その時頭に浮かぶものは~Rio Grande南60km

San Sebastian南東k5m~Rio Grande南60km
3/11 (660days)

3/11
昨晩降っていた雨は朝には上がり、青空が広がっている。
野宿した場所からは大西洋が見えており、その水平線は丸みを帯びてどこまでも続いている。
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フエゴ島のアルゼンチン領に入り、San Sebastianからの道路標識に、Ushuaiaの名前が出るようになった。
Ushuaiaまでは残り300キロを切っている。
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もちろんUshuaiaまでの距離と言うのはこれまでにも分かっていたし、南北アメリカ大陸縦断がそろそろ終わるのも分かっていた。
ただ、実感は伴っていなかったように思う。どこか他人事というか。

それが、この標識を見て一気に「あ、アメリカ大陸終わるんだな」という実感が湧いてきた。
日数で言えば、3日間もあればUshuaiaには到着するだろう。

そう実感が込み上げてくると、これまでに走って来て印象に残っている風景が頭に思い浮かんできた。
アラスカから始まり、カナダ、アメリカ合衆国本土、メキシコ・・・中米に南米・・・南米だとペルー、ボリビアが特に印象深い。

次に思い浮かんだのは、その道中に出会った人達。
まず頭に思い浮かんだのは、ユーコン準州でホームステイさせてくれたDave。
息子の様に、本当に良くしてくれた。

それを皮切りに、「あぁ、あの人にも助けてもらったな。この人にも。そういえば、こんな人にも出会ったな。」と、私に良くしてくれた人の顔が次々と思い浮かんでくる。

人は、何かを「片時も忘れない」というのは、不可能だと思う。
受けたご恩にしろ、家族、友人のことにしろ、何にしろ。

日々生きている時間は「現在」であり、目の前にあるのは「現実」である。
「過去」に生きているわけでも、「思い出の中の家族や友人」と常に顔を合わせているわけでもない。
「現在」や「現実」に生きて直面している時、「過去」や「思い出」は頭にはない。

でも、ふとした時に、何かの拍子に「思い出す」ことはあるとは思う。
この時が、まさにその時だった。

本当に、多くの人に良くしてもらった。
私はただ、自転車で遊んでいるだけなのに。
中には別れの時、泣いてくれる人までいた。
私はただ、自転車で遊んでいるだけなのに。

旅行中に受けた恩を返すのは無理だろう。
その分、思いっきり遊んで楽しんで、無事に目的地に着いて「楽しんでます!」と報告できるのが、せめてものお返しだろう。

今やっと実感した。
アメリカ大陸も、もう終わりだ。
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少しそんなセンチメンタルな感情になったしばらく陥った後、また「現実」に戻り、走行に集中して進んで行く。

76キロ走り、Rio Grandeという街に到着。
最果てのフエゴ島にあって、割と大きめの規模だ。
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少し食料を買い足しておこうとスーパーに入り、フルーツやパンを購入。
水も残り少なくなっていたため、蛇口の水をもらえないか、スーパーの人に声を掛けた。

「すみません、ボトルに水をもらえませんか?」
帰って来た返答はよく分からないのだが、どうやら「OK」と言ってくれているらしい。
ありがたい。

そして手渡されたのが、売り物になっている商品のペットボトルの水。
こりゃ言いたいことが伝わっていないな、と思い、「お金がないので、蛇口の水でいいです」と言う。
帰って来たのは「いいのよ!お代はいらないから持って行って。」という言葉。

よく分からなかったけど、「私が日本に行ったときは良くしてね!」という事を言っていた気がする。
私から日本人だと名乗らなかったのだけど、「Japones(日本人)がどうこう」と言っていたので、多分そういうことだろう。
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水ばかりでなく、カフェラテまで持たせてくれた。
きっとこの時の事も、ふとした時に思い出すんだろうな。
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スーパーの人にお礼を言い、Rio Grandeから更に南下していく。
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大西洋沿いに進んで行く。
途中立ち寄った浜辺では、多くの人が浜辺からルアーなのか餌なのかを投げ込んで、釣りを楽しんでいる。
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沿岸を離れて少し内陸に入ると、再び平原のみが広がる。
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120キロ走った所で、平原に掛かるフェンスが倒れているのを発見し、そこから自転車を突っ込んで丘の影に隠れる。
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車から見えない場所でテントを張る。
翌日は恐らく室内で泊まれる場所の目星がついているし、その次の日はUshuaia到着予定。
このテントも、この日を最後に引退だろう。

小さい穴だらけでファスナーも全部壊れてしまったが、そんな酷使にもよく耐えてくれた。
パタゴニアの何もない平原でのテント泊。
これもまた、ふとした時に思い出すだろうな。
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(走行ルート:San Sebastian南東5km→Rio Grande南60km)

コメント

  1. アメリカ大陸、自然が素晴らしくキレイで、毎回写真の美しさに感動してました。でも、やっぱりパタゴニアですね!絶対行こうと思います。何となく南米は危険なイメージもあり、命に関わることが無くて良かったなぁとちょっとホッとしてます。次の大陸も期待してます。

  2. 素晴らしい。文章と写真。最高。ウシュワイヤを期待です。正月前後1ヵ月の生活でした。

  3. アメリカ大陸は本当に自然が豊かで、そのスケールの大きさにはいつも驚きと感動がありました。
    南米は確かに気を引き締めていないと、もしかしたら・・・という雰囲気はありました。
    身の安全に関しては当然運も絡んでくると思うので、「私は運が良かったんだ」と思うようにしています。
    ただ、人懐っこさというものに関しては、南米の北部地域は特にフレンドリーでしたので、交流という面でも楽しめると思います。
    > アメリカ大陸、自然が素晴らしくキレイで、毎回写真の美しさに感動してました。でも、やっぱりパタゴニアですね!絶対行こうと思います。何となく南米は危険なイメージもあり、命に関わることが無くて良かったなぁとちょっとホッとしてます。次の大陸も期待してます。

  4. 正月付近のウシュアイアというとまさに夏の時期でしょうから、過ごしやすかったでしょうね。
    この時期はもう秋で寒かったので、羨ましい限り限です。
    > 素晴らしい。文章と写真。最高。ウシュワイヤを期待です。正月前後1ヵ月の生活でした。
    >

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