砂、砂、砂。~Hotel Desiertoまで・宝石の道2日目

Laguna Hedionda~Hotel Desierto
12/1 (560days)

12/1
ホテルの食堂で寝させてもらったため、夜中に寒さで目が覚めることはなかった。
外に出て自転車に近寄ってみてびっくりしたのだが、取り付けていたペットボトルの中の水が全て凍っていた。
2リットルの水が丸々凍るなんて・・・昨夜は相当に冷え込んだのだろう、改めてホテル側の厚意に感謝した。

更には朝食を作って食べた後、「これも食べていきなよ」と追加の朝食まで頂いてしまった。
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水もホテル脇の蛇口で汲んで行こうとしたら、「その水は塩水だから、飲める水を入れてあげるわよ」と、ホテル内のボトルから補給させてもらった。
金も払わずただ野宿させてもらっただけなのに、親切にしてもらって恐縮するばかり。

8時過ぎ、ホテルを後にする。
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ホテルを出てからしばらくはまともに走る事ができ、高い場所からLaguna Hediondaを望むことができる。
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一応紙地図にも、宝石の道は公式にチリ国境まで「道」として記載がある。
ただ、無数に伸びる轍に何の整備もされていないこの道を公式の物として認めてしまうあたり、ボリビア政府は相当に豪気だと思う。

明らかに、作った道というよりただ「車が複数台通って少し太くなった溝」程度にしか思えない。
「人が通って轍が濃くなった物が道となるのだ」という道の原点を見ているようで、これはこれで興味深くはあったりするのだけれども。
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少ししてLaguna Hondaに到着。
ちなみに読み方は「ホンダ」ではなく「オンダ」。
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Laguna Hondaを出てから、上り坂が始まった。
勾配はきつくなく、自転車に乗る事もできていたので余裕だと思っていたのだが、やはりこの道を舐めてはいけない。

すぐに深い砂に道は覆われ、タイヤはサササァ・・・という音を立てて埋もれていく。
顔を上げて前を見ると、上り坂は果てしなく前方に延びている。
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もうこうなったら自転車を押すのではなく、サドル下を右手で持って引き上げる様な形でしか進むことができない。
来た道を振り返ると大分上ってきたはずなのに、行く先を見ると全くこの上りが終わる気配がない。
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Laguna Hediondaから25キロ地点、上りが一段落し、ガレ場を越えた先に分岐点がある。
どちらを選んでも10キロ弱で合流し一つの道に戻るのだが、右に行く方がこの日の目標地点であるホテルに近いため、右へ進むことにした。
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さっきの上りを越えればもう後は落ち着くだろう・・・と思っていたのだが、ガレ場の先の分岐からも厳しい上りが続き、それに加えて激しい向かい風が吹き荒れ始めた。
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上り坂は丸みを帯びた丘に沿って伸びており、先がどうなっているのか全く分からない。
どこまで続くか分からない上り、吹き荒れる風、斑に生えた植物・・・。

あぁ、ボブ・ディランの「Knockin’ on Heaven’s Door」が頭の中でループしている・・・。
きっと僕の中で、天国に行く道はこんな感じのイメージなのだろう。
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というか、本当に天国に行っちゃいそうなくらい疲労困憊なんですけど。
200メートル自転車を引きずっては休憩し、引きずっては・・・の繰り返し。

持っている紙地図だとLaguna Hediondaから31キロも走ればホテルに辿り着くはずなのに・・・
もうとっくに辿り着いてもよさそうなのに、ホテルのホの字も見えてこない。
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ホテルに辿り着くのは諦めてテントを張ろうか・・・と何度も考えたけれども、この暴風の中で遮蔽物が一切ない。
地面もちっとも平らじゃない。
進むしかないじゃない。
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目印っぽいのが見えて「おっ、やっとか!」と期待したけれども空振りだった。
どこか集落への道標らしい。
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もう太陽が山の向こう側へと姿を隠そうしている。日没が迫っている。
「進もうか、もう止まろうか・・・」の思考を繰り返し、ダラダラと進んで行く。
人間本当に疲れていたら逆に止まれなくなるのか、自分では進んでいるつもりはないのに、勝手に自転車を押して進んでいる自分がいる。

だらだら進むことLaguna Hediondaから35キロ、砂漠の中にぽつんと石柱があり、「Hotel Desierto→」の表記が!
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石柱からもホテルは見えず、分岐を曲がって砂丘を越えていくと・・・

あった。まさに名前の通り「Hotel Desierto(砂漠のホテル)」だ。
回りに何もない。
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見えてからも中々近くならないホテル。砂漠では距離感が本当に麻痺する。
結局分岐から2キロ走り、ホテルに着いたのは日没と同時の19時前だった。

ホテルに頼み、建物を風除けにテントを張らせてもらう。
無料でシャワーと飲料水を提供してくれ、使わなかったけれどもコンセントの使用も許してくれた。

今振り返ると、この日の走行が宝石の道で一番きつかったかもしれない。
最大瞬間的には他にもしんどい箇所があったけれども、この日は自転車を押している区間が一日の8割くらいを占めており、とにかく長かった。

「こういう頑張った日はカレーじゃ!」と、手持ちの貴重なカレールーを使って夕食は豪勢にし、この日の憂さ晴らしと明日からも続く酷道を忘れ、一時の現実逃避を楽しんだのでした。

(走行ルート:Laguna Hedionda→Hotel Desierto)

コメント

  1. 凄い。この言葉のみ。頑張れ。

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