過酷!シコ峠・・・のはずが~Socaire南70kmまで

Socaire~Socaile南70km
12/15 (574days)
12/15
昨夜は使われなくなった古い教会の軒下でテントを張らせてもらったのだが、どうやらここがツアーの観光名所らしく、朝から立て続けに2台も乗り合いバスがやってきた。
ガイドの説明を受けながら教会の見学している多数のツアー客の脇で、ガソリンストーブを使って自炊している日本人サイクリストが2人。あまりにもシュールだろう。
お互い、「こいつら邪魔だなぁ」と思っていることだろう。というか、私は完全に思っていた。
かつ昨夜キャンプしたSocaireからしばらく走るとアスファルト舗装がなくなり、未舗装路になるということは、先輩日本人サイクリスト達のブログで確認していた。
Google Mapのストリートビューでも、Socaire以降はブツッと画像確認が途切れるため、確かに未舗装路なのだろう。
Atacama以降、ルートの選択肢は大きく二つあった。
このシコ峠を越えてアルゼンチンに入国して何かするか、Atacamaからチリの沿岸へと出て南下する、というルート。
沿岸側はチリのメイン国道のため、アスファルト舗装がずっと続くことになる。
沿岸ルートの方が楽で、シコ峠は少し厳しい走行になるのは明白。
では何故わざわざ厳しい方を選んだのかと言うと、「沿岸ルートは糞つまらない」という事を、ペルーでの走行で嫌という程分からさせられたからだ。
これは飽くまでも「私の感覚」なのであり、もちろん沿岸を走るのが好きなサイクリストもいるだろうが、私は面白いとも、海の景色が綺麗だとも思えない。
厳しいアンデス山脈での走行中に見る景色は雄大そのもので、かつ峠を上り切った時の快感という物は病みつきになるものがあった。
そういうことで、如何に楽な道だろうとも沿岸沿いを選ぼうとは思えなかったのだ。
だって沿岸って景色変わんないじゃん。
まぁ、山は山で同じ山を見続けることにもなるんだけれども・・・
角度が変わるとまた見える形が変わるのが良い。
何といっても、標高が上がると暑くないし。
Socaireから走ること14キロ、標高を500メートル上げて3900メートルに達した。
ここからアルティプラノ(高原地帯)に入り、上りではなくフラットな道が続く様になった。
アスファルト舗装で滑るように走れ、周りは私の大好きなアンデス山脈に囲まれている。
こんなにも何のストレスも無く、純粋に走る事が気持ちいい道は、いつ以来だろうか・・・
しかしそれも束の間。
Fin Pavimendado(舗装路終わり)の看板が、後1キロでアスファルト舗装が終わる事を告げている。
あぁ、諸行無常・・・
正直言うと、山は好きだけど未舗装路はもうお腹いっぱいで、当分走りたくはなかったんだよなぁ・・・。
あ、あれ?アスファルト舗装が続いている?何で?
ここで、Atacamaのイミグレーションオフィスの職員が言った「3年前にシコ峠に新しくチリ側のイミグレーションオフィスができた」という言葉を思い出した。
そうか、イミグレーションオフィスができたということは、それだけそこを越える旅行者からの需要が高まったからで、交通量も増えたから大幅な道路工事がされたのか。
3年も経てば、色々と状況は変わっていくらしい。
この時の心境としては「うはははは!アスファルト舗装じゃ!楽ちんじゃ!未舗装路?誰が走るかい!」というものであり、楽できるのであればどこまでも楽したい人間なのです、私は。
それにしても走りやすいし景色は良いしで、最高の道だと思う。
シコ峠が厳しい道というのも、今や過去の話なのだろう。
途中、私の自転車のリアスプロケット(金属の歯車)が外れたため、工事現場にて休憩。
冷えた水をもらい、休ませてもらえた。
チリの人の接し方は、どこか大人な態度が漂っている。
今までの南米にありがちだった「うぇーい!どこ行くんだよ!?」みたいな変に高いテンションではなく、静かながらも温かい。
しかし工事現場のおっちゃん曰く、このアスファルトもずっと続くわけじゃないらしい。
途中で未舗装路になるということで、アスファルト舗装は現在進行形で行われているのだろう。
後1年もすれば、恐らく全面アスファルト舗装ができるということか。
そしてその言葉通り、工事現場から程なくして未舗装路が現れた。
未舗装路だけれども、そこそこ踏み固められて走りやすいし、そもそもアスファルト舗装が復活し出して、未舗装路の方が断続的に現れる、といった感じ。
そして進むにつれて宝石の道を思い出すような、地球の原風景を感じさせる風景が増えて来た。
やだ、アスファルト舗装で快適に宝石の道みたいな風景を楽しめるとか、最高の道じゃないですか。
道自体は余裕なのだけれども、夕方過ぎから風が強く吹き荒れて来た。
おしっこしたら、下から吹きあがってくる風で顔面におしっこが掛かるなんて、初めて経験した。
余りにも強すぎるため、湖沿いの岩陰に逃げ込んで野営することに。
先人が組んだであろう石組みで三方が完全に塞がれているため、理想的なテント場。