い所が好きなのだ。
特に、道がそこで途切れる「最北端」や「最南端」などは、走りきった満足感、充実感を感じる事ができるから、だと思う。

また、美しい場所は世界に数えきれない数あるものの、「最東西南北端」や「最高峰」というのは尺度次第だが、大陸という括りにしてしまえば数える程しかない。
そういうことも、自転車乗りが惹かれる理由だろう。

このノールカップも、私にとって特別な思い出として、記憶の中に収まった。
IMGP6335
到着した頃には濃い雲で覆われていた空が、徐々にその雲が晴れ、太陽が姿を現した。
黄金色の柔らかな陽射しが、岬を照らす。

岬の向こうには当然、それ以上陸地はなく、水平線が広がるばかり。
その水平線に浮かぶ太陽。

その太陽は、いつまでも沈まないんじゃないだろうか・・・と思えてくる程、ゆっくりとした時間が、この時間のノールカップには流れている。
IMGP6351
IMGP6352
事実、夏がもう少し進めば本当に太陽が24時間沈まない時期があるらしい。
この日も0時を回っても夕方の様な明るさで、3時頃にならないと太陽は沈まないとのこと。
IMGP6359
しばらく太陽を見つめた後、レストランの軒下でテントを設営していると、一代のバイクがすぐ側に止まった。
ほとんど空身でモトクロスの様なバイクだったので、「地元民かな?」と思ったのだが、日本語で声を掛けられたものだからビックリした。

西岡さんはバイクで旅行をされていて、南米を走り、今はヨーロッパ、ここからはロシアを横断して日本へと帰る旅行を、もう何年もしているという。

料金所で「日本人自転車旅行者が来たよ」と言われ、わざわざ私を捜して声を掛けて下さったのだ。

その後、レストランのビールをごちそうになり、ノールカップ到達を祝福して頂いた。
こうした出会いもまた、特別な思い出を彩ってくれる。

とにかく、これにてヨーロッパ最北端到達!
IMGP6340
IMGP6342
まだもうちょっとだけ、ヨーロッパ編は続くんじゃよ。

(走行ルート:Russenes北63km→Nordkapp)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です