街道を往く~Villa Manihuales南東11kmまで

Piedra del Gato東22km~Villa Manihuales南東11km
2/11 (632days)
2/11
起床は7時。
大体起きてから1時間半から2時間くらいの間に出発するのが、今までの経験で作られた習慣。
アウストラル街道の脇道には、いくつもの焚き火の跡がある。
過去に旅行者が作った石組みが、そのまま受け継がれて使われ続けているのだろう。
昨夜私が野宿した場所にも石組みがあり、最近にも誰かが焚き火をした痕跡が残っていた。
それを見ていると私も無性に焚き火をしたくなり、まだ雨に濡れている木や草を集めて燃やそうとしていたのだが、中々火が大きくならない。
悪戦苦闘しつつ、気が付いた時には起きてから3時間以上経った10時過ぎになっていた。
私が火起こしがヘタなんじゃないんだ・・・これまで降り続けた雨が悪いんだ・・・
まぁ、本当にキャンプ能力が高い人なら、これくらいの湿り気なら余裕で火を起こせるんでしょう。
自転車旅行をしていると、たまに話す日本人旅行者の人からは「毎日キャンプしている人」と思われることもあるのだけれども、決してそんな事はなく。
普通に自転車旅行をしている分には、キャンプ能力など一切必要なくできてしまう。
火もストーブで起こせるし、ロープの結び方を知らなくても困ったことなど一度もない。
ただ、そういう知識や能力があれば楽しみ方の幅が広がるというのも、また自転車旅行だろうとも思う。
特にここ、アウストラル街道はそういったアウトドア知識を発揮するのには最高の場所でしょう。
そこら中に山があり、湖があり、川があり。
そしてそれらはフェンス等で囲まれず、むき出しで、間近に存在している。
特に釣りが好きな人なんかには、最高の環境なんじゃないだろうか。
早朝から早速の上り坂。
冒頭で10時過ぎに出発と書き、いかにものんびりし過ぎて遅刻した、みたいな雰囲気を出しましたが、最近ではそれくらいの出発時間が当たり前になってきた。
というのも、この時期のパタゴニア地方は日没が21時と遅い代わりに、日の出も遅い。
7時半くらいにようやく陽が照り始めるので、8時9時とかだとまだ寒い。
10時から11時くらいからようやく暖かくなり始める。
この日も寒くて、上り坂を走っているのにウィンドブレーカーを着ていたくらい。
坂を上り切り、下った先には湖が。
雪山に囲まれた湖で、静かでとても美しい。
自然に感じる美しさとは、もちろん視覚的なものは重要だけれども、音も非常に重要だと思う。
車や人工物が発する音なんかは、自然の風景とは全く調和しないというのは、体をむき出しにして走る自転車旅行をしていると顕著に感じる。
こういう風景は、全くの無音か、風の音や鳥たちの鳴き声が自然と耳に入ってくる状態で眺めることで、感動具合が何倍にも膨れる。
車の場合、外にも内にも騒音巻き散らかす箱に乗っているようなもんなので、この風景を見ても視覚的な情報でしか、その美しさを感じられないだろう。
しばらく湖沿いを走った後は、牧草地に入り、ほとんどアップダウンの無い中を進んで行く。
天気が良いのが大きいのだろうけれども、昨日の夕方以降から明らかに景色が良くなり始めた。
そう考えると、いいタイミングで雨の周期にぶち当たっていて、いいタイミングで晴れの周期を迎えたのかもしれない。
普通に走っていてこの風景。
本当いい区間、いいタイミングで晴れてくれたわ。
15時半頃、Manihualesという集落に到着。
食料に余裕はあるけれども、補給食のクッキーだけ商店で買い足すことに。
このManihuales以降、分岐があり、道は二手に別れる。
最終的には合流し、大きめの街であるCoyhaiqueへと到達するのだが、一つはアスファルト舗装された道。
もう片方は未舗装路だが、その分距離が短くなる道。
私は直前までどちらに行くか決めていなかったので、こういう時は地元の人に聞くのが一番だろうと、Manihualesでクッキーを買うついでに商店のおばさんに尋ねてみた。
「分岐の道って、景色はどっちの方が美しいですか?」
「未舗装路の方が景色は良いわよ。でも、山道で大変だからねぇ。アスファルト舗装の方が良いわよ、簡単にCoyhaiqueに着けるわ。」
ふーん・・・
じゃあ、当然こっちを選ぶでしょう。
今さら未舗装路が回避理由には全くならないし、最終的に合流するなら景色が良い道を当然選ぶでしょうよ。
そもそも、アウストラル街道というのはチリ国道7号線の通称なのですが、アスファルト舗装の方はその本線からは外れた別の道になってしまう。
この未舗装路の方が7号線であり、街道の本線なわけです。
後は、思った以上に交通量が多い車にも自転車にも辟易していたので、できるだけ人が通らない方を選んだというのも大きな理由。
実際、この分岐からガクッと交通量が少なくなって、自分一人だけが街道にいる気分に浸れるので心地いい。
夕方を過ぎて日没間近になると、暴風が吹き始めて寒くなり始めた。
ちょうど橋桁に隠れられそうな場所があり、ここで風を凌ぎながら晩ご飯を作り、日没したら河原でテントを張るつもりでいた。
・・・飯は食い終わったけど、日没まで待ってられん。寒すぎる。
ということで、自転車だけ橋桁に残して河原でテントを張る。
こんな所で治安の不安なんか全くねぇだろ。
ちなみに、この河原にも焚き火後の石組がしっかりと残されていた。
(走行ルート:Piedra del Gato東22km→Villa Manihuales南東11km)