アンデス回帰~Puquioまで

Nazca東45km~Puquio
10/14~10/15 (512~513days)

10/14
夜中テントを出てトイレに行こうとすると、夕方頃はこちらに全く敵意の無かった3匹の犬が、今すぐにでも噛みついてやろうという勢いで吠え掛かってきた。
お陰で寝袋の中で尿意を我慢しながらの睡眠で、深くは眠ることができなかった。

それでも安心して眠れる環境ではあり、無事朝を迎えることができた。
レストランの女将さんに礼を言い、青空の下山岳ルート復帰2日目をスタートさせる。
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いくつものカーブを曲がりつつ、緩やかに標高を上げていく。
運転が荒く、すぐにクラクションを鳴らすせっかちなペルー人の運転マナーは私は嫌いだが、ペルー人の道の作り方は私は好きだ。
道路の作りに無理がなく、開放感もある。
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 空気は相変わらず乾燥しているが、標高を上げてきたため暑くは無くなり、ちょうど走るのに心地よい気温が保たれている。
流石に標高3000メートルを越えれば涼しくもなるか。
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しばらく走ると標識があり、どうやら国立自然保護区に入ったらしい。
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標高3500メートルを越えて来たところで久しぶりにビクーニャを見た。
エクアドルのチンボラソ以来だろうか?
ペルーでも3500メートルを越える様な所を走ってきたが、無毛の山だったり人家が絶えずあったりで姿を見せなかったのだろう。

3500~3800メートルで生息していて、その範囲を外れるとぱったりといなくなるのは何故なのだろう。
食料の問題なのか、天敵の問題なのか。
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前方に嫌な暗雲が立ち込めてきた。
幸いなことに、雲の流れは私の背後から前方に掛けてであり、その私の背後と左右は青空が広がっている。
しかし流石に気温は一気に下がり、冷たい風が前方から吹き抜けてくるため堪らず上着を羽織る。
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標高3800メートルに達したところ、道は下りへと転じる。
下り途中に集落が見える。
もしかしたら地図にも載っていない小さな集落だが、もしかしたら安宿でもあるかもしれない。
少し期待して坂道を下っていく。
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しかし集落を過ぎて川底まで下っても結局安宿は見当たらず、川をに掛かる橋を渡ると道も再び上り始めた。
このまま上って野宿場所を見つけようと思ったのだが人家が途切れることがなかった。

これは野宿場所はないと諦め、途中で引き返して川をまた渡り、すぐ近くのレストランに「テントを張らせてもらえないか?」と頼み、承諾してもらえた。

戻る途中、どうも変速の調子が悪いと感じていたのだが、自転車をチェックするとチェーンが切れかかっている。
Limaでチェーンを交換したのだが、作業が雑だったのだろうか?とはいえチェーン交換自体は単純な作業のため、滅多にミスなどないはずなのだが・・・

とりあえず切れかかっている箇所のチェーンピンを交換したのだが、今度はチェーンが歪んで変形してしまった。
ペンチで無理やり挟んでどうにか矯正を試みたが、焼け石に水。
しかし予備チェーンをLimaで買わなかったため持っておらず、誤魔化しながら走っていくしかない。

翌日以降の走行に大いに不安を残す一日の終わりとなった。
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10/15
出発早々上り坂。
そりゃあそうだ、昨日途中までは上ったんだから分かり切ったこと。

それでも数km走ればそれ以降は知らない風景が広がる。
見える山が大きくなり、その数も増してそれぞれが連なり、懐の深い山脈を形作っている。
ようやく私の思うアンデス山脈に近い風景になってきた。

空もあのアンデス山脈の中で見る、特有の澄んだ水色になってきた。
「アンデスに戻ってきた・・・」という喜びがふつふつとこみ上げてくる。
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途中、集落とは言わずとも小さな民家は点在しており、そこの住民と思われる人々が道路を歩いていることがある。
一組の老夫婦が声を掛けてくれ、手に持っていた袋の中のバナナの内半分をもぎ、「がんばって!」と言い私に与えてくれた。

以前にも別の人から食料をもらったことがあるのだが、その時も袋に入ったパンを半分だった。
山岳に住む彼等にとって、買い物というのは気楽にできるものではなく、特に車を持たない場合は何時間も掛けて歩かねばならない苦労を伴うものだろう。

その中で何のためらいも無く、今買ってきただろう食料をただの通りすがりの外国人に「はいっ」と渡せる心の大きさには、グッとくるものがある。
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35km走ったところ、時刻にして11時頃、Puquioに到着。
到着した頃にはもう既にチェーンは限界を迎えたのか、変速ができず、嫌な音が聞こえている。
Puquioを越えると数百キロは街がなく、Puquioにはホテルがたくさんあるため、この日はここに泊まることにした。
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ホテルに投宿してすぐに自転車のチェーンを確認すると、やはり昨夜ピンを交換した箇所が今にも切れそうになっている。
チェーンカッターを確認すると、原因がようやく分かった。

チェーンカッターとはペンチの様にチェーンを切るのではなく、ハンドルを回して出っ張りを飛び出させ、チェーンを繋いでいるピンを押し出して接続を解く、という道具。
そのチェーンカッターの出っ張りが歪んでいたため、ピンを外すときと新しい物に交換する際、上手く押し出されずにいたのだ。
恐らくはLimaの時点で既に歪んでいたのだろう。

その歪んだ状態で無理に使ったため、昨夜にチェーンが歪んだのも納得がいった。
取り合えず出っ張りを外し、予備のコネクトピンを代用し、歪んだ部分のチェーンを外してリンク数を減らし、改めてつなぎなおしてみた。

翌日走ってみないと分からないが、これですぐ切れるようなら自走を諦めてバスに乗り、Cuscoに行くしかない。

取り合えず作業自体は上手くいったし、翌日以降の事を心配しても仕方がないので街をぶらついてみたが見どころもなく、路上で野菜や果物を買い足した後は、久しぶりのベッドに寝っ転がって文庫本をずっと読みふけっていた。
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(走行ルート:Nazca東45km~Nazca東125km~Puquio)

コメント

  1. 素晴らしい。最高。

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