退屈道中膝痛ゐ~Puerto Monttまで

Santiago~Puerto Montt
1/22~2/2 (612~623day)

Patagonia(パタゴニア)という言葉をご存知だろうか。
同名の大手アウトドアブランドの存在により、日本でも多くの人が知っているだろう。

本来パタゴニアとは、南アメリカ大陸の南緯40度以南、チリ・アルゼンチン南部の地域のことを言う。
パタゴニアには氷河、湖等の美しい自然が残る一方、年間通じて猛烈な風が吹き荒れ、厳しい一面も持ち合わせているという。

そしてそのパタゴニア地域には、Carretera Austral(アウストラル街道)という「世界で最も美しい街道」と呼ばれ、サイクリスト達の憧れとなっている道が存在している。
当然私もそんなサイクリストの一人であり、このアウストラル街道を走る事を、日本に居る時から夢見て来た。

Santiagoからアウストラル街道の入り口となるPuerto Monttまでは約1,000キロ。
10日もあれば、遂にその憧れの街道の入り口前に到達できるだろう。
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ところがその1,000キロ、まぁーつまらん訳です。

「大成功の前には必ず大敗があるわけよ」
という私の好きな言葉に従うなら、世界一美しい道の前には糞つまらん道がある、というのも頷けるのだが、それにしてもつまらな過ぎる。

というわけで、Puerto Monttまでの10日間と、そこで過ごした3日分をざっくりダイジェストでどうぞ。

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走る道はチリの国道5号線。通称Pan American Highway。
このハイウェイは、アラスカから南米最南端まで延びる幹線道路のことを指す。
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それだけ切り取れば凄い壮大な響きに聞こえるのだけれども、要はただの高速道路なわけで、車はびゅんびゅんうるせぇわ、景色は退屈だわで、良い所がない。
各国の道路に通信簿を付けるなら、ボコボコに書いてやりたい。
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101キロ走り、レストエリアで終了。
約1か月振りにガソリンストーブを使った事が、この日唯一テンションが上がったことだろうか。
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ちなみにこのレストエリア、「テントを張っちゃダメ」と日没後に言われ、泣き落としして建物の裏に寝袋だけ敷かせてもらい、青空野宿をする破目に。
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小麦の栽培も盛んなチリ。
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「Al SUR DE ALASKA(アラスカから南へ・・・)」
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78キロ走り、ガソリンスタンドのShellでテントを張らせてもらう。
この5号線、ガソリンスタンドが大体100キロ置きという絶妙な距離に設置されているため、水の補給にはほとんど困らなかった。
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この日の走行風景が全く記憶にない。
覚えているのは、途中のスーパーで食料を買い足し、バス停で1時間くらい昼寝したことくらいだろうか。
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120キロ走り、集落の中にある廃線の駅舎で野宿。
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この日走行中、日本人サイクリストの和田さんという方に出会う。
存在はTwitterで知っていたのだが、私の大分後方にいるはずだったので、まさか出会うことになるとは思っていなかった。

日本人には珍しく、荷物は後ろの2サイドバックのみの超軽装スタイルで、自炊道具もないとのこと。
元々ロードバイクを乗っていたらしく、路肩が広くてフラットなこの5号線は、スピードに乗りやすくて楽しいとの事。
なるほど、確かにそういう視点からなら楽しいのかもしれない。

話を聞いてみると1日250キロ走ることもあるそうで、余りのペースの速さにびっくりした。
その後少し話をして、さようならの挨拶をした後はあっという間に視界からいなくなってしまった。
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118キロ走り、Chillanという街にあるガソリンスタンドのCopecでテントを張る。
チリの犬はおとなしく、人懐っこい。
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南に下るにつれてはっきりと気温が下がり、朝はウィンドブレーカーと手袋をしないと寒くて仕方がなくなってきた。
そしてこの日以降はアップダウンが増え、ペースも思ったよりも伸びない。

ちなみにこの5号線、ヒッチハイカーが非常に多い。
向こうは笑顔で挨拶してくれるので何とも思っていないだろうが、正直、すれ違う時に非常に気まずい。
車が止まって交渉中の時に出会ったりしたら、尚気まずい。

「お前も自力で走れよ」と言われて交渉決裂、なんてなりゃしないか・・・流石に考えすぎか。

114キロ走り、Los AngelsにあるガソリンスタンドのCopecでテント泊。
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走行前に自転車をチェックすると、後輪がパンクしている。
5号線は全面舗装路で走りやすくはあるのだけれども、交通量の多さもあり、バーストしたタイヤ片がそこら中に散乱している。

パンクの原因で多いのは、そのタイヤ片から飛び出たワイヤーや金属であり、いくら気を付けて避けていたとしても、こんなに小さな破片を全て避けられるわけもなく。

5号線では結局4回もパンクすることになった。
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南下するにつれ、景色は少しずつ良くなってきたように思う。
背の高い針葉樹が並ぶようになり、その風景は北の最果て、アラスカやカナダに帰って来たのかと思わせる。

最南端に近づくにつれ、最北の地を思い出すというのは何だか趣があるなぁ、と感じ入りながら走っていた。

127キロ走り、LautaroのガソリンスタンドのCopecでテント泊。
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針葉樹の森に混じって、雪山も現れ始めた。
富士山によく似ている。

106キロ走り、LoncocheのCopecでテント泊。
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走っていて退屈だとよく歌を口ずさみながら走るのだが、流石にこうも退屈な道が数日間も続くと、同じ曲にすぐ戻ってきてしまう。

というよりも、知っている歌がどんどん頭から抜けて行っているのか。
そういう所からふと、自分がどれだけ日本を離れているのかを実感する。

この日は午前中はフラットだったのだけれど、午後からはアップダウンがきつく、また一つ一つのアップが長くてしんどい。

119キロ走り、対向車線にあったガソリンスタンドで野宿。
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この日も朝からアップダウンの繰り返し。
途中、バス停で昼寝をして気付けば1時間半も経っていた。

昨日の野宿場所からPuerto Monttまでは残り160キロ程の距離。
その間にはガソリンスタンドはなく、この日の就寝場所を見つけるのは困難を極めた。
国道5号線の路肩は基本的にフェンスが途切れることがないため、ガソリンスタンドでもなければ野宿のしようがない。

120キロ走り、Frutillarの町に到着。
野宿できる場所を探すも、できそうな場所にはホームレスが居付いている。

人に尋ねてキャンプ場を見つけ、5,000ペソ(約1000円)で投宿。
街に到着した時、寒くなって上着を取り出したのだが、その時に鞄を開けっ放しにしてしまい、走行中に寝袋のインナーシーツを紛失してしまった。

探すために来た道をウロウロしたが見つからず、へとへとになって散々な一日だった。
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Santiagoから1,000キロ到達。
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この日は45キロであっさりPuerto Montt到着。
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目星を付けていたバックパッカーホステルはキッチンが使えないということで、他の安宿を紹介してもらうも、そこも予約が埋まっているということでたらい回しにされていく。

結局、看板も出ていない民家の2階部分がホステルになっている民宿に辿り着いたのだが、老夫婦がやっていて非常に居心地が良かった。
Puerto Monttは観光地らしく、この安宿自体も12,000ペソ(約2,200円)と高いのだが、休養も含め3泊することにした。

もちろん老夫婦も住んでいるため、キッチン等は共用。
要はただのホームステイなわけです。
この老夫婦が優しくて、洗濯機も貸してくれて洗濯することができた。
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Puerto Monttは規模は小さいが、主要な施設は一通り揃っており、大型ショッピングセンターもある。
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沿岸にある謎オブジェ。
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Puerto Monttからは、いよいよアウストラル街道へと突入することになる。
楽しみだ。

(走行ルート:Santiago→Santiago南80km→Talca南40km→Chillan→Los Angels→Lautaro→Loncoche→Pailaco南10km→Frutillar→Puerto Montt)

コメント

  1. 素晴らしい。昔の回想です。ありがとう。

  2. パタゴニア、私もいつか行きたい場所です。ゆっくりと大自然を満喫したいので、なかなか仕事しながらでは行けないなぁ。なので、パタゴニアの投稿ものすごく楽しみにしてます!

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