【世界遺産】ワスカラン国立公園~破

Parque Nacional Huascarán
Parque Nacional Huascarán(ワスカラン国立公園)
9/20 (488days)

9/20
テントから顔を出して見ると、雲一つない晴天が頭上に広がっている。
この時点で標高は3700メートル近いのだが、夜中も朝も、ほとんど寒くはない。
IMGP0058
IMGP0048


ワスカラン国立公園攻略のために食料は相当な量を持ってきたのであり、さっさと荷物重量を減らすために朝から大量の野菜をぶち込んで炊き込みご飯を仕込む。

もう少し味が濃い方が好きなのだが、醤油が足りないのか、粉末出汁が足りないのか・・・
IMGP0044
遥か彼方上空にある氷河から流れ落ちた滝が小川を作り、私のいる場所まで流れてきている。
水はやはりエメラルドグリーン色をしている。
IMGP0067
IMGP0068
IMGP0061
野宿をした場所から2キロ程、恐らくワスカラン国立公園でも最も有名な湖、「ラグーナ69」へのトレッキングコース入り口に到着する。

本音を言えば当然行ってみたいのだが、前日の道を鑑みるに全力を自転車走行に集中しなければとても走破できないと判断し、スルーすることに。

そしてこのトレッキングコースの入り口を過ぎてから、本格的に上りが始まった。
IMGP0070
IMGP0115
上りは比較的緩やかな斜度であり、九十九折れとはいえ本来であればそこまでの難易度ではないはずである。
が、肝心の道の状況が悪すぎる。
大きな石がゴロゴロと転がり、かつ道が常に左右どちらかに傾いているため、まともに走ることができない。

いくら進んでもこの状況が好転することは無く、早々に自転車を漕ぐことを諦め、頂上まで歩いて押していく覚悟を決めた。
IMGP0091
少し上ると、轟々と激しく音を立てて流れる大きな川が現れる。
手持ちの水に余裕はあるのだが、やはり一度は飲んでみたい。

ウォーターフィルターを使い、ペットボトルに入れて飲んでみる。
氷河から融けだした水は冷たく、味は無味。
フィルターを掛けたのだが、少し濁っている気がするが、飲んでみて問題はなさそうだ。

その後腹を下すとも知らずに・・・。
(※この後数日間にわたりお腹の調子がすこぶる悪かったので、フィルターを使ってもワスカラン国立公園の水を飲むのはお勧めしません。)
IMGP0096
自転車を漕げずひたすらに歩いているだけなのだが、不思議なことに疲労感は特に感じない。
今までのアンデス山脈走行を経て、相当に体力が付いたという事か。
恐らく、今現在がこの旅行中で最も体力的に充実した時だろう。
IMGP0138
この道の凄い所は、先へと進むことにより、今まで周りを囲んでいる山に隠れていた雪山が突如として現れることだ。
IMGP0137
IMGP0165
IMGP0166
氷河から融けだした水が川となって流れ、遥か下、昨夜私が野宿をした湖を形成しているのだろう。
私が先ほど水を補充した沢も、この川からだろう。
IMGP0145
IMGP0146
IMGP0077
先ほどの氷河を流れる川を過ぎると、今度は方角を180度変えて上り坂は続いていく。
途中、茂みから茶色い生き物が現れたため、「グリズリーがいる!?」と本当にびっくりしたのだが、実際には牛で心底ほっとした。

この時、野生の牛がいるとは考えにくいとは思っていたのだが、当記事を書く際にワスカラン国立公園の事を調べて納得した。
ワスカラン国立公園には遊牧民が昔から住んでおり、世界遺産に認定された後にも彼等には居住の継続が許可されているとのこと。

しかし、公園内での居住が許可されているのは乾季の5~10月まで。
遊牧民の姿は一切見かけなかったが、彼等からすれば先祖代々住み着いてきた土地に、後だしで条件を付けて半ば追い出された形になる。
そのことについて、彼等はどう思っているのだろう。
(Wikipedia「ワスカラン国立公園」参照)
IMGP0159
IMGP0157
気付けば標高4000メートルを超えていたが、息苦しさはない。
寒さも全くなく、半袖Tシャツに半ズボンでもやや汗ばむ程に陽気であり、日本で言う春に近いくらいの気温だ。

ちなみにこんな道でも、コレクティーボ(乗り合いバス)やトラックがガンガン上から下から通過していく。
そんな時、どんなことを思っているかというと「お前らは自分たちで来ているんじゃない、車に連れてきてもらってんだ!そんなお前らのためになんでこっちが脇によって道を空けんといけんのじゃ、バーカ!」という様なことを思いながら進んでいます。

実際トロトロ進んでいる私は邪魔なため、素直に道は譲ってはいます。
しかし人間、一つの事に集中してそれを邪魔されると、イライラきて本性が現れるもんです。
自分は潜在意識の中で上述の様に普段思ってるんでしょう。
まぁ嫌な奴、と思われるかもしれないけれども・・・自分の心が事実そう思っているなら仕方ない。
IMGP0235
IMGP0236
IMGP0238
IMGP0237
IMGP0168
と、ここまで飄々と書いてきたが、自転車には乗れないため、全重量50キロを押しての登山と何ら変わりはない。
頂上と思われる所は見えてきたものの、それはまだ幾重もの九十九折れを繰り返した先の遥か彼方上。

それでも、眼下に見える私がこれまでに「歩いて」きた道を見て、「これだけの距離を今日の朝から上ってきたんだから、行ける行ける」と何故だか安心感が込み上げてくる不思議な感覚。
IMGP0239
IMGP0219
あの山が連なる真ん中あたりが、ちょうど頂上に違いない。
「行ける、行ける」
そう心で呟いて進んで行く。
IMGP0242
IMGP0211
そして遂に、頂上に到着。
一応先の道も見てみたが、先に延びる道は下りだったため間違いなく頂上だ。
IMGP0246
IMGP0244
到着時間は15時頃。
朝8時に出発し、休憩も含めると7時間。

距離はたったの17キロなのだが、自転車に乗っていたのは2キロ程。
残りは全て歩いてここまでたどり着いた。

標高は4700メートル。
自転車に乗れない、という意味ではこの旅行中でも最難関の道の1つであったことに間違いはない。
それでも、ゆっくりとでも進めば、到達できない道はないのだ。

いつもこうした目標地点に到着した、走破したという時は達成感に包まれるのだが、この時はそれに加えて少し自分を褒めてやりたい気持ちになった。
IMGP0275
頂上に着いてからはもう通過するバスやトラックの人目を憚らず、大の字になって寝っ転がった。
自分のイビキの音で起きるくらい、ぐっすり眠っていた。

陽が暮れる頃、頂上の路肩にある死角にテントを張る。
陽が沈み夜が更けると、この日のご褒美と言わんばかりに、アンデスの頭上に無数の星が広がっていた。
IMGP0266
(走行ルート:Parque Nacional Huascarán)

コメント

  1. すごく綺麗な星空ですね!ご自分で撮影した写真ですよね?こんな素晴らしい星空が見れるなんて羨ましいです。

  2. もちろん私が撮影しました。
    エクアドルのチンボラソでは星の撮影方法を知らず、うまく撮影できなかったので今回は「絶対アンデスの星空星を綺麗に撮ったる!」という意気込みで勉強して撮影しました。
    やはりほかに光がなく、5000メートル近いと星の数が段違いです。
    > すごく綺麗な星空ですね!ご自分で撮影した写真ですよね?こんな素晴らしい星空が見れるなんて羨ましいです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です