馬鹿も煽てりゃ世界一高い道に上る~Uturuncuまで・宝石の道6&7日目

Quete Chico~Volcan Uturuncu(ウトゥルンク火山)
12/5 ~12/6(564~565days)

12/5
早朝。
全ての荷物を取り外した自転車に、背中には食料と防寒着を詰めたバックパックを背負う。
Quete Chicoから山頂付近の駐車場までは片道27キロ。
未舗装+到達標高5800メートル近く、出発地から標高差1500メートルの行程となる今回のアタック。
テントや寝袋は持たず、日帰りでのガチンコ一発勝負で挑むことにした。

出発前、濱さん、久保田さんと一緒に記念撮影。
ある意味、Quete Chicoの歴史に残る一枚ではないだろうか。
今後、日本人サイクリストが3人ここに集まり、同時にUturuncuに挑戦することなどないだろうから。
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7時前、3人揃ってアタック開始。

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サイクリストとは、自転車に乗った人間を指す言葉のはずなのだが・・・
こんな道漕げるはずがない。
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押すしかない。
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押すどころか、担ぐしかない。
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先輩方2人の心境は分からないが、私個人としては相当にUturuncu攻略を舐めていた。
「空身の自転車ならまぁ余裕とは言わないが、少なくとも乗って上ることは可能だろう」と。

空身の自転車ですら乗ることが不可能な深い砂に、阿保かと言いたくなるような斜度の上り坂。極めつけは道を分断する川。

Quetena Chicoから15キロ進んだところ、標高4600メートルにある登山道入り口のゲートに辿り着いた時には、結構な感じで疲れていた。
というか、ここからがスタートなのかよ・・・と。
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ゲートの時点で10時過ぎ。
まだ折り返し地点を少し過ぎただけに過ぎない。

頂上には時間を掛ければたどり着けるかもしれないが、キャンプ用品を持ってきていないため、下山のことも考えなければならない。

そこで14時をリミットに下山を開始する約束とし、ゲートからは各々のペースで頂上を目指すこととした。
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ゲートを過ぎればガレ場が多くなり、意外と自転車に乗れる区間もある。
・・・のだが、そうは言ってもそんなのは全体の1割程。
ほとんどはただの鉄の塊と化した自転車を押し上げているだけに過ぎない。

頂上はすぐ近くに見えるのに、九十九折れの道をいくつも上っていく関係で、一向に辿り着ける気がしない。
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ぶっちゃけ、下を向いて地面を見ながら押しているか、ただぼーっとUturuncuの頂上を見ながら押しているかで、景色に気を配る余裕などほとんどなくなってくる。
それでも、ふと立ち止まって息を整える間に自分が上ってきた方角を振り返ると、大地がどこまでも広がっているかのように感じられる。
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12時頃、標高は5000メートルに到達。
頂上付近までの距離はおよそ4キロ。
ここまでのペースを考えれば、ぎりぎり頂上付近にはたどり着けるか、たどり着けないか、といった所。

ラストスパートを掛けるため、持ってきていたパンとふかしイモを齧り、気合を入れる。
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ここからはもうほとんど無心に近かった。
タイムリミットぎりぎりのため、少しの休憩も許されず、ただ黙々と歩を進めるのみ。

不思議な事に、ここまでくるともう自分で歩いている感覚はない。
股関節にモーターでも入っているのかという風に、自分では意図していないのに足が勝手に回っている様な感覚さえ覚える。
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そしてタイムリミットの14時を迎えた頃。
昼休憩以降、ほとんど並走していた濱さんと「どこで引き返そうか」なんて相談しながら上っていたのだが、ちょうどいいところに看板が!

看板曰く、標高5780メートルとのこと。
やった。時間ぎりぎり目標地点に到達!
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この瞬間、世界中のどのサイクリストよりも間違いなく一番高い所に、我が愛車・クッキーモンスターと私がいる。

我が愛車が私の元に来た時から、私はこいつを「色んな所に連れて行ってやって、幸せな自転車にしてやろう」と思って走ってきた。
愛車はというと、毎日糞重い荷物を持たされ、もし口が利けたなら罵詈雑言を並べてやろうと思っているだろうが、まぁ黙って私を支えてきてくれた。

そんな愛車と、「世界で最も標高の高い道」に来れたことは本当に嬉しいことであり、一生の思い出になるだろう。

この頂上に着いた時は、とにかく「あぁ疲れた。やっと頂上だ」という感じで、嬉しいけれどもそれを噛みしめる余裕も、嬉しさを爆発させる余裕もなかった。
今は本当にこの道を走って良かったと、心から、かつしみじみと思う。
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写真撮影も喜びの余韻に浸る余裕も、そこまで無い。
少し小休止した後は、一気に下山しなければ日没に間に合わなくなる。
上っていた途中の久保田さんと合流し、3人で来た道を駆け下りる。

「こんな道走ってきたっけか?」と思う程に、走ってきた道の記憶がない。
やたらと砂が深く、下りなのにまともに走れやしない。
数時間前の記憶が飛んでしまう程に疲弊しきっていたのかもしれない。

Quetena Chicoの集落が見えた時は、心底ほっとした。
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Quete Chicoには18時過ぎに到着。
実に12時間に及ぶ挑戦だった。

この夜は空腹なのだけれども、料理をする気力もない程に疲れており、雑談もそこそこに深い深い眠りへと落ちた。

12/6
予定だとUturuncu登頂の翌日も普通に走行しようと思っていたのだが、流石に疲労が抜けず、全身が怠い。
濱さんも久保田さんも延泊申請をし、3人ともホテルで思い思いに過ごして疲労を抜く様にしていた。

夜は私と濱さんのカレールーに、久保田さんの持っているスパイスを混ぜ、カレーを作った。
これが本当に美味しくて、スパイスの使い方を久保田さんに教えてもらい、今現在では私もスパイスを持ち運ぶ程にハマってしまった。
日本のカレールーなどなくても、南米に売っているスパイスで十分美味しいカレーを作ることができる。

やっぱり、お祝い事はカレーですな。
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(走行ルート:Quete Chico→Volcan Uturuncu(標高5780mまで)→Quete Chico)

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