壊れない自転車はない

ワスカランで雨に降られたため、自転車を洗車してチェックしていたところ、フロントキャリア(荷台)の付け根がポッキリ折れていた。
キャリアの素材は鉄のため、折れたとしても溶接することで修理ができる。
「壊れない自転車というのはないよ」
これは、私がこの旅行を共にしている自転車を作ってくださった、サイクルショップGIRAFFEの店長の言葉だ。
私は現在においてもそうだが、自転車に関する知識というのはほとんど持ち合わせていない。
当然、旅行前に自転車をGIRAFFEにオーダーして作成するかを相談に行った時など、もっと酷かったと思う。
店長が説明する自転車のパーツ部位の名称が分からなく、「どこですか?」なんてことを尋ね、それに対して嫌な顔をせずに丁寧に説明して下さった。
オーダーを受ける側としては「ここの部分はこうして、そこは必ずあのパーツを作って・・・」という風に、細かく指示されるのが普通だろうし、恐らくそれを期待する部分があると思う。
しかし、私は上述ののような無知であるので、オーダーをする際の要望として「とにかく、壊れない自転車が欲しいんです!」とお願いした。
それに対し、店長は諭すように、前述の言葉を私に送って下さったのだった。
自転車とは消耗品の集合体であること、海外を走る上で自転車トラブルは避けられないこと、トラブルにあった時は現地で自ら対処しなければならないこと・・・
そうした事を含め、私に説明をして下さった。
その後出発し、現在495日目。
パンク25回。
キャリア割れ4回。
チェーン切れ2回。
スポーク折れ2本。
リアディレイラー破損1回。
フロントブレーキ破損1回。
ここまで、このようなトラブルに見舞われてきた。
それでもその都度対処し、ここまで24,837kmを走ってくることができた。
恐らく40kg近くになる荷物に、私の体重64kgを合わせると100kg近くになる重量を支え続けている自転車には、絶えず負担が掛かり続けている。
時には、やはり今回のキャリア割れのようにトラブルに見舞われたりする。
それに対して焦って慌てふためくことなく、対処してこれたのは「壊れない自転車はない」という言葉があり、出発前にある程度の覚悟ができていたのがかなり大きい。
これは自転車に限らず、自分の体の不調、盗難、強盗、その他のトラブルにしても「覚悟を持っておく」というのは海外を自転車で走る上で非常に大切なことなのだと、溶接中にキャリアから散る火花を眺めつつ考えていた。
さて、キャリアは無事に直ったことなので、次は自分の体の番。
ワスカラン国立公園を越えた疲労からか下痢が止まらないため、消化に優しい雑炊を作る。
自転車がいくら万全でも、自分の体が万全でなければ安全にも、楽しくも旅行ができない。
自転車のトラブルに関しては出発前に覚悟ができていたが、体の不調に関してはここにきてようやく考え始めて来た。
自転車旅行を最大限に楽しむため、自転車と自分を労わりつつ、安全に旅行を続けていこうと思う、療養の中でのコラムでしたとさ。
ちなみに最近ではキャリア割れ対策として、折れやすい部分には不要になったチューブを巻いています。